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つばめろま〜なから、なにかを知りたい貴方へ。
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「綺譚集」津原泰水(集英社)

2004年発刊とだいぶ前の本ですが、津原作品を読むのは「ブラバン」、「たまさか人形堂」シリーズ、「バレエ・メカニック」に続き5冊目、このタイトルと帯などの紹介宣伝文を見て、これはやばい方向そうだなぁと警戒しながらも、短編集なので少しは軽いかもと買ってしまったのでした。

短編集だから、それぞれの物語のエッセンスが凝縮されていて、軽いなんてものではなく、1作目からかなり胸が悪くなるようなグロ…後悔しながらも、けれど恐怖ではないので読み進めていけたのでしょう。全作品で殺したり殺されたりと人の死が描かれているのが徹底しています。
でもその中に、エロティックだったり暴力的だったりノスタルジックだったり美しかったり、いろんな人間の生き様や感情が描かれていて、文学的な遊びもあって面白かったし、読後感も決して悪くありませんでした。世界の見方や文章の感覚が合う作家なのだと思います。

15作も掲載されているので、それぞれに好き嫌いが大きく分かれながらも印象に残っていますが、好きなのは「赤假面傳」「頸骨」「約束」「ドービニィの庭で」というところでしょうか。どちらかと言えばソフト路線の作品になってしまいますが…ハードな中にあるので、余計に美しさや切なさのようなものが際だって感じられたということもあります。

死は、誰にでも等しく訪れるもので、早かろうが遅かろうが、穏やかだろうが凄絶だろうが、死んだらそこでおしまいと思っている(思うようにしている)のですが、もちろん死ぬ人の数だけドラマがある、だからどんなに極端な物語でも自分に関係のないことだとは思えない。個性的な死に様になにかしらの共感や嫌悪や、感情が渦巻いてしまうと、そういうことなのでしょう。図らずも、心に残る本になりました。

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「音楽のつどい」2017年9月16日、スタジオSK

台風の足音も近づいてくる3連休の初日、妹と2人の息子たちが弾く発表会「音楽のつどい」を聴きに行きました。新高円寺の小さなホールに来たのは3度目くらいですが、一面はガラス張りで高い天井に天窓付きの開放感がステキです。台風が近づいていて雨が降っている中というのも風情があります。
特定の教室の発表会ではなく、音楽仲間が集まって企画する場なので、演奏レベルは高くなくても(皆さん上手いですが)音楽への心がこもっていて聴き応えがあります。プログラムもバッハからベートーヴェン、ショパン、ラベルなどバラエティ豊か、ピアノだけでなくバイオリンにフルート、バロックハープ、声楽もあって飽きさせませんでした。

妹のピアノはフルートとバイオリンそれぞれの伴奏に、ソロでバッハの平均律。とても安定した演奏で、静かに想いを込めている感じが良かった。私はロシアの自己主張の強い音楽家が好きですが、妹はしばらく住んでいたこともあってドイツ音楽に傾倒している、その意味がわかった気がします。質実剛健という言葉だと面白味が感じられませんですが、緻密に構築された音楽表現の奥深さがおりました。
次男のピアノは、ブラームスのソナタ3番。大曲の第一楽章を力強く弾きました。東大で学んでいる最中なのに、いつ練習するのだろうと不思議ですが、楽譜を覚えたり理解するのは理数系の頭を持つ人には苦でないのかもしれません。こどもの頃から音楽にはよく接しているし、あとは反復練習で身につける技術だけ。そんな器用さも持っていて、自分の音を出そうとする意欲も強く感じられる、若々しい清々しさのあるピアノでした。
長男のバイオリンは発表会のトリで、プロコフィエフの協奏曲2番。ロシアの作曲家らしい暗い激情のある聴くからに難曲ですが、確かなテクニックと情感あふれる表情で途中まで弾いたところ、パンッと弦が切れるハプニング。演奏中では初めてということですが、あまり慌てず一度引っ込んで弦を張り替え、最初から弾き直しです。さらに集中して弾けていた感じがしました。今まで聴いてきた彼の演奏の中でも特に良かったと思います。
最後にみんなで合唱して、温かな気持ちと熱い演奏でいっぱいの音楽会は終了、とても楽しい時間を過ごすことができました。

天気は良くないけれどせっかく来た高円寺ですので、ホールに行く前にペルシア料理店でランチを食べ、猫作品専門のギャラリーを見て、充実感いっぱいの休日となりました。

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夏休み期間中、バラエティ豊かな公演が比較的安価で聴ける「サマーミューザ」、この日はオーケストラ・アンサンブル・金沢による「パイプオルガンとオーケストラの饗宴」(2017.7.23 ミューザ川崎)、指揮は本オーケストラの音楽監督も務めているマエストロ、井上道義です。指揮者のおしゃべりが入ったり、自ら拍手して盛り上げるなど、井上さんならではの演出が楽しめました。

前半1曲目は、フランス人オルガニストティエリー・エスキシュさんの即興ソロ。井上さんから与えられたテーマはゴジラ、あのおなじみの旋律が随所に顔を出しながら、繊細に美しく大胆に迫力ある、パイプオルガンの魅力を存分に引き出す演奏でした。

2曲目はシューベルトの交響曲「未完成」。楽器編成の少ない地方オーケストラ、低音で始まるこの曲の聴き所を押さえて、真ん中にコントラバスとチェロ、左側にその他弦楽器、右側に管楽器を配しています。とにかく音色が美しいオーケストラだと思いました。その優美さは、まさに金沢のイメージにぴったりだと…まだ行ったことのない街ですが。オケの音が良ければ、あとは巨匠の指揮する名曲を深く味わうだけです。心に染み入る演奏でした。

3曲目の前に通常の配置へ戻すため、少し時間がありましたが、スタッフの鮮やかな手際も見所とする演出。
そしてサン・サーンスのチェロ協奏曲第1番、独奏のルドヴィート・カンタさんはスロバキア出身の同楽団主席チェリストで、堅実な演奏がこのオケのレベルの高さを知らしめてくれます。フランスらしい洗練された美しさの曲でした。アンコールに応えてバッハの無伴奏チェロ組曲第2番から、温かい印象の演奏で、心地よく前半は終了です。

後半はエスケシュさん作曲・自演のオルガン協奏曲第3番「時の4つの顔」。音楽の歴史をたどるように作曲したという大作です。全4楽章でバロック以前の雰囲気からロマン派、現代へと近づいていく曲調の変遷を、荘厳なパイプオルガンと、管弦楽のハーモニーと、3人の奏者による打楽器群を使ってダイナミックに描いた、素晴らしく聴き応えのある演奏でした。嘱託で書かれたという曲は、流麗だった前半とはまた別の、このオーケストラの魅力を引き出していたと思います。もちろん、指揮者の腕の見せ所ですが…井上さんはかっこよかった。

個人的には3日連続の(または8日で4回の)ライヴ・コンサート、身体は疲れましたが心が満たされた、真夏の音楽旅行となりました。
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『J.S.BACH祭り2017<夏>』Ensemble Cafe Dolce mit Luna 2017.7.22 エアジン
前衛ジャズもやる横浜エアジンで年2回のバッハ祭り、今回は4日にわたっていろんな音楽的アプローチがされたようですが、この夜は「サタデーナイトに古楽器アンサンブルと歌に萌える〜コラール et アベマリア」と銘打って、古楽器を使ってのバロック音楽を聴かせるという試みです。正月明けに林栄一さんとのデュオで聴いた奴田原さんのスピネット、お知り合いになってから再度聴く機会が訪れました。

バッハを聴く機会は割と多いのですが、小型チェンバロであるスピネット、斉藤禄美さんのリコーダー、岡崎佳奈さんの7弦チェロというようなヴィオラ・ダ・ガンバのアンサンブルで聴いて、バッハらしさというのが少しわかった気がしました。これらの楽器が、あまり抑揚がつかず音量も大きくないので、ピアノやパイプオルガンや現代の管弦楽器で聴くより、楽曲自体のメロディやリズムが際立っていたからでしょう。ボーカル以外、マイクを使わなかったのが正解です。すごく単調にも感じられるけれど、1音ごとに込められた作曲家の意図の深さが感じられてきました。バッハは自然現象なのです、と語ったソ連の女流ピアニストの言葉が思い出され、自然は宇宙とのつながりであり、それを知る人だったのかと思います(酒見賢一の孔明の本を読み終わったばかりでしたので)。

第1部は古楽器アンサンブル、第2部はLunaさんのボーカルを交えての演奏。特に歌が入ってからのマタイ受難曲からの2曲と3大アヴェ・マリアは、一人ひとりの演奏が引き立ちながら美しくハーモナイズされていて美しかったです。雑然としたエアジンの空間が神聖な場所に変わったような感じで、でもそれを聖堂で聴くよりもよほど味があって、素敵な満足感に包まれた一時でした。

ちなみに2日連続のライヴハウス、翌日はコンサートホール。夏の暑い時期、身体はばてそうでお財布は空になりますが、心は潤いで満たされて活気づく、勝手に夏休み気分が続きます。

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「泣き虫弱虫諸葛孔明 第伍部」酒見賢一(文藝春秋)

酒見版三国志もついに最終刊です。600ページ超えといつにも増して分厚い本、持ち歩きは大変ですが読み応えがあって、長大な物語の締めくくりを楽しませてもらいました。前の刊で曹操、劉備、関羽、張飛と主要人物が死んでしまったので、ついに孔明の一人舞台、やっと軍師としての本領を発揮した活躍が描かれます。

とにかく強烈なキャラクター付けがされた孔明、最後まで変態性を保ったまま、しかしほかに有能な人材がいない国の事情から、政治も軍事も任されて真面目にやらざるを得ない状況となり、奇策の限りを尽くして頑張る姿がとても魅力的でした。南方遠征での孟獲とのエンドレスセブンな戦いはおかしくて印象に残るエピソードとなり、魏軍を火計で焼き殺すシーンは無慈悲な残虐さに戦慄し、主要キャラで唯一残っていた好漢・趙雲が死んだところでは涙し…そして孔明の死まで、濃いドラマがぎゅうぎゅうに詰まっています。

多くの文献をふまえて史実と虚構の解釈を加えながら、独自の孔明像を創り上げストーリーを展開していく酒見節は、三国志ビギナーにとっても非常に理解しやすく、二千年近く伝えら愛されてきた物語の魅力を存分に知らしめてくれました。酒見さんの作では、孔子の世を描いて森羅万象を明かしてくれるような「陋巷に在り」が私にとって生涯の傑作ですが、本作はエンターテイメントの味わい深さで別方向の傑作として心に残っていくことでしょう。

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■イラスト作品 pixiv
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