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2016年12月10日「第三十六回鎌倉はなし会 柳家喬太郎・柳家三三二人会」に行って来ました。場所は1500席ある鎌倉芸術館大ホール、落語を聴くには大きすぎないかと思い、席も1階の最後列に近いところでしたので、双眼鏡も持参しましたが、お客さんが多いほどに熱が入るというのも芸人さんの性分でしょう、とても熱が入っていたように思われます。

■演目
◯春風亭一蔵「鷺とり」
◯柳家喬太郎「夜の慣用句」
◯柳家三三「鰍沢」
 仲入り
◯林家正楽「紙切り」相合傘、勧進帳、忠臣蔵、寅さんと大船撮影所、千代の富士土俵入り、立川談志師匠、美空ひばりの「川の流れのようにに」メドレー
◯柳家三三「元犬」
◯柳家喬太郎「文七元結」

柳家三三さん、柳家喬太郎さんともに昨年も聴いていて2度めになりますが、何度も聴いてみたいと思う魅力的な噺家さんです。
喬太郎さんは奥深い達者な芸という感じで、大ネタ「文七元結」をオリジナル色を強く聴かせてくれました。これしか知らないので比べようはありませんが、本当に時代劇を見ているようでした。こちらは人情話ですが、第一部での話は大いに笑わせてもらいました。
三三さんの「鰍沢」は、ミステリードラマのような不穏でスリルある話を聴かせてくれました。この人は女性を演じるところが艶っぽくて、全体的に品があるので好きです。第二部の「元犬」で演じた犬人間も、この方のキャラクターにぴったりな感じがしました。
春風亭一蔵さんの開口一番は、今の落語ブームをネタにしていて素直に面白かったです。
林家正楽さんの紙切りは、客席からのお題で即座に切り絵をつくり、それがとにかく特徴をつかんでいて…想像以上にすごい芸だなと思いました。美空ひばりの歌に合わせて展開された切り絵絵巻は、感動的でありました。

休憩も入れてですが3時間以上の公演は、バラエティー豊かなプログラムで、聴こ応え・見応えのある、満足度の高いものでした。25列目でも、ときどき双眼鏡を覗けば表情もはっきりとわかりましたので、ますます落語のとりこになっていくようです。

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大駱駝艦「パラダイス」(2016.7.3 世田谷パブリックシアター)を観てきました。
麿赤兒さんは、昨年12月に音楽劇「レミング~世界の涯まで連れてって~」、踊りは一昨年に天使館の笠井叡さんとのコラボ「ハヤサスラヒメ」を観ていましたが、大駱駝艦の天賦典式は実に久しぶりです。大駱駝艦では25年ほども前でしょうか、津島市の公園で観た野外公演がいまだに印象深く残っているのですが、この劇場も雰囲気が独特なので楽しみに、早めにチケットを取っていました。
舞踏も進化、というかずいぶん変化してきている気がする中で、土方巽の直弟子でもある麿さんがどこまで突き進んでいるかというのは、ひとつの指針と思います。海外でも評価の高い芸術ですが、あくまでも本質は前衛、歌舞伎や落語や大相撲のように伝統芸能になってしまっては面白くありません。歌舞伎や落語や大相撲も、みなさん新しいことに挑戦しようとがんばっているのはわかりますが、世間の保守的な目という縛りは強いように思います。
さて、本公演はとても意欲的な前衛作品だったと思います。テーマと演出、舞台装置や音楽まで、刺激的なものでした。同時に、舞踏の歴史のさまざまなエッセンスも感じました。白い舞台世界で山海塾のような静謐さではじまり、白虎社のように猥雑な展開があり…そしてラストの集結はとても感動してしまいました。
それにしても麿さんは元気で、力が漲っています。舞踏では一番の老舗団体を率いながら、まだまだ舞踏の先を魅せてくれそうで、楽しみな限り…また行きたいと思うのでした。

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第二十五回鎌倉はなし会 柳家三三 独演会
2015年1月31日、逗子なぎさホール

人生初の落語ライヴを聴いてきました。ちなみに、お笑いということで広げると、30年近く前に「象さんのポット」のコントライヴを観たことはありますが、演劇色が強いものでした。伝統芸能という括りなら、旧歌舞伎座の一幕見席を観て以来となるでしょう。落語は、枝雀や小朝が若手として活躍していた時期にテレビで見たのが、記憶の最後かもしれません。
そんな私が今回の公演に行ったのは、席亭(主催者)の秋山さんを知り、彼の本で席亭という仕事について読んで興味を持ったからでした。もう一つ、数年前に読んだ佐藤多佳子の小説「しゃべれどもしゃべれども」も、落語への興味を開いてくれていたのでした。秋山さんからご案内もいただきましたので、これは良い機会と思ったのでした。

柳家三三(さんざ)さんは若手のホープだそうですが、なるほど、軽妙な語り口でありながら軽すぎない、本格派の雰囲気を持った良い噺家さんでした。終了後にロビーに演目が張り出してあったのですが、人が多くて近づけず…落語がこんなにも人気があるとは不勉強でした…あとで調べておきたいと思います。開口一番に鈴々舎馬るこさんの、自信の体型に合った相撲ネタの話を、そして柳家三三さんの、マクラからちょっと艶っぽい「権助提灯」、ドロボウの話「締め込み」、中入りをはさんで人情味あふれる「文七元結」。笑いだけでなく、日本人の心といった物語を聞いた感じで、すごいものだと思いました。後ろの方の席で顔は小さくしか見えませんでしたが、全身から伝わる表情が豊かです。これこそ、芸、なのでしょう。

とても楽しませてもらいましたが、それは私の中で、時代劇などで触れてきた長屋風景などをイメーできるから。江戸を舞台にした古典落語、水戸黄門が終了したことは象徴的でしたが、テレビでも時代劇がほとんどなくなってしまった今、若い人に理解してもらうのが難しくなってきた気もします。今日の劇場の客層、私よりも上の人がほとんどで、ちらほらと20代とおぼしき人が見える感じで…。ジャズのコンサート会場などでもそうした傾向は見えますが、音楽は聴いてもらえればわかるけれど、物語の歴史観は知識としてないと厳しそうです。もちろん、落語家の皆さんは意識されているのでしょうけれど、なにかを伝承していくことって難しいですね。
 
逗子のホールも、完成した時から来てみたかったところで、何年も経ってしましましたが、やっと訪れることができました。客席はとても見やすかったです。ホールに行く前に、せっかく逗子まで来たのだから(大船から12分ほどと近いのですが)と、先に披露山公園に行ってみました。海のそばにある山の上、江ノ島の向こうに富士山が綺麗に見えましたので、写真をアップしておきます。手前に広がる街並は、日本のビアリーヒルズと言われる日本有数の高級住宅地、披露山庭園住宅です。タウンセキュリティがあり、部外者は容易に立ち入れないようです。背筋着コースから披露山に登る際、前日も雨のせいで足を滑らせ、滑落してしまったのですが…無事に落語を聴けて本当に良かったです。


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舞踏公演、笠井叡×麿赤兒「ハヤサスラヒメ(速佐須良姫)」を見てきました。(2012年12月2日、世田谷パブリックシアター)

ともに1943年生まれ、舞踏の牽引者として50年のキャリアを持つ2人にして初の共演となるステージ、という新聞の紹介記事を見てしまえば、いわゆる暗黒舞踏大好きの私としては行くしかありません。麿の率いる大駱駝艦は若い頃に何度か観ていましたが、天使館を率いる笠井の踊りはまったくはじめてであり、年齢的にもいま観ておかないと、と思ったこともあります。

場所は世田谷パブリックシアター、前売りチケットは残り少なかったので2階席の端の方となりました。そのおかげで、このはじめて入ったモダンで個性的な劇場を楽しむことができ、舞台全体を俯瞰して観れたのでなかなかでした。半円形のステージをぐるっと取り囲む配置から、かつて湘南台文化センターで観た田中眠の「春の祭典」や大野一雄の「照手姫」を思い出して、はじまる前から舞踏モードに入れたのも良かったです。昔はよく見に行った舞踏ですが、しかし今回は何年ぶりか…

自分のことはそのへんにしておいて、ステージの感想です。
これは、見に行って良かったと心から思いました。久々の舞踏ということもありますが、この刺激、死生感、肉体の可能性、そして晴れやかさ。命あることの悦びを、ベートーヴェンの第九に乗せて表現しきっていて、素晴らしい感動を与えてくれました。

齢のことに触れずともいいのでしょうが、やはりどうしても、70歳近い二人のエネルギッシュで表現力にあふれた踊りには、深く魅せられました。それも5日間の公演の最終日にして…。特に笠井叡の跳躍や柔軟さ、そして踊り続けても息を乱さないスタミナは、若い頃からの鍛錬のたまものなのでしょう、驚嘆するばかりです。怪優としてテレビでも怖い顔を見せる麿赤兒の、愛らしいドレスやチュチュ姿もある意味驚愕でしたが。こんなに踊る麿さんもはじめて見た感じです。

その二人だけでなく、白塗り坊主の大駱駝艦の4人と、肌色金髪の天使館4人、一括りに舞踏といっても異なるメソッドにあるのだろうと思われますが、絶妙にクロスオーバーさせていく振り付けもあり、四人四人、一人一人の存在感を際だたせていました。白塗りで転がるたびに、舞台上が白くなっていって、まるで大理石の模様のように見えていったのも、演出の狙いではないでしょうが2階席から見ての面白さでした。
そして20人以上の女性群舞、天使館で教えているオイリュトミーという運動芸術らしいですが、ステージを清楚ながら盛り上げていて、明るい祝福のイメージを醸し、舞踏なのに清々しい印象を残したことは成功だったと思います。

舞踏のエポックメイキングな作品とまで言えるかどうかは専門家でないのでわかりませんが、私としてはそのくらい鮮烈に感じた舞台でありました。笠井叡、今日見た感じでは大野一雄のように90すぎても踊れそうなので、ぜひまた見に行きたいと機会を伺うことにいたします。

笠井叡
大駱駝艦

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