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51gLuGWoTaL._SX230_.jpg「ビブリア古書堂の事件帖 栞子さんと奇妙な客人たち」
三上延(メディアワークス文庫)

普段ならばライトノベル系文庫本のベストセラー作品というだけで、読むことなく終わるのでしょうが。最近、鎌倉を舞台にしたマンガとかアニメとか多くて、地元人間としてはそれだけでも楽しめたりするので、北鎌倉の古書店を舞台にした小説なら読んでみるかと、古本屋で手に入れました。

さて読んでみれば、鎌倉と聞いていたけれど、私にとってはもっと地元な大船を舞台にした話ではないか!と驚き。
店のある北鎌倉駅脇の道、山の中腹にある大船高校、健診を受けたことのある大船中央病院、買い物で通る主人公の家のあるあたり、前に住んでいたアパートに近い小袋谷の寺(ここだけ実際の地理とは違うように改変されてましたが)、などなど、お馴染みの場所だらけです。ちなみにこの本を買ったのも、病院と同じ街区にあるブックオフです。
いちいち情景がリアルに目に浮かぶので人物にも親近感がわき、大変に面白く読める一冊でした。それに、ライトノベルではなくてしっかりした文学作品だったので読みやすかった。作者の技量もなかなかです。

最近、図書館とか古書店とかを舞台にした、または本好きの話が多い気がします。ネット時代になって電子書籍も台頭してきた反動や、懐古的な気持ちみたいなものがあるのかもしれないと、思ってみたり。
書籍はデータ化もできるけれど、ことに物語については心の中で体験として拡がるものですから、本棚に並べて眺めたり、手に取って重さを感じたりと、実際に存在していることを感じられる方がより良いかと思います。本作で古本にまつわる物語や思い入れの強さを読めば、そんな思いがますます強くなりました。
できればこの作品は、電子書籍化してほしくないなぁと思います。

思えば私も、父が国語の教師で文学好きだったため、本がいっぱいの家で育ちました。作り付けの大きな書棚にはいろいろな全集ものから文庫本まで、家が傾くほどに詰まっていて、それが普通だと思っていました。もう一度読み返すかも、とか、値打ちが出るかも、ということではなくて、自分の読んだ本は取っておきたい、できれば見えるように並べておきたいというのが、読書家の習性だと思います。私もそのタイプです。
新しい家を建てて引っ越しするときに、亡父の本のほとんどと、自分の本のかなり多くを古本屋を呼んで処分しましたが、すごく寂しい想いでしたし、今になってもう少しとっておけば、などと悔いたりもします。(すでに今の家で置く場所もなくなっているのに)

本作は、読書家というよりは本に対する好事家の話という趣なので、多少感じ方は違うかもしれませんが、本には読んだ人の想いがこもると、そのことがよく描かれているので、本好きな人が選ぶ「本屋大賞」を受賞したことも至極当然と思われました。


さて、そんな本好きの心をしっかりとらえる本作、古書にまつわるウンチクは興味深く、それに関わる事件といった話もステキで、私も惹きつけられましたが、しかし。
やはり真の見所は、美人で頭がよいけれど内気で本のこと以外はコミュニケーション能力欠如という、リアルにいたら痛いけれどフィクションとしては非常に萌属性の高いヒロインの魅力。その他二人の女子高生たちもそれぞれキャラが立っていて好みでした。男性主人公の性格や行動にはイマイチ共感性にかけますが、いろいろ頑張っていたので好感が持てます。

結局は、登場人物への愛が本への愛着に直結するということで、多くの人に愛される=ベストセラーになる小説や漫画というものは、そこに尽きるのでしょう。本を読むことの動機として、ステキな体験(人によってはそれが恐怖や悲痛だったりもするわけで)を得たいということがあります。他に、知らない知識や考え方を得たいというようなこともあって、いろいろな本が生まれるわけですが、読者と作者の想いが重なる瞬間の幸福感はもう奇跡のようなものです。

前回のブログで「陽だまりの彼女」に苦言を呈してしまいましたが、物語として詰めが甘くても売れている理由が登場人物への愛とステキな体験なのだということは十分に理解できるわけです。「ビブリア古書堂の事件帖」は詰めもしっかりしているから安心です!
次の巻も既刊、その次の巻も予定されているようですので、古本屋に並ぶのを待つまでもなく、ぜひ新刊で読ませてもらおうと思っています。

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41rxCfaOWbL._SX230_.jpg「陽だまりの彼女」越谷オサム(新潮文庫)を読みました。

平積みされていた文庫版をはじめて本屋で見かけたとき、表紙の絵にぐっと魅き付けられてしまいました。同じようにCDをジャケ買いしたことがありますが、西島大介さんの絵は本当に力がありますね。
その後しばらく経ってから買おうと思ったのは、読んだ人たちの感想を目にしたところから。恋愛小説として面白そうだし、記憶障害の話らしいし(「ef」みたいなのを少し期待して)、意外な結末ってどんなだろうと興味がわいて、すっかりベストセラーになってからですが、読んでみることに。
主人公ふたりの恋愛関係は恥ずかしくなるほどていねいに書かれ、思春期が初々しかったり、バカップルぶりが微笑ましかったり、不穏な展開にハラハラさせられたり、大きな喪失感にホロリとさせられたりと、まずは素直に面白く読めたのですが‥‥。なんでしょう、この読後の違和感。

読んでる途中にもしっくりこなかったのは、ヒロイン真緒のキャラクター。中学生の時、キャリアウーマンとして、つきあい始めの頃、結婚してから‥‥それぞれにとても魅力的に描かれているのですが、しっかりしていたり幼かったりと多面性がありすぎて一人の人間として統合されてないように感じられたためです。
実はそうしたキャラも設定のうち、そしてラストで明かされる事実が、たしかに驚きなのですが、物語全体の整合性を壊してしまったように思われ、なんかすごく残念でした。物語としては美しいハッピーエンドになっていて、深く考えなければ「あぁ良かったね」と感動して本を閉じられるのでしょうが、ハッピーエンドの先に継続する日々の幸せがまったく見えてきません。
実は恋愛小説でもなかった、ではここに書かれていたのはなんだろう? という疑問がアタマから離れないのです。

越谷さんは、ぜひともこの先の話を書くべきです。そして、納得させてほしいと思います。それができたら、名作だと、すごい作家だと称賛するでしょう。


作者さんでなくても、誰か納得させてください。
※ここからはネタバレありなので、既に読んだ人・読む予定のない人限定です。

○真緒の正体がそういうことなら、これは恋愛小説でも、純愛でも博愛でもないのではないか。萌えアニメならば、よくあるような設定ですし難しいことなしに楽しめるでしょう。性愛がなければ、種族を超えた純愛として読めるでしょう。でもこれは、何愛なのかな。

○13歳の少女として現れることができた(能力? 神頼みのようなもの?)なら、次も子猫ではなくて、26歳の人間として現れ続きの生活を送ることができたのではないか。無垢な子猫ではなく、記憶があるように描かれていたのでそう思ってしまいます。

○すべてをきれいさっぱり精算して消えることができたということは、そもそも13歳の時に現れてから里親を手に入れたり学校で二人だけ孤立し親密になれたことも、すべて真緒が計算高く因果律を操ったからではないか。それにしてはその後10年以上も会えず探していたのはおかしいんですよね。

○そもそも、同じ歳の異性として浩介の前に現れた動機がわからないので、真緒の心をどう考えたらよいのか。拾われ猫なんてたくさんいる中で、なにか特別な絆を感じることがあったみたいなエピソードが書かれていないのが原因なのですが。

○本の帯に記されているキャッチコピー、「恋(ウソ)」って、まさか読者を騙してしてやったり、ということではないですよね。(もしかしてコピーライターはそこまで考えてたかもしれないと、同業者の私は勘ぐってみたり)

ふだん、読んだ本のいいところだけ心に残して、ケチ付けるようなことはないのですが‥‥。
この本で感動した皆さんの感情を害したら悪いとも思いましたが、ベストセラーになっている作品ということもあり、どうも腑に落ちないので書いてしまいました。


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15年目となる鎌倉近在アマチュアミュージシャンによるジャズ祭、私が最初に聴いたのは第5回、その後3回くらい行ったと思いますが、11回目以来と久しぶりとなりました。5の倍数の記念回は、会場が鎌倉芸術館の小ホールから大ホールに格上げされます。
地元イベントですので、出場バンドもほぼ固定化されているのが、良い面もあり悪くもありというところで、良いのはバンドの年ごとの成長を見て愛着を持てるところ、悪いのはもちろんマンネリ化です。
ただ、ジャズというジャンルだけに元々の演奏者の年齢層が高いため(観客も然りですが)、このままいつまでも続くことはないでしょう。若い出演者がほしいところです。このことは横濱ジャズプロムナードと同様の課題ですが、全国というより世界中からミュージシャンを集められる横濱と違って、鎌倉周辺という小さなエリア内で解決するのは難しそうな気もします。
私が鎌倉の至宝と思っている小学生ジャズバンド、植木リトルエコーアンサンブル出身者が大きくなって、いろんな方向でのバンド組んで出てくる、なんていうポジティブ・スパイラルができてくると未来が楽しみだと思います。

●山武ブルーノーツ
女性ドラマーに女性サックスが見た目にも演奏にもしっとりとした花を添えていると思ったのは、どうもジャズの世界ではボーカル以外での女性率が低いからでしょうか。ビッグバンドも嫌いではないけれどあまり面白みを感じないので、考えず気持ち良く聴くことにしています。
しかし、途中でゲストのヴォーカル「Machiko」とベース「Taka」デュオ「Voice Me Bass T」が参加してから世界観が一変。いろんなジャンルの音楽をされているようで、これがベタなジャズのビッグバンドと絡むとすごい新しいものが創造された感じでした。
株式会社山武の企業バンドだということで(藤沢にテクノセンターがあるらしいですね)、社名がazbilに変わるに伴いベンド名も変わるとか、このあたりがアマチュアらしくて良いです。

●葉山 美紗&Mighty Sound
ヴォーカル以外のメンバーはすでにプロ活動をされているらしく、とても安定していて大人らしい粋な演奏。ここに葉山さんと実行委員長の森田さんがボーカルに入ると、いきなりアマっぽさ全開に! 失礼な書き方になってしまいますが、そのあたりのレベルの違いは仕方ないことで、しかし、アマチュアの良さは楽しく音楽に取り組むことで、それがすごく伝わってくるから聴いていても悪い気はしません。
それこそがこの地域イベントならではの意義で、葉山さんもそのあたりをよくわかって出演されていらっしゃる気がします。

●横浜ベイブリーズ・オーケストラ
最初の山武でジャズの女性率の低さと書きましたが、このビッグバンドには女性が5人もいました! そして初っ端から、女性2人でのサックスバトル、なかなかの聴き応えです。ウッドベースが外国人だったりと、全体的に横浜らしい洗練されたサウンドのモダンジャズでした。

●ONE&ALL
ボーカル3人+ギターという編成で、素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
3人のハーモニーになると、ところどころで綻びが気になったりもするのですが、それぞれがギターとのデュオで1曲ずつ歌った時など、メッセージ性の強さとアレンジの面白さがあり、3人になればまた、掛け合わせの妙が発揮されて、音楽の感性を刺激してきます。というか、ジャズ鎌でこんなに感動させられたのははじめてでした。選曲も実によかったです。
でもアカペラだったら辛いかもしれない。ピアノ伴奏でもちょっとかも…なのですが、この芸達者なギターが見事に全員の世界を調和させていました。ギターのサカマケンさん、オルガンのKANKAWAさんと一緒に演ったりしているのか、聴いてみたいな。

●植木リトゥル・エコー・アンサンブル
前段でも書きましたが、小学生のビッグバンドです。私の家の近くにある植木小学校と近所の小学校の、たしか3年生から参加できて、4年生から管楽器やドラム、ベースなどの楽器をやるのです。それが5年生、6年生にもなるとソロパートもしっかりこなせるほどに上達するのですから、指導者の手腕には恐れ入ります。
見ていて、子供らしいあどけなさと大人顔負けのプレイのギャップだけでもワクワクしますが、みんなで真剣に楽しく音楽しているのが伝わってくるから感動してしまいます。
小学校を卒業してからも、後輩の指導に関わったりする子もいるようですが、ほとんどは一旦ジャズとは切れるのでしょう(中学にブラバンや軽音部とかはあっても、ジャズ部ってあまりないですよね)、そこからいろんな道に分かれて行っても、ずっとジャズの心を忘れずに、また戻ってきて欲しいと思ってしまします。

●大石 学(特別ゲスト)
15回記念のスペシャルゲストとして、今日の大石さんと明日の阿川泰子さん、2人のプロミュージシャンが出演。
大石さんは初めて聴きましたが、静かで透明感のあるピアノを弾かれます。美しく心が洗われます。ソロで3曲、ジャズ鎌出演者2人とのデュオを2曲、そしてソロを2曲聴かせてもらいましたが、トリオかカルテットでの即興掛け合いをぜひ聴いてみたいと思いました。きっと魅力が増すと思いますから、とりあえずCDを手に入れましょう。今日は出会えてよかったです。

◯ボギーペース・オーケストラ
時間の関係で、こちらが始まる前に退出させていただきました。

   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※
プロとアマチュアの音楽性の違いというのは確かにあるのですが、でも存在感という点ではそれほどの差があるとも思えない。それは音楽への、ジャズへの想いのほどが出ているかどうかなのでしょう。
時にはプロだからこそ演奏することが常態化していて、熱さが感じられないようなこともあったりします。アマだからこそ、こんなに大きな会場で演奏できる機会に熱くならないわけがない。それこそがこのイベントの、いやジャズフェスや音楽祭の魅力だと言えるでしょう。
1,500人の客席がかなり埋まるほどでしたし、できれば来年からも大ホールでお願いしたいものです。聴きたいけど小ホールだと座れないかもしれないし…と思って行かなかったりするので。

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■こだわりモノ

まずはじめに、今ではテレビや広告などで「こだわり」という言葉が使われますが、辞書を引くと決して良い意味ではありません。
きっとテレビや雑誌で「頑固親父のこだわりラーメン」なんて使われ方をしていたのが、こだわり=妥協のない本物、みたいな意味になったのではないかと推測しております。いや、最初から良い意味もあったのだということを知っている方がいらしたら、ぜひお教えください。
そんなわけで、コピーライターをしている私はなるべくこだわりという言葉は使わないように心掛けているのですが、でも前述したような意味で使われるようになったこの言葉は便利で、うまく他の言葉で代用できないニュアンスを持っているため、ついつい使ってしまったりもするのです。

さて、このブログの「こだわりモノ」シリーズは、私がどうしても欲しくなって悩んだりした末に手に入れ、愛用している品物を紹介しようというコンテンツです。衝動買いとは反対の行為ですね。私にとってのこだわりポイント、欲に負けた自分のこだわる心も書き連ねてみたいと思っています。


450b363e.jpegマッサージクッション「ルルド」

つい最近購入したものですが、早くも愛用しています。私はひどい首・肩・背中・腰コリを抱えているのですが、整骨院やカイロに行ってもその時は気持ち良くてもすぐに戻ってしまう、それに頻繁に通うような金も暇もないときていますので、ここは思い切ってマッサージ機を買うかと思い立ち、ネットでの評判を見て探したのでした。
叩き系や振動系、電流系よりはモミ系で、使いやすそうで、コストパフォーマンスも良いものをと…ネットにおける口コミ情報も信じ過ぎると危ないわけですが、しかし貴重な情報源であることは間違いありません。そこでの評判が良かった(ポジティブ意見がとても多くネガティブな内容があまりなかった)このクッション、実物の姿は店で見ましたが体験することもなく、楽天の一番安いショップで注文しました。整体を60分ほどお願いしたのと同じような金額で、毎日(壊れるまで)使い続けられると思えば、決して高くはないと考えたのです。

到着した日はあいにくと徹夜残業になってしまい、仕事で凝りをひどくしながら今日の夜こそは帰ってクッションに身を預けることを想いながら頑張ったのでした。翌日帰宅してさっそく使えば、夢心地でした。以来、休日などはビデオを見ながら使い続けてしまいます。
機械は疲れたとも言わずに、休むことなくモミ続けてくれます。実際は15分でタイマーが切れるのですが、そうしたら上下を引っ繰り返してまたスイッチを入れれば、違うモミ方を味わうことができます。あとは少しずつ体の当たる箇所をずらして行き、強さも着ているものの枚数で調整することが可能。写真で赤く光っているのは、ヒーターを入れたところです。人肌ほどの温度で、さらに快適になります。
当てににくい場所があったり、同じ場所だけ続けるとモミ返しもあったりと欠点はあります、全身を同時にモミホグシテくれるマッサージ椅子と比べれば機能的に劣ってしまうのは確かですが、コンパクトで電力もそんなにくわず、自分の好きなように使える優れものなのです。あとは耐久性がどの程度か、それによって本当のお得感がわかるのでしょうが。
さて、まだ手に入れてそんなに長期間使ったわけではありませんが、コリの方はというと……ううむ、なくなることはありませんね。多少は症状が軽くなったという実感もなくはないですが、何カ月か使った後に、またご報告したいと思います。

ルルドのメーカー、アテックスのHP

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「さよならドビュッシー」中山七里(宝島社)
※読書感想についいては、なるべくネタばれを避けるようにしています。
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続編であった「おやすみラフマニノフ」が、ミステリーよりも音楽小説としての創造的な面白さにあふれていたのに対し、本作は苛酷なまでの主人公である少女の境遇を描いたミステリーに付随しての音楽、という印象です。『このミステリーがすごい!』大賞受賞作ということですが、ふだんミステリーというジャンルに馴染みが薄い私としては、前後逆順で読んで良かったと思っております。

もちろんドビュッシーも、音楽に対する熱い愛情と深い造詣にあふれていて、音楽家を目指す者の姿勢のこと、ピアノの奏法のこと、コンクールのことなど、門外漢からすれば興味深いこと多く、満足度の高いものでした。それ以上に、ラフマニノフにもありましたが医学的なことや事件性の方が前面に出ていたということです。ミステリー作品として高い評価を受けた理由がわかります。
いや、作者自身は楽器演奏などしない方らしいのですが、それでも好きだから単に知識でなく感覚として理解できる、ということなのではないかと想像するところです。または、医学への関心の高さから、情報収集や分析力に優れた人なのか…どうあれ、作品が素晴らしければ良いわけですが。
作者の素晴らしいところは、ラストに向かって音楽で盛り上げ、事件の謎もしっかりと(動機となった人の感情も含め)納得いくように丸め込んでいく、綿密に練られたバランスの良さです。投稿作であったドビュッシーと、それが評価を得てからのラフマニノフで作品の志向性を変化させたところにも、作家としての才を感じます。

主人公の少女には、生き続けること、自我を保ち続けること、音楽を続けることへの極限のできごとが次々と襲ってきますが、それに立ち向かう少女の強さ、立ち向かうしかないのだけれど哀しみなどの感情を抱きながらも逃げることのない姿には、痛ましさを感じるほどに感動も大きく。その中で一人の音楽家が誕生していく過程があり、楽曲が本当に聴こえるように言葉で描かれ音に包まれるほどに感動は深く。
これがライトノベルであれば、「ピアニスト探偵・岬陽一の事件簿」みたいなサブタイトルが付きそうですが、そんなにエンタテイメント寄りでなく、しっかりと人間の人生を描いているのが重厚な読み応えです。
リアリティがないという読者感想もネットでいくつか見受けましたが、人間の感情の複雑さを考えれば、それぞれの登場人物たちの行動の動機も十分に受け入れられるものでしたし、時に事実は小説よりも奇なりという言葉のとおり、偶然の重なりや奇跡のようなことも現実には多いのです。小説とはいかにリアルを追求してもファンタジーである、しかし読んだ人によってはリアルに変換される、そうした面白さの中で読むべきものだと私は思っています。まぁ、岬陽一の完璧すぎるところがリアリティないなとは思えますが。


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長年、同人誌で創作漫画を発表してきましたが、本当は小説が主な表現手段。職業はコピーライターで、趣味は楽器を鳴らすことなど。
下記に作品等アップ中です。よろしくお願いします!
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■イラスト作品 pixiv
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