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つばめろま〜なから、なにかを知りたい貴方へ。
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31BLVm7MRDL._SX230_.jpg「バレエ・メカニック」津原泰水(早川書房)作者の小説では「ブラバン」に続いて2作目、タイトル気に入っての読書となりました。
感想を書くのがとても難しい一作です。忙しくて体も頭も疲れている時期に睡魔と戦いながら読んだこともあり、なかなか世界に入り込めず…決して難解という内容ではなかったと思うのですけれど、理解も浅くなってしまいました。
3部構成の1部は幻想感が強く、ところどころ強いイメージが残っています。2部はいちばんスムーズに読めて楽しめましたが、逆に印象が薄く。ラストの3部はデジタル世界と現実の境目をうまく認識できず、曖昧な印象に。どうも、電子ネットワークが絡む話というのは苦手なようです。
理沙パニックというのは、つまり、ユングの集合的無意識が現実に発露してしまったような、旧エヴァ映画のラストのような、そんなことかと思ったのですが、そうした世界の描出としてはとても面白い小説でした(半寝ぼけの印象ですが、たぶん)。
 

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51iXwfNvG4L._SX230_.jpg「泣き虫弱虫諸葛孔明 第参部」酒見賢一(文藝春秋)を読了、抱腹絶倒な三国志も、第3巻となりました。
私にとっては、NHKの人形劇もほとんど見ていなかったし、横山光輝の漫画も読んでないので、本作が三国志デビューなのです。いきなりこれってどうなの、という声も聞こえそうですが、しかし酒見賢一は古今の三国志文献をしっかりと踏まえた上で書いているので、こちらもその上での楽しみ方をしているつもりです。
過日、渋谷ヒカリエ内にできた岡本喜八郎美術館に立ち寄りましたが、NHKの三国志に使われた人形がずらりと…あぁ、これが変態コウメイ、これが猿人リュウビ、これが殺人鬼チョウヒ、これが侵略者ソウソウ…と、笑いをこらえながらの鑑賞となりました。この3巻を読み終わった今、再度足を運んで美し哀しいシュウユさんを確かめてきたいと思っております。

それにしても孔明に人生までも振り回されてしまう呉の将軍周瑜の姿は、痛々しく鮮烈でありました。少しずつ狂わされていく、これが風に聞く孔明の罠というものなのですね。同じようにうまく使われても微笑ましい魯粛と違い、美しく気高い人物だけにせつなさが大きく。
対する孔明、変質さだけでなく悪質さが際だってきました。しかし挫折もせず自信満々に思い通りことを進めてしまうのは、まさに宇宙とつながっている超越者だからなのか。挫折のない人間は主人公としての資質に欠けると思いますが、むしろ彼の罠にはまる人たちが順に主人公となっていく構図ですので、胸をときめかせて読むことができるようです。
そうした群像を描く歴史小説というのも酒見賢一の「陋巷に在り」ではじめて読んだようなもので、ほかの作家とは比べられませんが、ふざけた文章にしていてもしっかりと人の姿を描く力量はすばらしいと思います。ただ、本作と陋巷を比べれば、やはり陋巷の方が格段に面白いとは思ってしまうのですが。
三国志的な楽しみということでは、趙雲だけでなく張飛や関羽が怪獣のごとく暴れ回る姿が欲しいところ。次の巻では、劉備の奥方になった美少女戦士の活躍なども描かれることを願います。

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「静おばあちゃんにおまかせ」中山七里(文藝春秋)を読了。25227772_1.jpg

作者の小説はこれが3作目、音楽もの「ドビュッシー」「ラフマニノフ」以外では初めて読む作品となりました。基本、ミステリーだから読むという嗜好がないので、音楽がらみの事件とか、本作のように女子大生とそのおばあちゃんが事件を解くとか、そうしたドラマ的に惹かれる部分がないと手に取らないわけですが、期待通りにヒロインが魅力的だったので、楽しんで読むことができました。
そんなミステリー素人の私でも、最後の事件の謎は読めてしまいましたが…そうしたことはあまり関係なく、ヒロインとともに主人公の青年刑事も意外に好感のもてる人間だったので、4つの難事件を解決していきながら二人の関係の深まりを中心とした物語として、最後までしっかりと構成されていたと思います。
法曹の世界に対する作者の考えから、親族間の問題、宗教問題、外国人問題、国政問題、そして冤罪の問題と、実はやば目の題材を取り上げながら社会的な正義感がよく出ていて、説教臭い感はありますがその説教をおばあちゃんにさせるということで納得させられます。そこも作者の話作りの上手なところでしょう。そして最後、おばあちゃんの意外な正体へとつながっていきます。

ヒロイン・円が魅力的だったと書きましたが、美人だけれども実際のところは、若い娘特有の浅はかなさやだらしないところもあるし、お嬢様なようでも好奇心旺盛で行動力もある、少しキャラクターとしてはちぐはぐさが感じられました。自分だったら惚れるかなというと微妙な、でも主人公の刑事とのカップリングは確かに絶妙な感じ。二人一組で、好感度の高いキャラクターになっていたと思います。
おばあちゃん・静のキャラクターは、意外なほどにかわいげなくて驚きましたが、元裁判官の厳格さと、孫への愛情と憐憫、そして実の正体を知れば、そういうことかと。物語のラストを強く印象づけてくれる存在でした。
これはミステリー作品なので、話に関係のないシーンはあまり描かれていないのですが、もう少し円と学校の友達の会話とか、人物像をふくらませるところがあったら、もっと面白かった気もします。本作はシリーズで続くことはないのでしょうが、どこかでまた、この二人を見てみたいものです。


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41unBUcL4WL._SX230_.jpg「コロボックル」シリーズなどで子どもの頃から大好きだった佐藤さとるが、自分の父の半生を書いた伝記小説「海の志願兵」佐藤さとる(偕成社)。
岐阜に生まれ、家族とともに幼少期に北海道へ渡り、貧困の中でも学業優秀だったので海軍に志願し、合格して横須賀の兵学校で学び、やがて軍人として順調に階級を上げながら、文学や絵画を趣味とし、結婚して子どもも授かり、士官になった頃までが描かれています。

軍隊とか自衛隊とかには嫌悪感しかない私ですが、日露戦争から約10年後に入隊と、日本にとっては一番良い時期でもあったのでしょう、軍にいながらも平和な生活が綴られています。そもそも志願した動機も、将来の仕事のため電気について学びたいからであり、お国のために尽くすとか、軍人に憧れてとかいう気持ち悪い感情からでないのが良いのです。
出世争いとか、軍隊での暴力的な上下関係とかも描かれていません。実際には多少はあったのでしょうが、あえて描く必要もないというのが、児童文学作家である佐藤さとるの気持ちだったのでしょう。

この後、士官として本格的に戦争の渦中に巻き込まれていく手前で物語を終えたところに、この作品が軍賛美でも反戦メッセージでもない、ただこの時代を生きた人間の頑張る姿や人間らしい想いを描くことで、後代の今を生きる私たちに一つの指針を与える、児童文学者としてはきわめて自然な動機によって書かれた作品であるように思います。
ただ、普段は戦記ものなども読まない私にとって、20世紀初頭の軍の有り様はとても興味深いものではありました。きっと、戦記ものが好きな人でも、英雄などでない一兵卒の物語というのは新鮮なのではないでしょうか。また、私の住む場所に近く、コロボックルシリーズの舞台でもあった横須賀周辺の100年近く前の様子も、身近で興味深いものでした。

そして、淡々と語られてはいますが、家族の絆や友情、恋といった感情も奥深くに込められていて、わくわくして読み進んでしまう文体の確かさや読みやすさは、さすがというしかありません。
佐藤さとるは私の父より2つ歳上ですので、まさに私にとっては祖父世代の物語です。2代前の人は、こんな生活をしていたのかと思うと、隔世の感を覚えますが、すでに私の世代も今の若者からすれば昔を生きてきた人なのでしょうね。


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「ビブリア古書堂の事件手帖3〜栞子さんと消えない絆〜」三上 延(メディアワークス文庫)6144v2w-M9L._SX230_.jpg

地元小説の3巻め、大船を中心に、戸塚方面まで舞台が広がりました。生まれてからずっと戸塚区民だった私にとっては、いま住んでいる大船以上に馴染み深い街ですが、再開発できれいに生まれ変わってからはすっかりご無沙汰です。あのごちゃごちゃしていた商店街へ、ノスタルジー。だから、大船の商店街はなくなってほしくないのですが。
あとは本郷台、港南台、高野、辻堂と、知っている街が次々に出てくる楽しさがあるので、やはりブログで聖地巡礼記事を書いておかないと、と思っています。春にだいたい取材は終えているので、もう一度読み返して検証して…いましばらくお待ちください。

さて、本屋大賞も取りベストセラーとなっているので、作者にも余裕が出てきたのでしょう。既刊2冊よりも章立ての少ない3話構成で、じっくりと人の心を掘り下げていくことができた感じがします。
栞子さんと大輔君の絆も確実に深まって、関係はあまり進展しないですがもうお互いに離れられないような間柄ですね。ただ、普段から仕事を通じて距離が近すぎるせいか、胸がいっぱいになるような恋心とはちょっと違うような気はします。そう、切なさみたいな感じが足りないのは、まだそこまでではないのか、描き切れていないだけなのか、作者の意図かわかりませんが、次あたり、もう少し出てくると良いなと思います。

前巻までに出てきた人たちが、再び登場するのも良い感じです。顔見せではなく、しっかりストーリーに絡んでくるのが、作者の手腕という気がします。自分が生み出したキャラクターを大切にする作家は、好感度が高いです。そして、登場しないのにすっかりラスボス的な存在感を出している、栞子さんの母親が不気味さを醸してきました。
新しく登場した港南台の古本屋と辻堂の古本屋も、まさしく古本屋らしい頑固な個性が出ていて魅力的。古本屋の主人って、けっこう怖い感じがするんですが(新古書店の若いスタッフとは違って)、最近はそんな店も少なくなってきましたか。大船にも5〜6軒あったのが、どんどんなくなっていき、ブックオフができてからほぼ殲滅されました。1軒復活したのが、本巻にも出てきた柏尾川沿いの古本屋の場所のイメージでしょうか。

本作に登場する本について、3話目の宮沢賢治「春と修羅」は、先日読んだ「宮沢賢治、ジャズに出会う」で出版当時の様子など知ることができていたので、より興味深く物語に入り込めました。2冊目の本探しは、あれしかないでしょう、と思いながらも栞子さんも大輔君もわからないというのが、え、世間ってそんなもんなの?と。1冊目「タンポポ娘」はSF方面に疎いので知りませんでしたが、その本よりも冒頭に出てきた西谷祥子のマンガの方が懐かしくて反応してしまいました。
いずれにしても、古本をストーリーに使っていくのがうまいので、引き込まれます。私にも手放すことのできない本がたくさんありますが、そんな本を1冊ずつ取り上げれば、ひとつずつの物語が書けるのかもしれません。本は、それだけ人間と密接なものになるのでしょう。まぁ、そうしたものは本だけでもありませんか。

4巻も冬には出そうですし、栞子母さんもますます気になる展開、その正体は悪人なのか、破綻者か?それとももしかして…などと想像をめぐらせながら、先を楽しみに待ちたいと思います。


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