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つばめろま〜なから、なにかを知りたい貴方へ。
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41unBUcL4WL._SX230_.jpg「コロボックル」シリーズなどで子どもの頃から大好きだった佐藤さとるが、自分の父の半生を書いた伝記小説「海の志願兵」佐藤さとる(偕成社)。
岐阜に生まれ、家族とともに幼少期に北海道へ渡り、貧困の中でも学業優秀だったので海軍に志願し、合格して横須賀の兵学校で学び、やがて軍人として順調に階級を上げながら、文学や絵画を趣味とし、結婚して子どもも授かり、士官になった頃までが描かれています。

軍隊とか自衛隊とかには嫌悪感しかない私ですが、日露戦争から約10年後に入隊と、日本にとっては一番良い時期でもあったのでしょう、軍にいながらも平和な生活が綴られています。そもそも志願した動機も、将来の仕事のため電気について学びたいからであり、お国のために尽くすとか、軍人に憧れてとかいう気持ち悪い感情からでないのが良いのです。
出世争いとか、軍隊での暴力的な上下関係とかも描かれていません。実際には多少はあったのでしょうが、あえて描く必要もないというのが、児童文学作家である佐藤さとるの気持ちだったのでしょう。

この後、士官として本格的に戦争の渦中に巻き込まれていく手前で物語を終えたところに、この作品が軍賛美でも反戦メッセージでもない、ただこの時代を生きた人間の頑張る姿や人間らしい想いを描くことで、後代の今を生きる私たちに一つの指針を与える、児童文学者としてはきわめて自然な動機によって書かれた作品であるように思います。
ただ、普段は戦記ものなども読まない私にとって、20世紀初頭の軍の有り様はとても興味深いものではありました。きっと、戦記ものが好きな人でも、英雄などでない一兵卒の物語というのは新鮮なのではないでしょうか。また、私の住む場所に近く、コロボックルシリーズの舞台でもあった横須賀周辺の100年近く前の様子も、身近で興味深いものでした。

そして、淡々と語られてはいますが、家族の絆や友情、恋といった感情も奥深くに込められていて、わくわくして読み進んでしまう文体の確かさや読みやすさは、さすがというしかありません。
佐藤さとるは私の父より2つ歳上ですので、まさに私にとっては祖父世代の物語です。2代前の人は、こんな生活をしていたのかと思うと、隔世の感を覚えますが、すでに私の世代も今の若者からすれば昔を生きてきた人なのでしょうね。


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