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「オウリィと呼ばれたころ」(理論社)
「コロボックルに出会うまで」(偕成社)
コロボックルシリーズで知らない人のいないであろう童話作家、佐藤さとるの自伝的小説。「オウリィと呼ばれたころ」は戦中から戦後すぐの少年期、「コロボックルに出会うまで」は戦後復興期の青年時代について書かれていて、この2作の前に読んでいた、作者の父親についての評伝「海の志願兵(偕成社)」も合わせて3連作ととらえました。ただし、出版社も主人公の人称表現も違い、それぞれのコンセプトも異なる別作品でもあります。
小学4年生でコロボックルシリーズに出会い、強く影響を受けた私にとって、作者は雲の上のあこがれの人なのですが、実は子どもの頃に会える機会があったのです。同じ戸塚区に住んでいて、教師をしていたこともあり(その頃のことがコロボックル〜に書かれています)、やはり中学校教師だった私の父の同僚から会いたければ紹介するよと言われ…でも内向的な子どもだった私は尻込みしてしまったのでした。もしかすると、生涯最初で最大の失敗だったかも…。
戦争が人の生き方にどれほどの影響を与えるかということを、いろいろな書物を通じて知らされるのですが、この2作は、少年時代の思い出として描かれていて、ことさら鮮やかな印象を与えてくれました。「オウリィ」での、戸塚から北海道まで疎開する道程の過酷さなどは、はじめて聞くような話。疎開も各人が勝手にして良いわけではなかったのだと、その中で生き延びていくことの大変さ。そうした中で、自分(と家族)を支えていた少年の姿が印象的でした。
「コロボックル〜」では、童話作家となるまでの紆余曲折がかかれています。師や仲間、伴侶との出会い、その中で長いことかけてコロボックルの物語を生み出すに至るまでの経緯が書かれています。今とは違う時代背景の中ですが、書くことへの想いというのは普遍のもの、想いの継続が名作を創り出したのだと思い知らされます。
戦争をはさんで厳しくも可能性の大きかった時代でもありますが、書きたいという気持ちが日々の暮らしで開くまでの物語は、作家を志す者の心に深く刺さるのでした。

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大駱駝艦「パラダイス」(2016.7.3 世田谷パブリックシアター)を観てきました。
麿赤兒さんは、昨年12月に音楽劇「レミング~世界の涯まで連れてって~」、踊りは一昨年に天使館の笠井叡さんとのコラボ「ハヤサスラヒメ」を観ていましたが、大駱駝艦の天賦典式は実に久しぶりです。大駱駝艦では25年ほども前でしょうか、津島市の公園で観た野外公演がいまだに印象深く残っているのですが、この劇場も雰囲気が独特なので楽しみに、早めにチケットを取っていました。
舞踏も進化、というかずいぶん変化してきている気がする中で、土方巽の直弟子でもある麿さんがどこまで突き進んでいるかというのは、ひとつの指針と思います。海外でも評価の高い芸術ですが、あくまでも本質は前衛、歌舞伎や落語や大相撲のように伝統芸能になってしまっては面白くありません。歌舞伎や落語や大相撲も、みなさん新しいことに挑戦しようとがんばっているのはわかりますが、世間の保守的な目という縛りは強いように思います。
さて、本公演はとても意欲的な前衛作品だったと思います。テーマと演出、舞台装置や音楽まで、刺激的なものでした。同時に、舞踏の歴史のさまざまなエッセンスも感じました。白い舞台世界で山海塾のような静謐さではじまり、白虎社のように猥雑な展開があり…そしてラストの集結はとても感動してしまいました。
それにしても麿さんは元気で、力が漲っています。舞踏では一番の老舗団体を率いながら、まだまだ舞踏の先を魅せてくれそうで、楽しみな限り…また行きたいと思うのでした。

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2016年5月28日、鎌倉芸術館 大ホールで聴いてきました。
21歳の若さでベルリン・フィルの首席クラリネット奏者に就任したという天才音楽家のコンサートが、歩いて行けるホールで開かれるということでしたので、早々にチケットを買っていました。4列目の左寄りという絶好の席、やはりチケットは開催ホールで買うに限るのですね。
私も一応クラリネットを持っていて鳴らしたりしますし、クラリネット吹きの少女を主人公にした小説を書いたこともありますので、そこそこ馴染み深い楽器な のですが、ソロ演奏を聴くのは初めてです。正確で美しい音を紡ぎだすテクニックも素晴らしかったですが、抒情的な音楽性に引き込まれました。
クラリネットの音色は人の声に近く、呼吸法も歌に似ているということから、プログラムも歌曲中心だったというのも、すごくよかったと思います。
スラリとして端正な感じのオッテンザマーに対して、ピアノ伴奏したアルゼンチン出身のホセ・ガヤルドは髭面で野太い演奏で盛り立てていました。アンコールで連弾を披露するなど、とても良いコンビでした。
演奏終了後にはCDへのサイン会もあったので、1枚購入。そして、地元高校のブラバンでクラリネットを吹く子たちへの公開レッスンもあって、とても楽しく 見させてもらいました。このところどこへ行っても高齢者の比率が高いですが、この客席ではブラバン所属なのでしょう制服姿の高校生たちも多くて、若々しい 雰囲気が新鮮でした。
プログラム
<第一部>
●コヴァーチ:R.シュトラウスへのオマージュ
マーラー:歌曲集から
●《リュッケルトの詩による5つの歌曲集》より〈私はこの世に捨てられて〉
●《子供の不思議な角笛》より〈高遠なる知性のお褒めの言葉〉
●ブラームス:メロディーのように
●シューベルト:アルペジョーネ・ソナタ イ短調 D.821
<第二部>
●ベートーヴェン:モーツァルト〈お手をどうぞ〉(ドン・ジョヴァンニ)の
主題による12の変奏曲
●カヴァリーニ:アダージョとタランテラ
●バッシ:《リゴレット》の主題による幻想曲
<アンコール>
●マーラー:歌曲《子供の不思議な角笛》より〈ラインの伝説〉
●ドビュッシー:小曲集より〈小舟にて〉:ピアノ連弾
<CDサイン会>
<公開レッスン>
大船高校吹奏楽部クラリネットトリオへのレッスン
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古今東西の童話や小説、アニメやゲームに至るまで40作以上を取り上げ、感想や解説や評論でなく、その作品の世界観をシンガーソングライターであり作家でもある、我が敬愛する谷山さんが、幼少期に、大人の折々に、どのように関わり捉えてきたかが綴られています。
それはイラストレーターや絵本作家などを志す“講談社フェイマススクールズ”の受講者に向けて書かれた、創作者のための文章なのですが、谷山浩子というマルチな才能の成り立ちが明かされる著作でもありました。
誰でもが知っているような作品であっても、まったく引っかかりどころの違う感じ方をしたりするところが、国語の教科書的でない自由な発想があって面白いのです。創作者のインスピレーションにつながる心の大切な部分でもあります。
一編ごとにフェイマス出身のイラストレーターが描いた力作イラストが添えられており、ある作品について語られた文をさらに絵で表現するという三重構造になっているのも興味深い本でした。

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ギリシア神話の世界に現代日本の若者たちが迷い込んでの英雄奇譚、前の2巻で登場人物も浸透していたので、ストーリーは流麗に進むようになりました。
仁木作品では「僕僕先生」、「海遊記」、「くるすの残光」などで航海シーンが出てきて、作者は船が好きなんだろうなと思いますが、旅を描く上でも陸路だけでない、船上の様子はアクセントになります。ただ、閉塞された空間だけに航海が長くなってくると停滞感もあり、それがストーリー上必要なことだったというのは、巻末の方で英雄が離脱するところでわかるのですが、読んでいて重くスカッとしない感じもありました。
そこは、仁木作品の体裁が一見ラノベ風なので、軽く読めるような気がして騙されてしまうからかもしれません。
この巻でも冒頭から魔女姫と魔法少女のコンビが出てきて、にんまりです。この辺がラノベ感全開でキャッチーですが、魔法少女という記号によって表そうとしていることがあるように思えます。
私にとってこの作品でいちばん印象的なのが、前巻で颯爽と登場した魔法少女の姿だったので、その記号性をここで分析してみよう、などと思っていたのですが…まだ手がかりも読み込みも少なくてまとまりませんでした。
この物語の魔法少女は、借り物の魔法を操る成人女性であり、つまりはコスプレの延長ですので、まさに記号ですが、サリーからマドマギまで、セラムンやプリキュアも含め、現代に生きる者にとっては、幼い女の子、お母さん、若い男性、50過ぎのおじさんと、それぞれに異なる意味合いを持つ疑似理想の記号かもしれないと思ったり。でもこの神話世界なら、きっと記号が実に変わっていくだろうと期待しています。
本筋では、絶対の力を持つ存在と思われたゼウスにも弱点があることが見えてきて、もとよりギリシャの神々は人間らしすぎるのですが、ドロドロした感情の渦巻く展開もありそうです。あとは、もっと双子にも活躍してもらいたいと思います。そういえば「双子」も、ある時期にアニメなどでは定番の記号となっていました。
ステロタイプにはめて見せながら独自の世界を展開する仁木作品、本作もまだ先が長そうですので、楽しませてもらいたいと思っています。

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