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つばめろま〜なから、なにかを知りたい貴方へ。
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「聴いたら危険!ジャズ入門」田中啓文(アスキー新書)

ジャズ入門書も数多ありますが、お勧めできる本だと思います。以前に読んで感想を書いたマイルス至上主義の中山康樹氏「超ジャズ入門」とは180度違うのは、きっと筆者も頭においていたのではないでしょうか。フリージャズを楽しく聴こう!というコンセプトでのミュージシャン紹介本です。
また、副島輝人氏の「日本フリージャズ史」や「世界フリージャズ記」が現場に近い評論家が書いた貴重な記録書であったのに対して、こちらは作家がファンとしての視点から熱く想いを綴ったものであるので、入門書と専門書といった位置づけになるかと思います。少し嗜好性が違うところも、このジャンルの幅の広さで面白いところでした。

本書に登場するミュージシャンの4分の1は私も生で聴いたことがあり、最初に取り上げられたペーター・ブロッツマンもその一人ですが、いきなりブロッツマンで来たかと、気合いのほどが感じられました。あの破壊的に吹きまくるサックスは特に危険度が高いですから、本書のタイトルにピッタリです。他に取り上げている人たちも、王道あり、意外性ありで、筆者の趣味全開なところが小気味よく感じられました。
1人1枚ずつ、筆者お勧めアルバムが紹介されていますが、フリージャズはライヴに行くのが1番です、ライヴハウスなんてCD1〜2枚程度の料金ですので。すでに亡くなっていたり活動休止の人、来日を待てない人もいますが、今は動画サイトにたくさん映像もあるので、それを見漁るのも良し。気に入ったらCD購入、というのが良いかと思います。

フリーに限らず、ジャズは理屈でなくまず耳で聴き、できれば目で見て感じることが大切と、基本的な楽しみ方が書かれた、初心者からディープなファンまで面白く読める、ステキな本でありました。

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「まほろばの王たち」仁木英之(講談社)

日本の大化の改新後を舞台にした伝奇小説。歴史で学んだ記憶ははるか彼方ですが、知られた人物が登場しつつ、朝廷側でなく追いやられる山の民や神の方から描かれた物語は、現代の諸問題をも想起させる読み応えのあるものでした。

日本の美しさを賛美しつつ、でも歪んだところも多いこの島国の文化・思想ということに気づかされます。そうした歴史の原点として、この時代を選んだところが面白いと思いましたし、考えさせられました。本当の純粋な愛国心って、こういうことなんだよと、問いかけているように思います。

これまでの作品での積み重ねも活きてきているのでしょう。壮大な中国史の中での英雄や神仙の世界、ギリシャの荒ぶる神々、日本の陰に生きる人たちや信仰心、あの世とこの世の狭間、格闘家の魂、などが、日本人なら誰でも知っている、大化の改新という現代に通じる日本の体制の礎となったようなできごとを背景にして様々に展開され、ダイナミックなエンタテイメントさをも持つ物語となっていました。

少女が主人公というのも仁木作品には珍しく、しかしいつでもキャラクター付けが生き生きとしている作者でもあり、ストーリー全体がより魅力的になっていたかと思います。権力を持つ者、異能力を持つ者、幼いけれど才ある少年・少女、人間を超える個性的な神々などとの関わりの中で、奥には恋心なども秘めながら、地味に活躍するところが良い感じでした。

大きな物語だけれど単巻完結なので、仁木作品初心者にもお勧めしやすい一冊と思います。

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「花咲家の人々」村山早妃(徳間文庫)

作者の本は家人が好きでたくさん揃っており、以前から薦められていたのですが、私が読むのはこれがはじめてとなります。
植物と心を通わせて、動かす力を持つ家族の話。これくらいならばネタバレにならないでしょうか。そんな設定よりも、祖父、父、長女、次女、末っ子の男の子と、それぞれが体験し感じ想うことが大切に描かれた、不思議だけれど、胸に染み入るような物語でした。

次女のリラ子がいちばん存在感がありましたが、女子高生なのに媚とか萌が感じられない、なんともサッパリと気持ちよい少女(という言葉も似つかわしくない)です。ついでに理論派の彼女が中心にいることで、他の人たちの少し不明瞭な想いや行動も収まりがつくようにできているようです。
ラジオや怪盗や子猫やクリスマスといったイメージが、物語を鮮やかに彩っています。どこかレトロな商店街が懐かしさを感じさせ、植物園も出てきて、私が植物園の近くに住んでいるだけにイメージが大きくふくらみました。
キャラも生きていてきっと続編も書かれるのでしょうが、4編の想いがラストでつながり、一冊として見事に纏まっていますので、読了感はしっかりしたものでした。

私には児童文学らしく丁寧な文体が、ちょっと読みにくい感じではありました。読み進むうちに慣れましたが、リズム感が合わなかったのでしょう。流して読むことができなかった分、言葉の一つ一つが頭に入ってきていたような気もします。やはり丁寧に書かれていると思います。

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「第二音楽室」佐藤多佳子(文春文庫)

学校を舞台に、音楽する少女を描いた短編集。鼓笛隊でピアニカを吹く小学生、音楽の授業でデュエットを歌う中学生、リコーダーカルテッドの中学生、軽音部でバンドをやる高校生。それぞれの年代の子どもたちの心情が、音楽という行為を通すことで際だっています。音を楽しみながら他人と接することで感じる、痛さ、甘さ、苦しさ、悲しさ…それを糧に確実に成長する年頃。実に清々しいと思うのは大人だからですが、切ない懐かしさを覚えます。

いずれも珠玉の4編の中でも印象深いのは、ラストの「裸樹」。一度傷ついた心が音楽をより所として自然に僅かずつ癒されていく姿、軽音部のバンドを中心に展開するドラマの中で主人公の痛みや不安が伝わってきたので、最後は感動的でした。
音楽を感じると言うことでは、「FOUR」が良かった。リコーダーの音が聴こえてくるような。他人とアンサンブルするというのは、音楽ならではのおもしろさだと思います。そこにまだ幼い恋心が絡んで、楽しい話になっておりました。

佐藤多佳子作品は、出るたびに読むというほどではなく、時々の出会いのように何冊か(それでも半数近いようです)読んできたのですが、いつも鮮烈な印象を与えてくれます。最初に刊行された「サマータイム」も音楽する少女の物語だったと思いますが、子どもが決して天真爛漫ではなく、悩み傷つく人間であると描くのが、二四年組からの少女漫画を読みあさっていたということもあるのか、とても共感できるのでした。

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「猫返し神社」山下洋輔(飛鳥新社)

その暴力的ともいえるほどのパワーとパッションあふれる演奏で世界のフリージャズ史に燦然と名を刻んできたピアニスト・山下洋輔の、デレデレな猫生活を綴ったブログをまとめた本。文章だけでなく写真もたくさんあるので、情景をリアルにイメージできます。
ふだんの洋輔氏はダンディーな姿、ピアノもパワーだけでなく繊細で煌びやかな演奏が同居する、二面性のある方ではありますが、ここまで猫の下僕生活を長年にわたって送られていたとは、さすがに驚愕でありました。

猫が大好き、でも自分の家で飼ったことがなく、猫との共棲に憧れ続けてきた私にとって、これほど猫の本性を教えてくれる本は貴重でした。飼いたいという気持ちが大きくなる一方、人と似て難しいものだなという不安も。生き物を飼うには、それ相応の覚悟が必要とはわかっているところですが、ただデレているだけのように見えながらも現実を突きつけてきます。
一匹ごとにまるで異なる個性、それを理解してつき合い方を変えながら、お互いの信頼関係を作り上げ維持していくのは、きっと楽しく幸せなことでありましょう。言葉や文化を共有する人間同士以上に、素直な気持ちで向き合わなければならないのでしょう。
猫とともに暮らしてきた人とそうでない人の人生には、明らかに違いがあるような気がします。それは自分の周りの人からも感じられることではありますが。

ジャズメンのことを米国では「キャッツ」と呼ぶというのははじめて知りましたが、気まぐれながらなにをやっても愛すべきこの生き物、ジャズのしなやかな即興精神にふさわしく、よくも呼んだものだと感心しました。
いかついサックスプレイヤーの林栄一もたくさんの猫たちに囲まれているということ、真剣な表情で吹く彼の時折見せる笑みが、そういえば猫っぽいと思ったり。

最後に、長年連れ添ってきた愛猫のひとりを亡くした洋輔氏が、猫本家の方に言われる言葉が印象的でした。また子猫が欲しいと考えたけれど、私たちの方が先に逝く可能性が大きいからやめた、ということ。
私も猫を飼うなら今しかないかと思うとともに、古希を超えられた洋輔氏のピアノも、今一度ライヴで聴いておかなければならないなぁと思うのでした。

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長年、同人誌で創作漫画を発表してきましたが、本当は小説が主な表現手段。職業はコピーライターで、趣味は楽器を鳴らすことなど。
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