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つばめろま〜なから、なにかを知りたい貴方へ。
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竹内 真「ぱらっぱフーガ」(双葉文庫)

吹奏楽に青春を捧げる高校生カップルの変則ストーリー。全国大会常連の強豪校で高みを目指す姿と、一から同好会を作り奮闘する姿、両極端のありかたが同時進行していきますが、根底に流れる音楽への情熱は同じもの。そこに優劣はなく、大切な時を共有する仲間とともに音を楽しむ貴さが、爽やかに鮮やかに描かれるすてきな物語でした。

吹奏楽部の活動はリアルですが、競争にともなう屈折や指導の過酷さはほとんど描かれず、嫌みなく優しく純粋な世界なのが読んでいて気持ち良かったです。主題は、別の道を歩むことになった少年少女それぞれの心の成長なので、二人を見守るのにちょうど良いエピソードの積み重ねが見事に構成されていたと思います。

いろいろな出来事が起こるけれど二人の主人公が、思い入れをしたくなる感じではなかったこともあるのでしょう、淡々とした感じで物語は進んでいく印象。しかしだからこそ先へと読みたくなり、最後には思いがけない感動のシーンも現れて、心に残る作品となりました。

私的には、いろいろな楽器の魅力が伝わってくるのがとても楽しく、自分で持っている楽器もいくつかありますが、まだまだ体験してみたいものがあるなぁと思わされました。きっと、アンサンブルも面白いのでしょう。音楽心がかき立てられた読後感です。

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司修「Oe-60年代の青春」(白水社)

画家であり作家である司修が、自ら装幀した大江健三郎の本、主に「叫び声」と「河馬に噛まれる」について考察。まだ中学生くらいの頃に幻想的な絵に出会い、多くの本も読んできた司さんの著作の中でも、これは重苦しく読了までにずいぶん時間がかかりました。けっこうなお歳になっている司さんがこれを書き上げたことにも驚かされます。

多くの大江作品の装幀を手がけてきた司さんにとっても、思い入れの大きな本だったのでしょう。それは、戦時に子どもであり、60年代に青春を送ってきた世代の魂の悲痛な共鳴でした。私は本書に取り上げられた3冊以外にも、これまで大江作品を1作も読んでこなかったのですが、その根底に流れる思想は十分すぎるほど伝わってきました。いや、伝わったのは司さんの想いだけかもしれませんが。

小説の背景にある実際の事件について、多くの文献を引用してつまびらかにしていきます。あの時代の若者たちを象徴する、小松川高校事件、連合赤軍リンチ殺人事件、広島原爆と原発事故、狭山事件。特に連合赤軍については、純粋に自身の存在をかけて革命を追求していった末の切羽詰まった状況が理解できてしまう、だからこそ痛ましくて辛いのでした。私が知らなかった真相がたくさんあって、かなり衝撃的な内容でしたが、また世の中が動いているいま、知っておくことができたのは良かったと思います。

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Duo Morita
2018.7.21 新高円寺 スタジオSK

ドイツを中心に活躍されてるピアノの森田竜一さんとチェロの森田満留さんによるデュオ・モリタ、1年おきの来日演奏会で聴くのは3度目となります。一部はラヴェルとフォーレとピアソラ、二部はラフマニノフというプログラム。

[PROGRAM]
○M.ラヴェル:ソナタ 遺作
○G.フォーレ:ノクターン第5番
○A.ピアソラ:サニーの戯れ、グラン・タンゴ
○S.ラフマニノフ:チェロとピアノのためのソナタ作品19
○A.ピアソラ(アンコール)

ラヴェルはチェロによる繊細な色彩感が美しい曲でした。フォーレはピアノソロ、森田竜一さんの大胆でダイナミックな演奏。
ピアソラは、このデュオの持ち味がすごく発揮されます。切れの良いチェロと重さのあるピアノが奏でるタンゴは、情熱的で迫力があり、胸に迫ってくるようです。
ラフマニノフは、あまりロシアっぽさが感じられない、洗練された印象。ロシア人ピアニストの演奏をよく聴いているせいか、まったく別物の世界観があって新鮮でした。荒涼とした大地よりも、現代のサンクトペテルブルグの街中という雰囲気でしょうか。
アンコールのピアソラは圧巻のかっこよさ、吹き抜ける風にさらされて立ちすくむような感じ。酷暑の中で、涼しさを感じる曲の構成が心地よかったです。
帰りには高円寺のギャラリーに2軒立ち寄り、東京駅で夕飯を食べてから会社に行って仕事を片づけてと、盛りだくさんな一日でした。

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2018.7.28 エアジン

ジャズのライヴハウスでバロック音楽、エアジンならではの恒例企画です。奴田原さんのスピネット(小型チェンバロな楽器)演奏を聴くのも昨年から3度目になります。
スピネットとバイオリンとリコーダー、音自体がその時代を感じさせますが、ホールでなくサロンで聴くような雰囲気も18世紀のヨーロッパ的な、いつもより少し格調高いエアジンでした。
前半はヘンデルやスカルラッティの曲もあって色彩豊か、後半バッハのトリオソナタは聴き応えがありました。家にオルガンを弾く人がいるため普段からバロック音楽には馴染みがありますが、ソロはちょっと息がつまるので合奏だと楽しくて良いです。バスからソプラニーノまで揃ったリコーダーに、楽器好きの心がくすぐられました。
【Member】スピネット:奴田原優子 バイオリン:西田けんたろう リコーダー:斉藤禄美 ソプラノ:西田典子


この日は台風の影響で時折強まる風雨、関内駅から放送ライブラリーで「大おじゃる丸博」など見て、ギリシア料理レストランでの食事と、行く途中途中でびしょ濡れに。それも印象深い思い出となりました。熱々フワフワなムサカ、美味しかった…。

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麿 赤兒
「完本 麿赤兒自伝 - 憂き世 戯れて候ふ」
(中公文庫)

以前から読みたかった麿赤兒の自伝があり、あとがきまで気づいていませんでしたが、その内容に加筆され改題されて文庫版化された本でした。

役者として唐十郎の状況劇場にかかわり、金がなく土方巽の元に転がり込み、大駱駝艦を興しては会社をつぶし…最後は東日本大震災の体験まで、熱い心を持つ真の怪人の、鮮烈にして滑稽な生き様がとてつもなく面白いです。

大駱駝艦はずいぶん昔のことですが、津島市の天王川公園で観た野外公演「怪談・海印の馬」を最初に何度も体験してきましたが、さすがにあんなエネルギッシュな舞台作品を作り上げる人物だけあります。違いすぎて人生の教訓にはならないにしても、自分にないものをストレートに見せられると、読む方の魂も熱くなってしまいました。

巻末に収録された二人の息子たちとの対談も、自伝の生っぽい補足になっていて最高でした。映画監督と俳優に受け継がれているのは、怪親の遺伝子なのか無責任な育て方なのか…でもお互いに尊敬が感じられるのが素敵だと思いました。

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長年、同人誌で創作漫画を発表してきましたが、本当は小説が主な表現手段。職業はコピーライターで、趣味は楽器を鳴らすことなど。
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