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つばめろま〜なから、なにかを知りたい貴方へ。
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「泣き虫弱虫諸葛孔明 第四部」酒見賢一(文藝春秋)


『三国志』や『三国志演義』など多くの文献をふまえた上で、孔明を変態グンシーとして描いてきた物語も転換期を迎えました。前巻ではクライマックスの赤壁の闘いをじっくるとやりましたが、本巻では劉備も一国の長となり、関羽、張飛、趙雲たちの義兄弟たちもそれぞれの知行地を治めることで離れてしまったので、話が拡散気味に。新たに個性激しい人物達も登場してきて賑やかではありましたが、そうした中で孔明の活躍する場面も少ないのが物足りないところです。

そして、悲惨な戦争へと突入し、殺戮の両怪物、関羽と張飛にも衰えが見えてきたところで浅慮からの自業自得というところもあり戦死や部下に殺されます。曹操も病死し、ついには劉備も…という、歴史物ですから仕方のないところですが、もの寂しさを感じる巻となりました。逆に、よく知らなかった三国志の世界観がやっと理解できてきた感じもします。広大な国土を統べることが、人物面でも物理的な面でもいかに大変かを思えば、日本とは比較にならないスケールとなりましょう。

本巻でいちばん楽しかったのは、前巻で劉備に嫁いできたアニメヒロインのような若姫、孫夫人が孔明夫婦に手なずけられていくところでした。キャラが立っていて可愛かったのですが、敵の罠にはまって早々に劉備軍から追放されてしまったのが残念でした。
おそらく次の巻で終わりになると思いますが、オールスターズが次々と消えたので、もういやでも孔明が活躍するしかありません。期待して待ちたいと思います。

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「職業外伝」秋山真志(ポプラ社)

読み終えてから2ヶ月くらい経ってしまいましたが、強い印象が残る本です。近いうちに絶滅してしまうだろう、さまざまな世界で、今も現役で活躍されている人たちを取材し私感も交えて紹介した、とてもディープな作品。紙芝居や幇間や席亭、見世物小屋、といった12職種が取り上げられています。へび屋とか、聞いただけではどんな職業なのか想像もつきません。

一般社会といわれるところで生活している私たちから見ると、まさに別世界のようでたいへんおもしろく、そして生業(なりわい)ということについて考えさせられます。まぁ、別世界と言えば、たとえばこの世界の表舞台?である政界や財界だってそう、私のやってる広告づくりだって他の人からすればわけわからないのでしょうが、そんな胡散臭さとはまったく正反対の、一人一人が一つのことを極めようとする生き方が際だって、とても人間臭さを感じられるのが魅力的でした。
それぞれ取り上げた人の生き方だけでなく、文化としての奥深さが伝わってくる、名著であると思います。料亭で幇間を上げて遊ぶなどということは無理ですが、寄席や見世物小屋には行ってみたいと思いました。

著者の秋山さんとはわりと近くに生まれ育っていて、年齢もそんなに違わないのですが、この少しに大きな世代の壁があるのです。2014年の横浜ジャズプロムナード、打ち上げの席でお会いし、店から関内駅までの帰路をご一緒する間に少しだけお話ししました。板橋文夫さんの親友ということで、鎌倉でコンサートを企画しているとの書き込みをネットで読んでその存在は知っていましたが、ジャズプロの客席でそうとは知らずに彼の姿を目にしていて、なんか異彩を放っている人がいるなと印象深かったのでした。
今はFacebookで友だち登録させてもらい、日々書かれる交友録などの文章に接していて、知らなかった世界を開いてもらっている気がします。

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「幽霊さん」司修(ぷねうま舎)


読んでから半年以上経っての感想となってしまいました。
画家であり小説家であり、よく知られているのは絵本や装幀でしょうが、その司修の作品と出会ったのは、もう40年も前のこと。詩とメルヘンに掲載されていた絵物語に衝撃を受けたからでした。まだ子どもでしたが、妹と一緒に母に連れて行ってもらって個展を見た記憶は今も鮮明です。
司氏の小説を読むようになったのは大人になってからですが、貧乏画家の私小説風な物語に、自分とは違う世界を感じて惹かれ、多くの作品を読んできました。

本書は、東日本大震災と原発事故を背景に、死者との対話が描かれる話を表題作とした短編集です。そのほかの作品も、私小説のようで幻想小説的なところがある、重苦しいですが乾いた感じのある雰囲気が不思議な味わいでした。帯に「怖い話」とコピーが記されていましたが、幽霊は出てきても怪談の類ではありませんので。怖いのは地震や原発という現実です。

「幽霊さん」は、震災後の東北を訪れた画家の話ですが、この世とあの世の境界のような場所で、自然と死者に向き合い語り合う描写が、かえって鮮烈でした。芸術家の感性でとらえる体制への批判的な視線も、ストレートに刺さってきます。それは理屈ではなく怒りや悲しみですから。
強く印象に残ったのは、画家宅に押し掛けてきてわけのわからないことをしゃべりまくる女の話。いかにも精神を病んでいる人なのですが、その話自体が眠りの中で見た悪夢をそのまま綴った、作者の精神の不安定さを表すような作品になっていたのが不快で面白く思いました。

司修さんも、数年前に横浜や群馬での回顧展が開かれましたが、まだまだ若々しく精力的に執筆や画業をされていますので、楽しみに次作をお待ちしたいです。できれば肉筆画の1枚も手に入れたいと思うのですが…貧乏人の過ぎた夢でしょうか。

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「黄泉坂の娘たち」仁木英之(角川書店)

3年前に出た「黄泉坂案内人」を読んだとき、好きな話だけれど主人公的にきれいに終わっていたので、続編はないと思っていたのですが、シリーズ化もできる展開になって再登場してきました。
先の大震災がきっかけだったのかも、と勝手に思ったりしましたが、前巻の発刊自体は震災から4ヶ月後だったようです。今回の発刊のタイミングも、広島の土砂崩れや御嶽山の噴火といった災害が続いた直後だけに、より意味深く感じられてしまいました。

「娘たち」と付いているように、小さい子どもから大人までの若い女性たち(何百年も生きてる人たちも多いけれど)が主要登場人物になっていて、みんなそれぞれに魅力的です。
仁木作品の特徴ですが、アニメ的なキャラクター属性が付帯しているので、個性化が図られて読んでいて楽しさがあります。死を扱うテーマが重い分、そのくらいの軽さがあるのはありがたい感じです。達観したツンデレ美少女仙人より、戸惑い迷うザンネン美人神様の方がかわいいような。

物語は、生々しい現代のOL編から、時代をさかのぼった戦国武将編へと続いたときには面くらいましたが、あの世とこの世の狭間でたくさんの死に向き合う人も神も妖もが、未練を持つ魂について真剣に考え、ぶつかりあいながら行動する姿は、とても示唆に富んだもので面白く感動的でした。
いずれ続巻も出るのではないかと思いますので、きっと川向こうに渡ったりもするでしょう。彼岸がどのように描かれるのか、どんなキャラクターが現れるのか、想像もできないだけに楽しみです。

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「赤土色のスペイン」堀越千秋(弦書房)

もう何年になりましょうか、いつも横浜ジャズプロムナードで板橋文夫オーケストラのバックで巨大なライヴペインティングをしている姿を見てきた堀越さん、一昨年と今年はその打ち上げでご一緒させていただき、お話はできませんでしたがその魅力的な人柄に触れることができました。
…ということで、本を出されているのだから読めばいいんだと、個展が開かれていた銀座の画廊香月にて1冊購入。絵を買うのは経済的に難しいですが、絵もいっぱい掲載されている本ならば多少高くても大丈夫です。

さて、本の内容は数十年住み続けているスペインについてのエッセイが3分の2、残りは日本に来ている時のエッセイという構成でした。どちらも作者の生き方と周りの人との関係が刺激的です。
とにかく文章が味わい深くて人柄そのもの、生活体験としてのおもしろおかしい出来事が、感情豊かでユーモラスに物語られています。その中で、スペインに対して、また日本に対して、そこで出逢う人たちに対して、愛情を持ちながらも厳しい視線を投げ掛けている、それが知的であるとともに芸術家としての直観に依っているので、重く響いてくるのです。
本文もこの上なく面白かったですが、その内容に沿った絵も、画家としての観察眼とそれを自由に表現する心が素晴らしく、倍以上に楽しませてもらえる本でありました。

それにしても、こんなに多彩な分野で活躍をされている多才な方だったとは存じ上げず、毎年のステージ上でのお姿と抽象的な絵を茫漠と眺めていた自分を口惜しく思ってしまいました。また近々、別の本も手に入れて読みたいと思います。

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長年、同人誌で創作漫画を発表してきましたが、本当は小説が主な表現手段。職業はコピーライターで、趣味は楽器を鳴らすことなど。
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