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つばめろま〜なから、なにかを知りたい貴方へ。
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2015.10.25、映画館に行ったのは実に何年ぶりのことか、前に何を観たのかさえ思い出せないほどで、渋谷のイメージフォーラムは初めて。足を運ぶ ことにしたきっかけは、先日の横浜ジャズプロムナードのステージで素晴らしいバイオリンを聴かせてくれた、アレクセイ・アイギが音楽を担当していると知っ たこと、そして情報量の少ないホームページを見ただけでも、この映画の美しさや新しさが伝わってきたからです。

本作を観るにおいては、事前情報は少ない方が良いかもしれません。ラストに、あまりにも衝撃的な体験が待っていますので。未見で興味がわきそうな方は、ネタバレは書かないけれど印象付いてしまうかもしれませんので、以下注意してお読みください。

 
大学生の頃からソ連の監督の映画をよく観ていた自分にとって、本作はN.ミハルコフのモンゴルの大草原を舞台にした「ウルガ」と、A.タルコフスキーの終末戦争への恐れを描いた「サクリファイス」、2作品とイメージが重ねる部分が多くありました。

ただ、両マエストロとは違う瑞々しい感覚がこの作品からは感じられて、進取の精神にあふれた若い監督の想いが、演技経験のほとんどない俳優たちを活かし、中央アジアの広大な平原を舞台にして、水平と垂直とシンメトリーにこだわった映像構成により、一部の隙もない美しさに結実したという、奇跡のような世界だと思いました。

ヒロインは東洋系の美少女ですが、ほとんど愛想や媚びを含んだ笑顔を見せることなく、気高さを感じさせます。いっさいセリフのない作品ですので、表情から感情を読みとるしかないのですが、単調な暮らしを幸福に感じているのか、諦めているのかもつかめない、それでいて生きる意思が伝わってくるのがとても印象的でした。

父親は厳めしいながらどこかユーモラスな人間性を感じさせ、二人の若い青年は情熱的だけれどいやらしさを見せることなく純粋で、一軒のボロ家しかない大平原の一部となっています。
この何もない場所で、何でもない日常が流れ、牧歌的なドラマが描かれていく…のかと言えば、昔から受け継がれてきた遊牧の民の暮らしではなくて、車や飛行機やラジオが外の文明と繋げている、危うさを感じさせる世界。やがて、有無をも言わせぬエンディングに繋がっていくのでした。

観終わった時の呆然とするしかない気持ち。客席を立って階段を上り外に出るまで、観客の誰一人として言葉を発しない静寂な行進、コアな映画ファンが集まるイメージフォーラムにしてこれなのですから、衝撃の大きさを表していたでしょう。感動でも、恐怖でも、カタルシスでもない、心を震わせ刻み込まれた体験となったように思います。


最後に、アイギの音楽は映像世界の中でムダな自己主張をすることなく、しかし無言劇の空隙を大自然の音とともに静かな存在感で埋め尽くしていきます。ジャズプロでは太田恵資とのバイオリンデュオで即興演奏を聴かせてくれましたが、ロシアでは人気の作曲家として、多くの映画音楽も手がけているという才能が存分に発揮されていました。

太田恵資は、本人はいやがるだろうけれど日本で言えば坂本龍一や久石譲のように知られた作曲家、と紹介していましたが、なるほどと思いつつ、やはりソ連・ロシアの映画音楽を数多く作ってきた巨匠E.アルテミエフとの共通が感じられる音楽だったなぁと感じました。ジャズプロでCDにサインしてもらいましたが、自分の宝物としての価値が上がってしまいました。アレクセイ、スパシーヴァ。

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