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「君を守るために僕は夢を見る2」白倉由美(星海社文庫)を読んだ感想です。
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作者初の児童文学として書かれた「君を守るために僕は夢を見る」(講談社)が出てから8年、すっかり内容を忘れてしまっていたので、前巻の再読から続けて読みました。たしかに物語は続きが気になる感じがではありましたが、まさか時を開けて続編が出るとは思ってもみなかったという作品です。
作者としてみれば、時が経って旧作への想いが募りまた書きたくなるというのはよくわかることで、実際、続編が読めて良かったと思いました。そして、未だ終わらぬ作品は大きな転機を迎えたところで、来春に3巻が出るということでも、作者の思い入れの強さが伝わってきます。しかしこの先、児童文学の範疇ではなくなりそうです。

白倉由美というひとは、漫画家として活躍している時から読んでいましたが、小説を発表するようになり「ミルナの禁忌」のような病的なまでに耽美な作品から、私小説的な「大きくなりません」や、児童文学と自称される本作まで、とにかく子どもから大人になるということに対して非常にこだわりの強い作家だと思います。
「こだわり」と辞書を引いてみれば、決して良い言葉ではないということがわかりますが、頑固で偏執的という意味が、白倉作品にとっては中毒的な魅力になっているのです。いろいろな面で好き嫌いが別れるところではありましょうが。

確固たる美少女正ヒロインの砂緒は別として、1に登場した美少女・苺が2では活躍するかと思いきやあっさりと捨て去ったのは残念と思いましたが、雨花という死の気配を纏う美少女が2巻のヒロインとして素晴らしい存在感を見せてくれたのがなにより印象的でした。白倉由美の美少女は、アニメ化してほしくない、言葉の上で思い描きたくなる少女たちだなと思います。

と、つい女の子に目を奪われてしまいますが、主人公の少年の真っすぐなようで屈折した感情、理不尽な境遇と思春期の葛藤が交ざった心こそが本作2巻のテーマであり、ラストの思いがけない言動に至る成長の物語は、青春の痛さ切なさを思い出させてくれます。
それはあまり思い出したくないものであったり、今の自分をつくっている大切なものでもあったりします。
そんな少年少女の持つカケラを、あえて傷つきやすいように鋭く尖らせ、物語に潜ませてくるので、読んでいて気が抜けません。

物語の人物たちの想いについては、感情が鋭敏な分だけ理解し難く感情移入できない部分も多々ありますが、それは現実でも人はそれぞれに考え方も生き方も違ってわからなかったりするのと同じこと。同化するのではなく寄り添って見守っていきたいと思う作品なのでした。

ちなみに表紙の絵はずっとアニメ監督の新海誠、孤独な世界観がとても良いです。文庫版で出た1巻前の1巻とは違う絵、だからといってもう一度買うほどのマニアではないのですが。

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senri3.jpgはじめは1巻で完結かと思っていた千里伝も、早3巻目。しかもこの巻のラストは「つづく」書いてあるかのようで、ただでさえ広大な古代中国を舞台にしながら、人の世と神仙の世界、魔物の住む異界、時の流れ、世界の因果律というものまで含んだ壮大な物語へとどんどん突き進んでいます。言ってみれば、ドラゴンボールをもう少し高尚にした感じなのですが、その奥には日本の文化では持ち得ない大きな思想が潜んでいて、ところどころに垣間見えるのがおもしろいのです。

これだけのスケールになってくると、主人公にもそれにふさわしい資質がいるというもの、1巻で見せた少年・千里のひどく歪んだ性格というものが、次第に強さへと変わっていく、ひどい主人公だと思っていたけれどそういうわけだったのかと、納得してきたところです。

この巻では千里にもまして、主人公格3人のうちの1人、武僧・絶海がとんでもない方向に走ってしまうのですが、それも次の物語への序章ということのようです。坊さんがある意味主人公というのは、先に刊行された「海遊記―義浄西征伝」とかぶっているというか、相乗効果でテーマが深まっている巻があります。

基本的にはアニメ的なキャッチーをも備えた作者なので、アクションも本格的、美少女の性格付けもはっきりしていて、娯楽ものとしても楽しめるところが技量でありましょう。2巻での空翼、3巻での蔑収というヒロイン描写はなかなかに愛らしく(怖い子たちでしたが)秀逸でした。

とりあえず天地がひっくり返るほどの超展開で終わりましたので、4巻が楽しみです。作者としても想像力を広げて創造力の限りを尽くさないと難しそうで、ファンとしては応援しながら期待して待ちたい、できれば早めに、と思います。

ところで、1巻が文庫本化もされましたが、表紙絵のあまりの違いに驚きました。これはありなのか?

 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

ついでなので、1巻を読んだ時(2010年2月)の感想文も以下にコピペしておきます。2巻「千里伝 時輪の轍」の感想は書き忘れていたようです。

『千里伝 五嶽真形図』仁木英之(講談社)
作者お得意の歴史中華ファンタジーですが、「僕僕先生」のような美少女とのまったり甘味ある旅ではなく、少年たちのバトルに満ちた旅。中国という広大な大地が舞台なだけではなく、神仙とか異世界とか、千年の時とか、スケールが大きく読み応えもある物語でした。
マンガのイメージ的には、ベルセルクの世界観とドラゴンボールの戦士たちを掛け合わせたような感じ、かな。アクションシーンが格闘技大好きな者には目に浮かぶ迫力あるものになっていて、とても良かったし。作者は空手マンのようなので、痛さとかがリアルな感じです。
物語りの中でなにが最も印象的かと言えば、主人公の性格の悪さでした。高慢ちきでねじ曲がっている、生意気な成長しない子供。ひっぱたきたくなるような憎たらしさが、でも不快ということでもなく・・・それは、周りの人物たちが負けないだけの強さや大らかさを持って接するからなのでしょう。そんなさっぱりした感じが、この作品の最大の魅力なのです。いや、この作者の魅力なのでしょう。
ラストの方は、ちょっとものごとの変化が性急すぎた感じもして、あれあれ、そんな簡単に?と少し面食らったりもしましたが、それはそれでテンポ良く、爽やかな読後感につながった気がします。

それにしても、仙人という存在は本当に不思議です。僕僕先生や、南條竹則の作品でその世界観を垣間見てきましたが、やはり中国という日本の何倍もの歴史と智を持っている国の力の源なのかなぁと思わされます。そこに儒学が生まれ、地続きの外国から仏教とか、イスラムやキリスト教なども加わって、大きな文化ができあがっているわけですから、島国に住む私達が簡単に理解できるものではないのでしょう。
なんか、中国を蔑視や敵視する人達が(特にネット上では)多く見受けられますが、本当に狭い了見だと、気付くわけです。そう、中国から見れば、日本ってちっぽけな島国というだけでなく、薄っぺらな文化の国なんじゃないかな。そこを理解した上で、でも日本の文化には中国にはない素晴らしさがあるのだと、競うのではなく認識するというレベルでとらえていくべきだと思うのでした。

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荻原 規子作(カドカワ銀のさじシリーズ)

物語もクライマックスを迎えた第5巻。いよいよ忍者軍と陰陽師軍2つの陣営が対決する学園祭…でしたが、闘いは意外な方向に向かい、今までじれったかったヒロイン泉水子がやっと主人公らしく活躍した感じです。
自分自身の存在意義をやっと意識してきて、自我も目覚めてきて、やるべきことを自覚して行動できるようになった、だめな娘だったのがとっても成長してきて嬉しいのだけれど、それ故にちょっと危うさも増して、ハラハラさせられます。それこそ物語の醍醐味ですが。

デビュー作から本作まで、基本的に大きなテーマのヒロイックなファンタジーを書き続けている荻原氏ですが、空気感の伝え方が上手い、それがこの作者の持ち味だと改めて気付かされた巻。重苦しい場にとらわれた空気とか、そこから開放された時の清々しさとか。どうにもならないやるせなさや、思いがけないシーンでの緊張感とか、気持ちの機微の表現が巧みなので、深く感情移入させられるように思います。

次が最終巻になるのでしょうか。姫神とはなにか、という最大の謎が明かされる中で、ここまでキャラの立ってきた登場人物たちがどんな想いを持って行動していくのか、とても楽しみになってきています。

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中国・唐代の義浄という僧侶が、真の仏法を求めて天竺へ行く希望を持ち、艱難辛苦の上で到着するまでの旅を描いた小説。
それだけ書くと、お堅いように思いますが、前半はたしかに仏教歴史小説という感じの厳格な宗教観、しかし後半になると一転して冒険活劇ファンタジーに変身します。作品として分裂しているわけではなく、前半あってこその後半の面白さや盛り上がりにつながっているわけで、それは見事な筆の冴えと感嘆する次第です。
作者の仁木さんは意欲的に次々と作品を発表されていますが、まさに創作の勢いがある時期という感。どれも歴史や風俗といった考証がしっかりしているので、どれだけ破天荒な物語を書いても破綻することがなく、仙人も僧侶も、権力者も英雄も忍者も、しっかり人間の本質を描き切ります。本作では僧侶、商人、船乗り、海賊、といった人達ですね。
そして、かわいい女の子。ある意味ではアニメ的な萌え属性を持たせつつ、必ず芯の強さを持っているのがとても魅力的です。本作では、ほとんど坊主や海の男ばかりの中で、3人ばかりの少女が登場しますが、いずれも困ったちゃん(ツンデレ・電波・ヤンデレ?)でありながら(だからこそ?)、心惹かれました。

もちろん本筋はそこではなく、万人を救うことのできる真の仏法とはなにか、それを求める義浄の姿とその心こそが見所です。玄奘(三蔵法師)の西遊記さながら、不思議な出来事や困難に直面しながら海路の旅をする中で、多少のゆらぎはありながらも固く信心を貫き通す、これは今の世の中で求められている強さなのかもしれません。
道はまだ半ばというか、まだ真理の端緒にしか着いていません。義浄という人は長く天竺に留まり、多くの成果を中国に持ち帰った人らしいので、当然ながら続編を期待してしまいます。知らなかった中国の歴史文化を描いて見せてくれるように、もっと知らない天竺(印度)の歴史文化を描いて見せてほしいと願います。酒見賢一の「陋巷に在り」くらいの大作になっても付き合いたいです。

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広告ディレクターの馬場マコト氏による、昨年出版された「戦争と広告」にも登場した、花森安治の足跡をたどった伝記小説です。
私はこの1冊を読むまで、花森という人のことを知りませんでしたが、「暮しの手帖」創刊時からの編集長として有名な文化人だったようです。「戦争と広告」での主人公、山名文夫のことも本を読むまで知らなかった私は、広告業界にいながら無知な奴であると、あらためて思いました。現役の広告マンのこともよく知らないし、あまり興味もないのですが。

さて、著者の馬場さんとは、幸運なことに何度か一緒にお仕事をさせていただいたことがありますが、さすがにしっかりと芯の通ったクリエイティブをされる方です。大先輩の仕事ぶりを見るだけで、広告制作の面白さと厳しさを教えられる感があります。
その馬場さんがいま、さらに先建クリエイターたちの生き様について振り返り、著作として発表されるのは、広告とか出版とかの業界にいる後輩たちへ伝えたい、強いメッセージであると思っています。広く一般の人が読んでもおもしろく考えさせられる本だと思いますが、やはりメインターゲットはそこでしょう。

あとがきで、今はきな臭い世の中になってきているが、戦争は決して起こしてはいけない、なぜなら戦争が起これば嫌だと思ってもそれに加担せざるを得ないから、というように書かれています。
平和な世を生きて来た私達が、そんなことはないと思っていても、花森の生涯を見ればわかるだろうと、つきつけてきます。もともとリベラルな思想の持ち主であった花森が、戦争を鼓舞するのための宣伝に尽力した。そのあたりのメッセージ性は、前作の山名文夫の生きざま以上に明確に伝わって来ました。
戦争というものが人間に与える影響の大きさ。それは体と心に刻まれる、完治することのない大きな傷です。もちろん、その時代に生きる人は、それなりに幸せや充実などを覚えることもあるでしょうが、自由を制約された中での幸福は、真の幸福ではあり得ないものです。
自然災害や人的災害も、同じように人間に不幸をもたらすということを、今年私たちは再認識させられたわけですが、戦争というものは避けようのない災害ではなく、人間の意志によって起こされる不幸である、そこが根本から違うのです。

民主主義は、民衆のための思想である、しかし民衆は、時代に流されるものである。戦前から戦中の世の中に流された花森を、戦後の全共闘時代に流された馬場さんが語ると、非常に説得力があります。
私は子供のころに左翼活動家たちのレジスタンスに憧れの目を向け、革命家になりたいなどとも思いましたが、一人で行動できる齢になった時には、そうした空気は社会になくなっていました。なんとなく、体制には騙されないぞ、資本主義には躍らされないぞ、という意志だけをもちながら、それを行動で示すような場がありませんでした。私は、時代の喪失感に流されてきたのかもしれません。
その間にも、民衆は経済中心に流されてきました。日本列島改造計画、バブル経済、小泉構造改革(新自由主義経済)。そんな中で危うく育ってきたのが、原発依存のエネルギー政策だったり、偏向した愛国心や国粋主義だと思います。また、今の反原発の潮流にしても、本当にライフスタイルを根本から変える気がなければ、一過性で終わってしまうでしょう。
戦後66年経って、結局のところ理想の世界などまったく実現していない、その方向さえ定まらないのは不思議とすら思えます。いまこそ、次の世代へとつなげるための、民衆の意識を変えるための、優れた思想とそれを広めて告げる広告が必要なのかもしれません。
花森の「暮しの手帖」もそうした民衆の意識を変えるための一運動でしたが、もっと大きなものを作ろうではないかと、馬場さんもそこまでのメッセージを送ってきたのではないでしょうが、そこまで行って欲しいですよね。いや、誰にもなんの影響力もない(悲しいかな行動力もない)私などは、残念ながら他人事のようにしか言えないのですが。
広告人だった山名文夫は、クライアントがあって作り発信し続けた。出版人となった花森安治は、広告を取らずに読者のために作り発信し続けた。この違いがなにより大きく、馬場さんは広告人ですが、小説家という自己表現者でもあるわけで、「戦争と広告」の派生続編ではない、対象的な生きざまを描かずにいられない動機となり、自らの想いを世に問おうとしたのかなと思いました。

そんなふうに問われれば、とても意義のある1冊でした。白水社の刊ということで、どれだけ発行されたか分かりませんが、力のある広告人、出版人の多くに届けばと思います。でも、発売日の朝に汐留の電通本社ビルの下の本屋に行ったのですが、見つからなかったのですよ…。

白水社の本書紹介ページ


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長年、同人誌で創作漫画を発表してきましたが、本当は小説が主な表現手段。職業はコピーライターで、趣味は楽器を鳴らすことなど。
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