つばめろま〜なから、なにかを知りたい貴方へ。
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いよいよ先生も王弁君も影が薄く…。物語の中心は、僕僕道中ご一行様でもなく、訪れた先の人たちとなっています。一行の中では、殺し屋・劉欽と彼にすっかり懐いてしまった小さな女の子・蒼芽香にスポットが当たっていて微笑ましかったですね。実は前の巻の内容が今一つ思い出せなくて、その間に読んだ作者の「海遊記」や「魔神航路」の内容とも混ざってしまったからのようです。まぁ、それほど差し支えもないかな。
6巻まで重ねてきて、僕僕先生の正体をはじめいろいろな人物背景も深まり、同時に作者は他の作品で多角的に哲学的なシリアスを描いてきているので、お気楽なロードストーリーで済ませることができないようになってるのかなと思います。私的には歓迎するところですが、最初の頃のライトノベル的なテイストを求めるファンの中には離れていく人もいそうです。
とはいっても、新たに登場してくるキャラクターもアニメ的に色づけされているのは変わっていません。この巻で登場した紫蘭などは、アニメで女剣士系と言えばこんなしゃべり方のキャラクターがいたよね、というような類型を当てはめられていて、宋格子も馬銀槍も絵が浮かぶような人物像で、容易に想像が膨らむだけ素直に楽しく読みやすいと思います。
本巻では国同士の力関係など、人間界のきな臭さが強く漂っています。最後には伝説の神の復活というファンタジーが用意されてはいましたが、神の力にばかり頼っていてはいけない、という人間側の強い意志が出ていたのが、これまで神仙賛歌的だった本作において、大きく異なるところです。物語全体のターニングポイントでしょうか。
その中で、少しは逞しくなってきたかと思っていた王弁くんのダメっぷりが戻ってきていて、もう少ししっかりせいやと声をかけたくなりますが、きっとまた、後の巻で活躍する場面も用意されるのでしょうから、呆れながらも冷ややかに見守ることにしましょう。
それより、前の巻でなんとも腑に落ちない感じの行動をしていた僕僕先生が、本巻でもなんだかツンデレの覇気がなく達観した仙人っぽさもなかったのが心配です。明るく元気で少し意地の悪い美少女仙人こそが、ほかの作品にはない魅力ですから、また圧倒的な力を発揮して活躍する場面も見たいものです。
ここまできて、物語の結末に至る今後の展開がまったく想像できないのですが、ハッピーでは終わらないような気がしてきました。驚くようなエンドを期待しつつ、次を待ちたいと思います。
6巻まで重ねてきて、僕僕先生の正体をはじめいろいろな人物背景も深まり、同時に作者は他の作品で多角的に哲学的なシリアスを描いてきているので、お気楽なロードストーリーで済ませることができないようになってるのかなと思います。私的には歓迎するところですが、最初の頃のライトノベル的なテイストを求めるファンの中には離れていく人もいそうです。
とはいっても、新たに登場してくるキャラクターもアニメ的に色づけされているのは変わっていません。この巻で登場した紫蘭などは、アニメで女剣士系と言えばこんなしゃべり方のキャラクターがいたよね、というような類型を当てはめられていて、宋格子も馬銀槍も絵が浮かぶような人物像で、容易に想像が膨らむだけ素直に楽しく読みやすいと思います。
本巻では国同士の力関係など、人間界のきな臭さが強く漂っています。最後には伝説の神の復活というファンタジーが用意されてはいましたが、神の力にばかり頼っていてはいけない、という人間側の強い意志が出ていたのが、これまで神仙賛歌的だった本作において、大きく異なるところです。物語全体のターニングポイントでしょうか。
その中で、少しは逞しくなってきたかと思っていた王弁くんのダメっぷりが戻ってきていて、もう少ししっかりせいやと声をかけたくなりますが、きっとまた、後の巻で活躍する場面も用意されるのでしょうから、呆れながらも冷ややかに見守ることにしましょう。
それより、前の巻でなんとも腑に落ちない感じの行動をしていた僕僕先生が、本巻でもなんだかツンデレの覇気がなく達観した仙人っぽさもなかったのが心配です。明るく元気で少し意地の悪い美少女仙人こそが、ほかの作品にはない魅力ですから、また圧倒的な力を発揮して活躍する場面も見たいものです。
ここまできて、物語の結末に至る今後の展開がまったく想像できないのですが、ハッピーでは終わらないような気がしてきました。驚くようなエンドを期待しつつ、次を待ちたいと思います。
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「ブラバン」津原 泰水(バジリコ)
予備知識もないはじめての作家、高校のブラバンが舞台ということで面白そうだと思って読んでみると、まったく予想と違う方向の世界。極端に評価が分かれる作品でしょうが、私にとっては非常に面白い小説でした。
ブラバンといえば、音楽やるのに体育会系で明るいイメージ、そんな感じのエンタテイメント小説を期待するなら、大きく裏切られます。これは、正反対のイメージを持つ純文学と思った方がよいでしょう。
あとから調べれば作者はホラーを書く人だそうで、そんな不穏な雰囲気だけを纏いながら、今に半ば絶望しつつ、ニヒルに、シニカルに過去を語っていく。青春の爽やかさでなく、若さの退廃的な部分を際立たせていて独特な感じでした。
舞台が東京のようにおシャレな大都市ではなく、かといって長閑な田舎でもない、地方都市・広島だというのも味になっています。広島弁でのしゃべりが元から甘美な世界を許さないもののようで、弦バス奏者らしい主人公の性格もありますが、心の熱さすらもクールに客観視されたドラマです。
主にクラシックの曲を演るブラバンでのできごとを中心に描きながら、まさしく70〜80年代前半青春世代の心をつかんでいたロックやジャズにも話が及ぶので、音楽ものとしても十分に面白い。ですが、この作品のテーマは人物群像です。人数の多い吹奏楽部という設定の中で、ほとんどすべての人物の過去と現在にまで光を当てて行く、光が強いほど影の部分が浮き立っていく。
主人公を含めて多くの人物が、とても幸せとは言えないような人生を送っているのが、ものすごく切ない。でもそのリアルな切なさが、生きることの勇気を与えてくれた気がしたのです。
決して戻ることのできないあの頃への郷愁、しかしそれは美化した憧憬ではなく、さまざまな痛みや悔恨をも伴った過去の体験でしかない。それでも、今の自分が失ってしまったものがあった時代なのです。
物語は、失ったものを取り戻すとまではいかないまでも、それがなんだったかを確認するかのように、今と昔が交差して行きます。いろいろなエピソードが淡々と語られ、そんなに特別な人間やドラマチックなできごとではないのに、引き込まれていくのでした。
さて、読み進んで本のページは残り少なくなってきたのに、あるだろうクライマックスが描けるのか?と不安になりましたが、予想外の実に見事なラストで締めてくれました。全体を通じて淡々とまとまりなく語られていくように見えて、しっかりと構成されているところに作者の力量の高さが感じられ、満足でした。
ここまでのめり込めたのは、私と作者の世代がかぶっているからというのも大きいでしょう。主人公が1年の時の3年の先輩が、私の世代です(年齢ばらしてるな。隠す必要もないですけど)。
私にとっては、高校時代をこんなにも鮮烈に思い出すことができません。部活には入りましたが、中途半端でしたし、今に至る友人というのもいません。だからそこにあるのが決して美しいものではなくても、うらやむべきものとして感じられます。
比べれば私の高校時代はなんとも空虚な時代だったように思えますが、しかしこの頃に夢中で読んだ少女漫画や聴いた音楽などが、今の自分にとっては大きな糧となっていることを思えば、他人の芝生でしかないのだとも気づきます。
若者よ、今を大切に。年寄りよ、過去を大切に。そして、今を、生きる…。
予備知識もないはじめての作家、高校のブラバンが舞台ということで面白そうだと思って読んでみると、まったく予想と違う方向の世界。極端に評価が分かれる作品でしょうが、私にとっては非常に面白い小説でした。
ブラバンといえば、音楽やるのに体育会系で明るいイメージ、そんな感じのエンタテイメント小説を期待するなら、大きく裏切られます。これは、正反対のイメージを持つ純文学と思った方がよいでしょう。
あとから調べれば作者はホラーを書く人だそうで、そんな不穏な雰囲気だけを纏いながら、今に半ば絶望しつつ、ニヒルに、シニカルに過去を語っていく。青春の爽やかさでなく、若さの退廃的な部分を際立たせていて独特な感じでした。
舞台が東京のようにおシャレな大都市ではなく、かといって長閑な田舎でもない、地方都市・広島だというのも味になっています。広島弁でのしゃべりが元から甘美な世界を許さないもののようで、弦バス奏者らしい主人公の性格もありますが、心の熱さすらもクールに客観視されたドラマです。
主にクラシックの曲を演るブラバンでのできごとを中心に描きながら、まさしく70〜80年代前半青春世代の心をつかんでいたロックやジャズにも話が及ぶので、音楽ものとしても十分に面白い。ですが、この作品のテーマは人物群像です。人数の多い吹奏楽部という設定の中で、ほとんどすべての人物の過去と現在にまで光を当てて行く、光が強いほど影の部分が浮き立っていく。
主人公を含めて多くの人物が、とても幸せとは言えないような人生を送っているのが、ものすごく切ない。でもそのリアルな切なさが、生きることの勇気を与えてくれた気がしたのです。
決して戻ることのできないあの頃への郷愁、しかしそれは美化した憧憬ではなく、さまざまな痛みや悔恨をも伴った過去の体験でしかない。それでも、今の自分が失ってしまったものがあった時代なのです。
物語は、失ったものを取り戻すとまではいかないまでも、それがなんだったかを確認するかのように、今と昔が交差して行きます。いろいろなエピソードが淡々と語られ、そんなに特別な人間やドラマチックなできごとではないのに、引き込まれていくのでした。
さて、読み進んで本のページは残り少なくなってきたのに、あるだろうクライマックスが描けるのか?と不安になりましたが、予想外の実に見事なラストで締めてくれました。全体を通じて淡々とまとまりなく語られていくように見えて、しっかりと構成されているところに作者の力量の高さが感じられ、満足でした。
ここまでのめり込めたのは、私と作者の世代がかぶっているからというのも大きいでしょう。主人公が1年の時の3年の先輩が、私の世代です(年齢ばらしてるな。隠す必要もないですけど)。
私にとっては、高校時代をこんなにも鮮烈に思い出すことができません。部活には入りましたが、中途半端でしたし、今に至る友人というのもいません。だからそこにあるのが決して美しいものではなくても、うらやむべきものとして感じられます。
比べれば私の高校時代はなんとも空虚な時代だったように思えますが、しかしこの頃に夢中で読んだ少女漫画や聴いた音楽などが、今の自分にとっては大きな糧となっていることを思えば、他人の芝生でしかないのだとも気づきます。
若者よ、今を大切に。年寄りよ、過去を大切に。そして、今を、生きる…。
「魔神航路」仁木英之(PHP文芸文庫)
本当に精力的に次々と作品を生み出している作者の、また新しいストーリーの始まりです。文庫本の書き下ろしということで、1巻完結かと思って読み始めたのですが、ギリシア神話の世界を舞台にした話がそんなに簡単に終わるわけはありませんでした。
それにしても、中国の神仙、天竺までの仏僧行脚、日本の八百万神、江戸初期の切支丹ときて、ついにギリシアの神々と、宗教観を取り入れることで小説としての深みが増していきます。世の中には単に設定として使う作品も多いですが、しっかり考証されているので知的好奇心をも刺激してくれるのが素晴らしいです。
さて、中国でも日本でもなく、古代(神代)とはいえ西欧での物語、しかして中身は現代日本の若者たちの青春群像なのですが、ギリシア神話の名だたる神や英雄たちが続々と登場して活躍する展開が新鮮で楽しいものでした。
もちろん、その筆頭は魔神・テューポーンで、そのかわいらしさにすっかり魅せられてしまいます(本来は荒ぶる男神のはずなのですが、神に性別はないと本人も言っております)。アニメなどでよくある萌えキャラタイプであると言えばそうで、当然に作者もそこを狙ってキャラを立てていると思われますが、しかしそれだけでは終わらない、神としての奥深さが描かれているところが魅力です。
それは、神の時間と人の時間の違いなのかもしれません。神と人が融合するというこの話の肝は、そこにあるかと思います。古代と現代の時の壁を超える経験をした神や人たちが、そのうち出るだろう2巻ではもっとダイナミックに動き回るかと思うと、続きが楽しみです。
それにしても、ギリシア神話は小学生の頃に児童書で読んだ記憶があるくらいですが、とんでもない神様たちの話です。こんな話が何千年も前に生まれていたというのが驚きです。中国4千年の歴史もすごいですが、そこにキリストやブッダや孔子が生まれた文化的ベースがあるわけです。
それに比べて日本の神話なんてちっぽけなものだよなぁと思ったり。別に小さいことは悪くないのですが。日本が神国だなんて勘違いするたびに大きな過ちを冒してきたわけで、日本文化の素晴らしい神髄はもっと別のところにあるのだと理解していなければなりません。と、いつも仁木氏の作品には気付かされるのです。
テューポーン以外にも、幼なじみの女の子や双子の女の子、介抱してくれたギリシアの少女もまた登場してほしいしと、なかなかステキな女性も多く、どんな展開を描いてくれるか。もちろん、男どもの熱いバトルアクションや冒険も見所ですが。主人公の性格がちょっと・・というところも、変に感情移入し過ぎないので良いのかも知れません。続巻を待望することにしましょう。
本当に精力的に次々と作品を生み出している作者の、また新しいストーリーの始まりです。文庫本の書き下ろしということで、1巻完結かと思って読み始めたのですが、ギリシア神話の世界を舞台にした話がそんなに簡単に終わるわけはありませんでした。
それにしても、中国の神仙、天竺までの仏僧行脚、日本の八百万神、江戸初期の切支丹ときて、ついにギリシアの神々と、宗教観を取り入れることで小説としての深みが増していきます。世の中には単に設定として使う作品も多いですが、しっかり考証されているので知的好奇心をも刺激してくれるのが素晴らしいです。
さて、中国でも日本でもなく、古代(神代)とはいえ西欧での物語、しかして中身は現代日本の若者たちの青春群像なのですが、ギリシア神話の名だたる神や英雄たちが続々と登場して活躍する展開が新鮮で楽しいものでした。
もちろん、その筆頭は魔神・テューポーンで、そのかわいらしさにすっかり魅せられてしまいます(本来は荒ぶる男神のはずなのですが、神に性別はないと本人も言っております)。アニメなどでよくある萌えキャラタイプであると言えばそうで、当然に作者もそこを狙ってキャラを立てていると思われますが、しかしそれだけでは終わらない、神としての奥深さが描かれているところが魅力です。
それは、神の時間と人の時間の違いなのかもしれません。神と人が融合するというこの話の肝は、そこにあるかと思います。古代と現代の時の壁を超える経験をした神や人たちが、そのうち出るだろう2巻ではもっとダイナミックに動き回るかと思うと、続きが楽しみです。
それにしても、ギリシア神話は小学生の頃に児童書で読んだ記憶があるくらいですが、とんでもない神様たちの話です。こんな話が何千年も前に生まれていたというのが驚きです。中国4千年の歴史もすごいですが、そこにキリストやブッダや孔子が生まれた文化的ベースがあるわけです。
それに比べて日本の神話なんてちっぽけなものだよなぁと思ったり。別に小さいことは悪くないのですが。日本が神国だなんて勘違いするたびに大きな過ちを冒してきたわけで、日本文化の素晴らしい神髄はもっと別のところにあるのだと理解していなければなりません。と、いつも仁木氏の作品には気付かされるのです。
テューポーン以外にも、幼なじみの女の子や双子の女の子、介抱してくれたギリシアの少女もまた登場してほしいしと、なかなかステキな女性も多く、どんな展開を描いてくれるか。もちろん、男どもの熱いバトルアクションや冒険も見所ですが。主人公の性格がちょっと・・というところも、変に感情移入し過ぎないので良いのかも知れません。続巻を待望することにしましょう。
「ビブリア古書堂の事件手帖2 〜栞子さんと謎めく日常〜」三上延(メディアワークス文庫)を読了。
1巻目を古本屋で買って読んで間もないですが、今回は新刊で買っての読書です。引き続き私の地元である大船を中心に、鎌倉や藤沢方面にも広がりを見せる舞台。私の家の前も、主人公二人が車で通っていきました……。
と、生まれ育った町の隣接エリアで、今は住んでいる辺りが舞台ですので、近々、聖地巡礼ブログでも書こうかと考えているのですが、その前にこの街について、ちょっとだけ紹介しておきましょう。
大船駅からして鎌倉市と横浜市の両方にまたがる場所にあるのですが、神奈川県内で横浜駅に次ぐ鉄道路線が乗り入れるビッグターミナルなのです。大船エリアとして広げれば、少し行くと藤沢市と接するあたりで、鎌倉市民でも大船は鎌倉市ではないと(差別的に)言う者がいたり、余所の人からは大船市であると誤解されていたりもしますが、3市のどことも違う、独特の雰囲気や街の文化があります。
そのあたりは本作でもかなり描かれていますが、かつて松竹の撮影所があり、屈指の私立学校があり、古城跡や古刹があり、植物園がありコンサートホールがあり、商店街が賑わい多くの飲食店がある、というような、なんともとりとめのないところが逆に奥深さを作っている、そんな街で‥‥やはり、あらためて紹介することにしましょう。
ちなみに、本巻に登場していた駅前の本屋さんは、昨年閉店してしまいました。街は常に変わり続けるというのも、またノスタルジアを感じさせてくれるものです。
さて、話を本に戻して、2巻目は1巻目よりもラノベ感が強くなった気がします。ヒロイン栞子の萌え要素や、主人公大輔の恋情妄想など、気恥ずかしいくらいですが、しかしながら、古本の蘊蓄をうまくストーリーに取り込みつつ、1冊の中でうまく全体の物語を構成していく手腕は、本格的な小説の面白さを味わわせてくれて見事です。
登場する古書も、随筆、SF小説、ビジネス書、マンガとバラエティ豊か。一つの方向に片寄らないところが、読者を選ぶことなく誰もが楽しめる作品になっているかと思います。それがまた、栞子の不思議なキャラクター付けにもつながるわけですが。
2巻目にして、栞子さんと大輔くんの過去にも少しずつ踏み入り、明らかになってきました。今後、栞子さんのミステリアスなお母さんが物語の核になってきそうで、ますます期待してしまいます。
栞子さんは、退院して家(店)に帰ってきて、いろいろとダメっぷりを見せています。無意識に大輔くんを頼ってくる、そこがかわいいけれど、人としてはもう少しなんとかできないといけません。どんな成長を見せてくれるか、今後の進展も楽しみです。
それに対して大輔くんは、なかなか男を見せてくれます。ちょっと軟弱に書かれすぎていましたが、本来がガタイの良い柔道マンなのですから、もっと活躍してしかるべきかと。
その他、元カノ晶穂さんをはじめとする個性的な人たち、そして1巻で登場した主要人物もところどころに絡んでくるので、作品への愛着が強くなってきます。
ようやく物語も軌道に乗り始めたところ、人物のキャラクター性も徐々に深まってきて、まだまだ続くようですので、先々がとても楽しみな作品となってきました。
1巻目を古本屋で買って読んで間もないですが、今回は新刊で買っての読書です。引き続き私の地元である大船を中心に、鎌倉や藤沢方面にも広がりを見せる舞台。私の家の前も、主人公二人が車で通っていきました……。
と、生まれ育った町の隣接エリアで、今は住んでいる辺りが舞台ですので、近々、聖地巡礼ブログでも書こうかと考えているのですが、その前にこの街について、ちょっとだけ紹介しておきましょう。
大船駅からして鎌倉市と横浜市の両方にまたがる場所にあるのですが、神奈川県内で横浜駅に次ぐ鉄道路線が乗り入れるビッグターミナルなのです。大船エリアとして広げれば、少し行くと藤沢市と接するあたりで、鎌倉市民でも大船は鎌倉市ではないと(差別的に)言う者がいたり、余所の人からは大船市であると誤解されていたりもしますが、3市のどことも違う、独特の雰囲気や街の文化があります。
そのあたりは本作でもかなり描かれていますが、かつて松竹の撮影所があり、屈指の私立学校があり、古城跡や古刹があり、植物園がありコンサートホールがあり、商店街が賑わい多くの飲食店がある、というような、なんともとりとめのないところが逆に奥深さを作っている、そんな街で‥‥やはり、あらためて紹介することにしましょう。
ちなみに、本巻に登場していた駅前の本屋さんは、昨年閉店してしまいました。街は常に変わり続けるというのも、またノスタルジアを感じさせてくれるものです。
さて、話を本に戻して、2巻目は1巻目よりもラノベ感が強くなった気がします。ヒロイン栞子の萌え要素や、主人公大輔の恋情妄想など、気恥ずかしいくらいですが、しかしながら、古本の蘊蓄をうまくストーリーに取り込みつつ、1冊の中でうまく全体の物語を構成していく手腕は、本格的な小説の面白さを味わわせてくれて見事です。
登場する古書も、随筆、SF小説、ビジネス書、マンガとバラエティ豊か。一つの方向に片寄らないところが、読者を選ぶことなく誰もが楽しめる作品になっているかと思います。それがまた、栞子の不思議なキャラクター付けにもつながるわけですが。
2巻目にして、栞子さんと大輔くんの過去にも少しずつ踏み入り、明らかになってきました。今後、栞子さんのミステリアスなお母さんが物語の核になってきそうで、ますます期待してしまいます。
栞子さんは、退院して家(店)に帰ってきて、いろいろとダメっぷりを見せています。無意識に大輔くんを頼ってくる、そこがかわいいけれど、人としてはもう少しなんとかできないといけません。どんな成長を見せてくれるか、今後の進展も楽しみです。
それに対して大輔くんは、なかなか男を見せてくれます。ちょっと軟弱に書かれすぎていましたが、本来がガタイの良い柔道マンなのですから、もっと活躍してしかるべきかと。
その他、元カノ晶穂さんをはじめとする個性的な人たち、そして1巻で登場した主要人物もところどころに絡んでくるので、作品への愛着が強くなってきます。
ようやく物語も軌道に乗り始めたところ、人物のキャラクター性も徐々に深まってきて、まだまだ続くようですので、先々がとても楽しみな作品となってきました。
「くるすの残光 天草忍法伝」
「くるすの残光 月の聖槍」
仁木英之著(祥伝社刊)
「月の聖槍」が出て買おうとしたところ、前の巻があったことにはじめて気付いて、あわてて注文しました。仁木作品は8割方読んでいるのではないかと思うのですが、作者の精力的な執筆ペースに着いて行けてない感じです。
そんな多作の作者、これまでの作品で描いてきた要素がうまく結実している気がします。千里伝のヒーローキャラや、僕僕のロードストーリーや、黄泉坂の妖や、海遊記の坊さんや・・・一作ごとに、歴史・民俗・人間などへの思考が積層し、思想を形成していく、そんな過程が見えるようで、まだまだ先が楽しみな小説家さんです。
2の帯に「風太郎忍風帖への最高のオマージュ〜」というコピーがありましたが、山田風太郎を読んだことのない私にとって、本作は白土三平を想起させながらの読書となりました。作者の「飯縄颪(いずなおろし)」という忍者作品がありましたが、あれはタイトルからも明らかに「カムイ伝」を意識していたと思われるので、白土比較も間違ってはいないかと思います。
権力に抑圧された人間を描き、また力に魅入られた人間を描く、その中で生と死を見つめる・・・そうした作風は「カムイ伝」の1部よりは2部、そして武芸に重きを置いた外伝に近い世界だと感じました。
とは言いながら、仁木作品はしっかりと歴史物の体裁を保ちながらも、いまのアニメ的な演出や萌え要素も含んでいるのが、この時代に受け入れられている理由と思っています。本作でもビジュアルが思い浮かぶ魅力的なキャラクター作りが巧いなと、感服しました。
天草の乱についてはあまり詳しくありませんでしたが、なぜ時の権力者が切支丹を根絶しようとしたか、そうした理由が納得できるように書かれています。その中で、天草四郎の意志と力を受け継いだ主役である者たちが苦悩しながら闘う姿は、盲信的な信仰を越えて、生きることの意味に迫ります。
それは決して過ぎ去った時代のことだけではなく、現代においても平和で自由な時代に見えて、同じような権力者による思想統制や踏み絵のようなことがことが行われているわけです。表向き泰平の世であっても、庶民は生きることに必死である、そうした私達に近い存在だと思いました。
と、感想を書こうとすればいろいろな思考が廻ってしまうのですが、読んでいる時は忍者モノの活劇として楽しめます。そしてまだまだこの先も数巻は続いて行くと思われるので、その物語の中で派手な闘いも、純な恋情も、辛い葛藤や強い決意もあるでしょう、クライマックスには天草四郎が復活するのか・・・など、大いに期待を膨らませながら、次を待ちたいと思います。
「くるすの残光 月の聖槍」
仁木英之著(祥伝社刊)
「月の聖槍」が出て買おうとしたところ、前の巻があったことにはじめて気付いて、あわてて注文しました。仁木作品は8割方読んでいるのではないかと思うのですが、作者の精力的な執筆ペースに着いて行けてない感じです。
そんな多作の作者、これまでの作品で描いてきた要素がうまく結実している気がします。千里伝のヒーローキャラや、僕僕のロードストーリーや、黄泉坂の妖や、海遊記の坊さんや・・・一作ごとに、歴史・民俗・人間などへの思考が積層し、思想を形成していく、そんな過程が見えるようで、まだまだ先が楽しみな小説家さんです。
2の帯に「風太郎忍風帖への最高のオマージュ〜」というコピーがありましたが、山田風太郎を読んだことのない私にとって、本作は白土三平を想起させながらの読書となりました。作者の「飯縄颪(いずなおろし)」という忍者作品がありましたが、あれはタイトルからも明らかに「カムイ伝」を意識していたと思われるので、白土比較も間違ってはいないかと思います。
権力に抑圧された人間を描き、また力に魅入られた人間を描く、その中で生と死を見つめる・・・そうした作風は「カムイ伝」の1部よりは2部、そして武芸に重きを置いた外伝に近い世界だと感じました。
とは言いながら、仁木作品はしっかりと歴史物の体裁を保ちながらも、いまのアニメ的な演出や萌え要素も含んでいるのが、この時代に受け入れられている理由と思っています。本作でもビジュアルが思い浮かぶ魅力的なキャラクター作りが巧いなと、感服しました。
天草の乱についてはあまり詳しくありませんでしたが、なぜ時の権力者が切支丹を根絶しようとしたか、そうした理由が納得できるように書かれています。その中で、天草四郎の意志と力を受け継いだ主役である者たちが苦悩しながら闘う姿は、盲信的な信仰を越えて、生きることの意味に迫ります。
それは決して過ぎ去った時代のことだけではなく、現代においても平和で自由な時代に見えて、同じような権力者による思想統制や踏み絵のようなことがことが行われているわけです。表向き泰平の世であっても、庶民は生きることに必死である、そうした私達に近い存在だと思いました。
と、感想を書こうとすればいろいろな思考が廻ってしまうのですが、読んでいる時は忍者モノの活劇として楽しめます。そしてまだまだこの先も数巻は続いて行くと思われるので、その物語の中で派手な闘いも、純な恋情も、辛い葛藤や強い決意もあるでしょう、クライマックスには天草四郎が復活するのか・・・など、大いに期待を膨らませながら、次を待ちたいと思います。
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プロフィール
HN:
つばめろま〜な
性別:
男性
趣味:
絵・音・文・歩
自己紹介:
長年、同人誌で創作漫画を発表してきましたが、本当は小説が主な表現手段。職業はコピーライターで、趣味は楽器を鳴らすことなど。
下記に作品等アップ中です。よろしくお願いします!
■マンガ作品 COMEE
http://www.comee.jp/userinfo.php?userid=1142
■イラスト作品 pixiv
https://www.pixiv.net/users/31011494
■音楽作品 YouTube
https://www.youtube.com/channel/UChawsZUdPAQh-g4WeYvkhcA
■近況感想雑記 Facebook
https://www.facebook.com/profile.php?id=100005202256040
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■音楽作品 YouTube
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