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「我ニ救国ノ策アリ 佐久間象山向天記」仁木 英之(幻冬舎)の感想です。fd0d118d.jpeg

あまり幕末の時代劇など見ないもので、佐久間象山の名は聞いたことがあると思っても、どのような人物かは知らないで読んだ本作。とはいえ、仁木作品への信頼感はすでに大きいので、購入に不安はなく、ただ、純粋なる歴史小説なのかファンタジーなのか、それは読んでのお楽しみということで…これは骨太な歴史物でした。
仁木氏の中国歴史物は、日本とはスケールも文化も違う国ゆえに、史実としてもどこかファンタジーを感じるのですが、本作は日本が舞台ということで、今の世につながっているリアルさが出てきます。タイトル的にも、現代へのメッセージ性を受け止められますが、その思想は右でも左でもなく、日本の文化への想いとして、とても好感の持てるものでした。

佐久間象山、その傲岸不遜な人物像はものすごくエネルギッシュであり、同時に能力を持ちすぎる人間の危うさに満ちていて、なんとも感情移入するには違和感のある主人公でした。すぐれた学者であっても政治家には向かない、ただあの時代が本当に必要とした傑材だった、それが実によく伝わってくる文章の冴えだったと思います。
若き吉田松陰や勝海舟、本作中には出てきませんが坂本龍馬などの師として、納得できるだけの巨大な才が、ついには空を目指すというところに作者の思い入れの大きさが感じられました。
ドラマチックなシーンなどはあまりなく、淡々と進んでいくように見えますが、劇的に変化していく幕末の空気の真ん中でぶれることなく立ち尽くす象山の姿が際だち、読んで胸が躍る快作となっているのでした。

さて、このような人物が現代の政界に存在するならば…とつい考えてしまいますが、幕末でさえついに政の中心には立てなかった象山、今であればなおさらでしょう。保守的な嗜好に縛られていたり、よく考えもしないで自分の感情や表面的なポピュラリティでの発言をする政治家が人気を得るような風潮ですから…。
しかし、こうした深い思慮の上で自らの論を主張できる人間が必要とされるのも事実。その意を汲めるような世の仕組みでなければならないと思わされました。まぁ、こんな人物は現代に見あたらないのも事実なのですが。

 

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「ビアンカ・オーバースタディ」筒井康隆(星海社FICTIONS)
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筒井の小説を読むのは、たぶんはじめてです。「時をかける少女」はNHKの少年ドラマで、「ジャズ大名」はテレビ放映された映画で、「家族八景」は清原なつのの漫画で楽しんだ程度。「続・時をかける少女」は子供の頃に読みましたが、筒井氏の作ではなかったですから。

ですが、77歳の作者がライトのベルを書いたという興味、ついでに、いとうのいぢの萌え萌えなイラスト付きという仕様につられて買ってしまいました。
なので、これまでの筒井作品とどこがどう違うかはわからないのです。ついでにラノベもアニメ化されたものの世界観は知っていても小説自体ほとんど読んでないのですが、なるほど、筒井康隆らしい、ラノベっぽい作品だということは感じられました。

※以下、少しネタバレ含みますが…

宇宙人や未来人いらっしゃいの涼宮はるひのようなヒロインが、放課後の実験室でタイムトラベル。人類は衰退しましたな未来では、昔のドラマで見たケン・ソゴル的雰囲気がすごく感じられます。
そして、美少女3人美少年1人というラノベ的な人物配置に、大御所ならではの文学的実験性も多少織り込みながら、ハッキリしたキャラクター&エピソードで楽しく読ませる作品に仕上がっていました。

ただ、これはラノベなのかというと、実は他のラノベ作家の作品もそうなのかもしれませんが、ラノベを意識した筒井作品。執筆からは時間が経ったようですが、前年の大震災以降に出版されたということで、作品のメッセージ性が作者の狙い以上にオモテに出たように感じられます。
エロ的なところは生命観。未来の人類は文明観。美少女は現代風俗の象徴。それらの素材をあっさりと料理したら、軽食ならぬ軽小説になりました、でもカロリーは高めで少しもたれます、という感じに。

などと言っても、結局のところ一番の見所は、ヒロインのビアンカであることは間違いないでありましょう。筒井氏も、美少女を書きたいと思ってこの作品ができたのではないでしょうか。現代風の、大らかで、活動的で、好奇心が強く、自他ともに認める美しい少女像を、後期高齢者のおじいさんの目で描いたら、こうなりましたと。でも爺になっても、気持ちは思春期の頃と変わらないよと主張してるように思えて、なんか嬉しくなりました。

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「超ジャズ入門」中山康樹(集英社新書) 31SHFSZKFNL._SL500_AA300_.jpg

発行は10年以上前の本なので、今の時代とずれたかもしれませんが、それは置いといて…。
これまでの、一様にジャズの歴史から講釈する入門書に書かれている聴き方を否定する最初の切り口、これは共感するところが大きかったですが、それ以降は私がジャズに入っていった道程と全然違っていました。

日本のジャズは聴く必要がない、ライヴよりも音盤として遺されている名演を聴くべき、ディスクのコレクションは100枚までにすべし、というような内容にはちょっと……閉口してしまいました。日本人の感性にいちばん合うのは、やはり日本人の演奏だと思うし、(人によってはロシアだったりアフリカだったりアジアだったりもするでしょう…)聴くだけでなく生で見るということが、どれだけジャズの面白さに気付くことか、そうした視点が抜けている感じです。 それは、筆者が洋楽から音楽を聴き始めたからなのでしょうか。

同じような人にとっては、この入門書はバイブルになるかもしれませんが、最近は英米のロックばかり聴いてますという人も、あまり多くないのではないかと思われます。ヒップホップとか主流に乗ってきて、音楽を聴きたいという人を遠ざけているような…。 筆者が言いたいのは、マイルスとブルーノートさえ聴いてれば良いという結論のようですが、まぁ、私もそちらはあまり聴いてないので紹介されたディスクを聴いてみたいとは思いました。

しかし、入門書としてはジャズの間口を狭めている感じで残念です。 そして、矛盾を感じます。なぜ日本人のジャズはだめなのか?ジャズはアメリカのものだから、日本人プレイヤーにその本質はつかめないから、と言われるのでしょう。だとしたら、マイルスをわかったつもりで聴いていても、日本人は皆(筆者も含め)その本質を理解すること不可能、ということになってしまいます。 現代のジャズはだめだ、昔の名盤だけ聴いていれば良い?それも、アメリカの今のジャズを聴くと私も独創性の少なさに退屈を感じますが、しかしアメリカ以外の世界のジャズに触れれば、独創性と刺激に満ちていうことに気付くと思います。

それも、ジャズを狭いエリアでとらえているからでしょう。マイルスをリスペクトしているミュージシャンが、そのスタイルを至上のものとして踏襲している限り、本家を超えることができないというのはわかります。(絶対に超えられないとは言い切れませんが)ブルーノートには変遷してきたジャズの歴史が刻まれている、ある時代まではそうかもしれません、しかしジャズはもっと自由に広がっているのです。

ちなみに私の場合は、クラシック、現代音楽、ロック、民族音楽、日本のニューミュージックなどを幅広く聴いて育って、ジャズの入り口となったのもアメリカものではなく、ガトーやダラーといった第三世界のミュージシャンでした。最初がマイルだったら、あまり興味を惹かれなかったような気もします。 その後はアメリカものも少しは聴きましたが、日本人のフリージャズ系を音盤だけでなくライブでも聴くことが多かったので、その奔放な音楽性にすっかり魅せられたわけです。

マイルスを生で見聴きすることは不可能ですから、たぶん、どんなに素晴らしい音源でも、さらにビデオ映像があったとしても、今の時代の音楽として感動することはできないと思うのです。 筆者はジャズ誌の編集長をされていた方ですので、矛盾もなにも当然わかって書いているのでしょう。最初のCDの選び方など、真の初心者にとっては良いのではないかと思いました。

事前知識からではなく直感で選んだものは、失敗もあるけれど愛着が強くなります。 そんなわけで、この本は今までになかった、ジャズの敷居を下げる入門書として価値があるでしょうが、ある程度ジャズを理解できる素養ができた人、最初から音楽的な素養が高い人は、すぐにこの本の教えを忘れて、個々のジャズの楽しみ方を見つけるのが良いかと思います。

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31BLVm7MRDL._SX230_.jpg「バレエ・メカニック」津原泰水(早川書房)作者の小説では「ブラバン」に続いて2作目、タイトル気に入っての読書となりました。
感想を書くのがとても難しい一作です。忙しくて体も頭も疲れている時期に睡魔と戦いながら読んだこともあり、なかなか世界に入り込めず…決して難解という内容ではなかったと思うのですけれど、理解も浅くなってしまいました。
3部構成の1部は幻想感が強く、ところどころ強いイメージが残っています。2部はいちばんスムーズに読めて楽しめましたが、逆に印象が薄く。ラストの3部はデジタル世界と現実の境目をうまく認識できず、曖昧な印象に。どうも、電子ネットワークが絡む話というのは苦手なようです。
理沙パニックというのは、つまり、ユングの集合的無意識が現実に発露してしまったような、旧エヴァ映画のラストのような、そんなことかと思ったのですが、そうした世界の描出としてはとても面白い小説でした(半寝ぼけの印象ですが、たぶん)。
 

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51iXwfNvG4L._SX230_.jpg「泣き虫弱虫諸葛孔明 第参部」酒見賢一(文藝春秋)を読了、抱腹絶倒な三国志も、第3巻となりました。
私にとっては、NHKの人形劇もほとんど見ていなかったし、横山光輝の漫画も読んでないので、本作が三国志デビューなのです。いきなりこれってどうなの、という声も聞こえそうですが、しかし酒見賢一は古今の三国志文献をしっかりと踏まえた上で書いているので、こちらもその上での楽しみ方をしているつもりです。
過日、渋谷ヒカリエ内にできた岡本喜八郎美術館に立ち寄りましたが、NHKの三国志に使われた人形がずらりと…あぁ、これが変態コウメイ、これが猿人リュウビ、これが殺人鬼チョウヒ、これが侵略者ソウソウ…と、笑いをこらえながらの鑑賞となりました。この3巻を読み終わった今、再度足を運んで美し哀しいシュウユさんを確かめてきたいと思っております。

それにしても孔明に人生までも振り回されてしまう呉の将軍周瑜の姿は、痛々しく鮮烈でありました。少しずつ狂わされていく、これが風に聞く孔明の罠というものなのですね。同じようにうまく使われても微笑ましい魯粛と違い、美しく気高い人物だけにせつなさが大きく。
対する孔明、変質さだけでなく悪質さが際だってきました。しかし挫折もせず自信満々に思い通りことを進めてしまうのは、まさに宇宙とつながっている超越者だからなのか。挫折のない人間は主人公としての資質に欠けると思いますが、むしろ彼の罠にはまる人たちが順に主人公となっていく構図ですので、胸をときめかせて読むことができるようです。
そうした群像を描く歴史小説というのも酒見賢一の「陋巷に在り」ではじめて読んだようなもので、ほかの作家とは比べられませんが、ふざけた文章にしていてもしっかりと人の姿を描く力量はすばらしいと思います。ただ、本作と陋巷を比べれば、やはり陋巷の方が格段に面白いとは思ってしまうのですが。
三国志的な楽しみということでは、趙雲だけでなく張飛や関羽が怪獣のごとく暴れ回る姿が欲しいところ。次の巻では、劉備の奥方になった美少女戦士の活躍なども描かれることを願います。

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