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「きみを守るためにぼくは夢をみる(4)」白倉由美(星海社文庫)を読んでの感想。kimimamo4_.jpg

シリーズ4巻めにして、はじめて新ヒロインが登場せず、前巻で登場した幼い少女がその座を奪い取っていきました。と、そんなふうに語れる話なら気楽なのですが…。
これまでも白倉由美の作品は文章が美しいと思っていましたが、この巻ではさらに強く感じました。空音も砂緒も存在感自体がファンタジックな状態だったからでしょうか。この二人の、特に空音の言葉がせりふと言うより詩でしかないので、甘くも優しくもない、悲しく痛い美しさを湛えたのでしょう。その文章あってこそ成立するストーリーだと思わされます。その詩は、死に近いものでした。

それにしても、主人公の朔は。性格が悪いわけではないのに、頭も悪いわけではないのに、他人を思いやることができていない。言葉に縛られすぎて、相手も自分も見失う。これまでもそうだったけれど、この巻でついに大きな不幸を呼んでしまいました。砂緒も空音も雨花も切実な想いを抱いて彼を求めていたのに…。君を守るといいながら、まったくできない未熟な高校生男子の朔、どうもその心が伝わってこないのがこの作品の歯がゆいところです。そしてまた、大きな過ちを冒してしまったようです。

この巻から表紙・挿画がポーランド人のアニメクリエーターに変わりました。風景はこれまでの新海誠の絵と違和感なく描かれていましたが、空音や砂緒の姿は私のイメージと違いすぎていたような。空音の可憐さの中に致死毒をもっているような印象が強くて、頭の中で育ってしまったのでしょうか。いろいろと外国人と日本人の違いがあるような気もします。少女幻想の日本独特の発達など…。

物語はまだ続きます、この先どんな展開になるかまったく予想できないので、ただ楽しみに(不安も含みながら)待ちたいと思います。きっと、朔の贖罪がはじまる…世界がどんなに残酷でも、そこに至高の美しさがあれば。

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「童子の輪舞曲 - 僕僕先生」仁木英之(新潮社)を読む。dojirond_.jpg

僕僕先生シリーズ第7弾は、番外編の短編集です。これまでの6冊を振り返りながらの構成で、そろそろ記憶の薄れてきたエピソードや物語全体の流れをあらためてとらえ直す、良い機会になりました。僕僕先生シリーズは、というか仁木英之作品は、キャラクターが立っていますので誰が主人公になっても面白いし、それぞれに話の広がり方が変わるのも面白い。
双六の話、雷っ子の話、海の話、第狸奴の話、双子の童子の話と、短いだけにどれも奥行きはないけれど楽しく読める物語。奥深さに関しては、本編がどんどん突き進んでいますので、息抜きとして良い感じでした。一番面白かったのは、絶海の孤島にとらわれてしまう、劉欣が主人公の話でしょうか。仁木作品ならではという魅力が感じられます。
さて、ラストにもう1作入っています。時を超えて現代らしき日本を舞台にした話ですが、正直なところ、この作品については評価が難しいところです。今の時点でこうした話を読んでしまうのはもったいない気がしました。ストーリーづくりが上手な作者ですので、この先の展開のために書いておきたかったのかなと考えますが、これをどう活かしてくるのか、興味深いところでもありました。

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「くるすの残光 - いえす再臨」仁木英之(祥伝社)を読む。kurus4_.jpg

切支丹シリーズ3作目、奥州が舞台となります。
歴史とファンタジーのバランスが良い感じになってきたように思います。とても面白く読めました。
もとよりキャラクターづくりの上手い作者ですが、だいぶ一人一人のキャラが深まってきたように思えました。女性の描写も魅力的ですし、敵陣の人たちにも愛着がわいてきました。まさか天海があの人だったなんて、というサプライズもありましたが、地に足の着いた人物像が好ましく。
しかしこの巻でいちばん活躍していて魅力的だったのは、人形のお雪でありました。雪ちゃんが動いているところ、ぜひ見てみたいものです。草迷宮(内田善美)のネコを思い出しつつ…。

テーマとして、信仰とは何か、という重い問いかけが徐々に現れてきたように思います。これまでは、でうすのために、天草四郎のために、なんの迷いもなく突き進んできた主人公達が、同胞であるはずの切支丹と対立しなければならなくなる、その葛藤や困惑によって、俄然物語が面白くなってきました。
また、前の巻は九州、この巻では東北と、その道中も含めて舞台の広がりが仁木作品らしい躍動感をつくり出しているようです。江戸初期、まだ戦国の世の名残がある時代というのも良いのでしょう。アクションシーンも含めて、ダイナミックな娯楽性を備えた作品になっています。

しかし、今回も登場した聖遺物は聖骸布ひとつ、先は長いようです。さらにさらにテーマが深まり、物語も面白くなっていくことを期待して待つといたしましょう。

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「本の魔法」司修(白水社)を読む
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司修の作品に出会ったのは、まだ子どもの頃でした。妹が購読していた「詩とメルヘン」に載っていた絵本作品「魔女の森」を妹が気に入り、個展があると知ったときには母に連れて行ってもらったことがあります。
絵本も子供用ではありませんでしたが、個展の絵はかなりエロチックな作品でした。でも、幻想的で思索的な絵画はいやらしく感じることもなく、純粋な芸術として心の奥に焼き付いています。
それから10数年経って、司氏の小説が刊行されたことを知ります。以来、多くの作品を読んできました。画家の書く文章という特異さはたしかに感じられますが、けれど数々の著名な文学賞も受賞しているように、文筆家としても本物の人なのです。

さて、本作は画家であり作家でもある司修が、装幀家として様々な作家と交遊してきた回顧文集というべきもの。淡々と思い出を綴っているのに、亡き友や師への想いの強さから、実に胸を打つ作品となっています。
そのほとんどの作家を、名前は知っていても読んでこなかった自分の読書歴の浅さを思い知らされながらも、古き小説家たちの世間から外れた個性が面白く、表現を模索する姿が興味深く、人の一生の中で激変する時代の性急さには恐ろしささえ感じさせられました。
そして全編を通して読めば、司修という人物の私小説として、画壇よりも文壇でかわいがられた彼の不思議な魅力が浮き出ているのです。それは、芸術家の魂、生き方。

表紙に、氏が装幀した本の表紙が並んでいるという親切で刺激的な装幀の本ですが、いかに作品と真摯に向き合った末に、本の顔ができるかという
クリエイターとしても興味深い内容でした。表紙は書店で本を選ぶときの大きな基準ですから、装幀がいかに大切かはわかります。
でも、デザイナーが自分の技量の範疇でうまくやってるのだろう、などと思ってしまうのですが…それが間違いだともわかってはいるのです、作品を知らないとデザインはできません。けれど、いまどき、これほどに作家と深くつき合いながら仕事することはないだろうな、と。
それは、時代なのでしょう。作家、編集者、装幀家、それぞれの地位が高かった時代のものづくりであったと。今は、みんな地位が低くなってしまい、互いの敬意が失われてきたように思われます。表紙に並んだ表紙を一覧して思うのは、作品の世界を深く表現しているのだろうこと、でも、いまの出版市場では手にとってもらいにくいだろうこと…それも、時代ですね。

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51S2kZBz6jL._SL500_AA300_.jpg「ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~」
 三上延(メディアワークス文庫)

巻が進むごとに、だんだん1つのエピソードが長くなってきたと感じていましたが、4巻めは1冊で1エピソード。構成の面白さも本への想いの深さも増して、読み応えがあります。

そういえば、子どもの頃から乱歩の作品を読んだ覚えがありません。「押し絵と旅する男」のはなしを読んで思ったのは、アニメで観た「魍魎の匣」の電車の中のシーンくらいで、これは乱歩好きな京極作品が原作でした。
乱歩的な世界と現実がクロスして、今までなかったほどミステリー色も強くなっていて、別にそれはどうでもいい私にしても謎解きやトリックに惹かれました。そこにはロマンがあります。おお、ロマンよ〜と言うのは猟奇王(川崎ゆきおのマンガ)の口癖で、彼もまたルーツは乱歩なのですが…まぁ、好きな世界なのではあります。栞子の母こそが、二十面相的な怪人の雰囲気をまとっていて、この巻での大きな展開とよくマッチしていました。

もちろん、舞台もかわらず私の地元、雪の下に大鋸に、と知った街ですので、また歩きに行きたくなるのでした。雪の下はまだ古いお屋敷もたくさんありそうですが、大鋸の古い洋館といえば、数年前に焼失してしまった旧モーガン邸がモデルでしょうか。
本作の刊行がはじまってからのたった数年でも、栞子さんがよく立ち寄っていた大船駅前の本屋がコンビニに変わり、大輔くんがお見舞いを買っていったレーズンウィッチの洋菓子店も閉まり、と街の風景は変化しています。
鎌倉の風致地区にもマンションが建ち、大船駅前にも24階建ての超高層複合マンションの計画があるなど(あまりにもこの街にそぐわない…)、街の歴史や文化、景観を守ろうというような意志は、主に経済主義の前では軽いものでしかないようです。
いま、ビブリアがこれほど多くの人に愛されているのは、そんな時代への郷愁もあるのかなと思っています。電子書籍時代の紙の書籍、大船〜北鎌倉〜鎌倉の歴史の中で生活感にじむ風景、その中での慎ましやかな恋、などが相まって、本作の味わいになっていると思うのでした。

前巻を読んだ時から、次巻では震災が起こるだろうしどんなことになるのかと思っていたら、いきなり震災後になっていました。大地震後に古書が動くというのは、よくわかるような感じです。そして、やはりいきなりな栞子母さん登場というのは、いよいよ物語が本題に入ったと身構えさせられる上手い構成でした。
これまで、また聴きの断片情報でしかなかった母が、予想以上に本にとりつかれた破綻者のようで、そうして比べることによって栞子さんもやはり、ただおとなしく可憐なお嬢様などではなく、異端者なのだと認識させられます。意地になって母と張り合おうとする姿は、今後の展開に不安を感じる一面でした。
そんななかで、大輔との進展もありましたが、なぜかあまり感情移入して祝福したい気にはなれず。この関係は、あまり微笑ましいものではないように思えます。それだけに、この二人のつき合い方を作者がどんなふうに書いていくのか、興味深く見守りたいと思うのでした。

さて、配役とイメージ写真を見た時点でまったく視聴する気を失ったテレビドラマ、ただ地元・大船の風景が映されているのかだけが興味あるところでしたが、聞けばほとんどスタジオセット、鎌倉の風景が少しくらいだそうで。ビブリア聖地巡礼のブログ記事を書きかけてましたが、ドラマで踏まえられてたならいいかと思ってたのですが、やはり書き上げたいと思います。

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