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つばめろま〜なから、なにかを知りたい貴方へ。
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「黄泉坂の娘たち」仁木英之(角川書店)

3年前に出た「黄泉坂案内人」を読んだとき、好きな話だけれど主人公的にきれいに終わっていたので、続編はないと思っていたのですが、シリーズ化もできる展開になって再登場してきました。
先の大震災がきっかけだったのかも、と勝手に思ったりしましたが、前巻の発刊自体は震災から4ヶ月後だったようです。今回の発刊のタイミングも、広島の土砂崩れや御嶽山の噴火といった災害が続いた直後だけに、より意味深く感じられてしまいました。

「娘たち」と付いているように、小さい子どもから大人までの若い女性たち(何百年も生きてる人たちも多いけれど)が主要登場人物になっていて、みんなそれぞれに魅力的です。
仁木作品の特徴ですが、アニメ的なキャラクター属性が付帯しているので、個性化が図られて読んでいて楽しさがあります。死を扱うテーマが重い分、そのくらいの軽さがあるのはありがたい感じです。達観したツンデレ美少女仙人より、戸惑い迷うザンネン美人神様の方がかわいいような。

物語は、生々しい現代のOL編から、時代をさかのぼった戦国武将編へと続いたときには面くらいましたが、あの世とこの世の狭間でたくさんの死に向き合う人も神も妖もが、未練を持つ魂について真剣に考え、ぶつかりあいながら行動する姿は、とても示唆に富んだもので面白く感動的でした。
いずれ続巻も出るのではないかと思いますので、きっと川向こうに渡ったりもするでしょう。彼岸がどのように描かれるのか、どんなキャラクターが現れるのか、想像もできないだけに楽しみです。

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「赤土色のスペイン」堀越千秋(弦書房)

もう何年になりましょうか、いつも横浜ジャズプロムナードで板橋文夫オーケストラのバックで巨大なライヴペインティングをしている姿を見てきた堀越さん、一昨年と今年はその打ち上げでご一緒させていただき、お話はできませんでしたがその魅力的な人柄に触れることができました。
…ということで、本を出されているのだから読めばいいんだと、個展が開かれていた銀座の画廊香月にて1冊購入。絵を買うのは経済的に難しいですが、絵もいっぱい掲載されている本ならば多少高くても大丈夫です。

さて、本の内容は数十年住み続けているスペインについてのエッセイが3分の2、残りは日本に来ている時のエッセイという構成でした。どちらも作者の生き方と周りの人との関係が刺激的です。
とにかく文章が味わい深くて人柄そのもの、生活体験としてのおもしろおかしい出来事が、感情豊かでユーモラスに物語られています。その中で、スペインに対して、また日本に対して、そこで出逢う人たちに対して、愛情を持ちながらも厳しい視線を投げ掛けている、それが知的であるとともに芸術家としての直観に依っているので、重く響いてくるのです。
本文もこの上なく面白かったですが、その内容に沿った絵も、画家としての観察眼とそれを自由に表現する心が素晴らしく、倍以上に楽しませてもらえる本でありました。

それにしても、こんなに多彩な分野で活躍をされている多才な方だったとは存じ上げず、毎年のステージ上でのお姿と抽象的な絵を茫漠と眺めていた自分を口惜しく思ってしまいました。また近々、別の本も手に入れて読みたいと思います。

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「amazonで変なもの売ってる」谷山浩子(イースト・プレス)

敬愛する谷山浩子さん、実に久方ぶりの小説です。「敬」と言う中には、ミュージシャンとしてだけではなく、彼女の作家としての資質も大きいので、1980〜90年代にサンリオ等で出版されて以来の本格的な作品が書かれたことへの喜びもまた、とても大きなものでした。
もしかすると、浩子さんをよく知らない人にとっては、とっつきにくい世界観であり、展開であり、文体であるかもしれません。けれど、常に新しいCDを買って聴き、毎年コンサートに行き、以前は本を読んでいて、1980年代にラジオ番組を聴いてきた私にとっては、あまりにも自然な、浩子さんが横で朗読してくれているような感覚で楽しめる作品なのでした。

タイトルからは想像しがたい、ファンタジーな話です。愛や勇気を持って物語の中の異世界で自己実現を求めるようなFTではない、曖昧な自我や不確実な存在へと落ちていく幻想譚です。前半は笑いをこらえるのだたいへん、後半は頭の中が整理しきれなくてたいへんでした。
はじめは主人公姉妹の年齢がもっと低いように思われましたが意外と高いことがわかると、姉のミカルに翻弄される妹のハルル、二人のあまり仲良くないやりとりがおかしく、家族の関係性としても面白い物語です。そして人の心の底が暴き出される悪夢を見ているような、それでいて笑わされてしまう、不思議な魅力。

それは、浩子さんの歌に感じられるものとも共通点がありますが、やはり小説でなければ書ききれないことも大きいと気付くのです。そうして多彩な表現のできるところが、谷山浩子という特異な存在だと思わされるのでした。
ちょうどデビュー40周年コンサートのライヴCDも出たタイミングで、これが曲数が多いばかりか、MCから休憩中に流されたBGMまですべて収録、さらにお姿映像のDVD付きというとんでもない4枚組なのですが、併せて楽しめば谷山ワールドに浸りきることができますので、おすすめです。

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「ぼくの絵本じゃあにぃ」荒井良二(NHK出版新書)
 
世界的に有名な絵本作家である荒井良二さんですが、彼の絵本塾1期生として受講していた妻がいなければ、きっとその作品にも接することがなかったのではと思います。もっと丁寧な絵を描けばいいのに、と思ってしまう私なので…。
しかし、いくつか絵本を読んで、何度か個展で生の作品を見て、テレビ出演を見て、一緒の飲み会に参加させていただいたこともあって、実はすごい絵を描くすごい人であるとは重々わかっていたのです。

本書は、そんな荒井先生の作品が、どのように生まれ続けているのかを知ることのできる一冊です。型にはまらない考え方を実践していく姿には大いに感銘を受けます。その中で、意外なほどに思慮深いところも見えます。
自ら創作する人にとっては、なおいっそう面白く刺激的な本でありましょう。私も、思いっきり大きな絵を描きたくなりました。

家にはほとんどの絵本が揃っているはずなのですが、私はほんの少ししか読んでいませんでした。これを機に、少しずつ触れてみたいと思います。

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「仙丹の契り 僕僕先生-8」仁木英之(新潮社)

間に外伝(童子の輪舞曲)が入っていたせいでしょうか、ずいぶんと久し振りな気がするシリーズ新作です。旅路はついに吐蕃(チベット)へとたどり着き、その前に薄妃と蒼芽香が抜けたので僕僕が紅一点となって、物語の終わりも近くなってきたのかもと思わせます。
このシリーズも初期はのんびりした冒険コメディの風情でしたが、次第に世界の理へと近づいて、この巻ではかなり骨太な展開が繰り広げられました。それも主人公・王弁君のひそかな成長とともに世界の在り様も変化してきたという感じです。
他の仁木作品も大半を読んできましたが、歴史物でもファンタジーでも現代の若者たちを描いていても、常に今を生きる人へのメッセージが込められている、しっかりとした作家だと思いますが、やはり僕僕先生シリーズはその原点であり、集大成にもなりそうな気がします。

本巻は帯や広告でも煽っていた、王弁と僕僕がついに交わるということよりも、王弁が一国の危機を救えるかという大きな話でした。そうした緊張感が高まった中でついに…となるわけですが、どうにも僕僕にツンデレ美少女仙人の魅力が薄れてしまっていて、いまひと昂まれないのが残念なところです。しょせんは神仙、元から人間とは次元が違うのだから仕方ないところですが。
その分、人間たちのストレートな感情が絡み合うストーリーの面白さに引き込まれ、楽しめたのは良かったのです。のんびりとしていて騙されやすい王弁が、人の良さで周囲に影響を与えていくのは、素直に喜ばしく感じられます。それを利用する人や騙す人がいても、自分の想いに忠実に生きられるのは素晴らしい人間性だと思います。これまでの巻では、王弁がもう少し魅力的ならと思っていましたが、評価が逆転しました。
また新たに強烈なキャラクターの道連れもできて、旅路は長安へと向かいます。やがては別れた仲間たちとも合流し、オールスターキャストでの最終決戦になるでしょうか。楽しみです。

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長年、同人誌で創作漫画を発表してきましたが、本当は小説が主な表現手段。職業はコピーライターで、趣味は楽器を鳴らすことなど。
下記に作品等アップ中です。よろしくお願いします!
■マンガ作品  COMEE
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■イラスト作品 pixiv
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