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つばめろま〜なから、なにかを知りたい貴方へ。
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「つちくれさん」仁木英之(朝日新聞出版)


数えてみれば、仁木作品を28冊読んでいます。歴史ものを中心に、いろいろな作品で楽しませてくれる作者にとって、本作は初のミステリー小説ということですが、考古学を題材にしているところにらしさがありました。定年退職したばかりの元刑事と、学会からはじかれた考古学者、その秘書の変人女性という組み合わせは味がありました。評判が良ければ、続編やシリーズ化もあり得る感じです。

ミステリーという分野にはあまり興味がないもので、事件と解決についての出来がどうこうと言えませんが、最後まで犯人がわからなくて意外でした。謎解きも納得しましたがとってつけた感もあり、本筋は初老の二人の出会いと関係の深まりの物語。そこに、美人で優秀だけど色気を感じさせることもない、強いキャラクターの若い女性が加わって、長野と奈良を舞台に様々な人間関係が発掘されていく、展開の面白さがありました。私も初老に近づいているからか、いろいろと共感できてしまうのがちょっと寂しいところです。

その昔、私も大学生の時に3日だけ、遺跡発掘のバイトをしたことがありました。真冬で一日中外にいるので風邪をひいてしまい、そのままやめてしまったのですが…地道に少しずつ何か出てこないかと地面を掘り浚っていくというのは、苦痛より楽しさを感じられたことを思い出しました。子どもの頃、考古学者になりたい、なんて思ったこともあったなぁ…。

今はまさに、不動産デベロッパーがクライアントの仕事をしているので、遺跡よりも目先の事業優先という考えもよくわかります。でも、利益を追求するために歴史遺産や自然を壊すのは、やはり間違っていると思います。取り返しのつかないことを重ねてきた人間が、いまだに意識を変えられないどころかさらに良心を失いつつある、そんな警鐘も鳴らしているような作品だと想いました。

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「ビブリア古書堂の事件手帖6 栞子さんと巡るさだめ」三上延(メディアワークス文庫)


物語の大きな進展とともに、この巻も大船を中心にした地元感いっぱいで楽しめました。いきなり私にとって古巣の戸塚からはじまりましたが、電車で行ったのに車で帰ってくるというおかしな描写…かなり緻密な作品にしては珍しいけれど、もしかしてミステリーが隠されている?
前の巻で栞子さんと大輔君の仲が進んだのを受けて、微笑ましいと思わせるところがありつつも、実のところこのヒロインはそんなに単純な純情派ではないのかも…それは血筋でもあったということが明かされてきました。古本の話よりも人の業や人間関係の話が強くなってきて、息苦しさも感じますが、とても面白くなってきたところで、あと1〜2巻で終わりとのこと、期待が高まり良い頃合いではないかと思います。

取り上げられた本は、1巻以来再びの太宰治。私は仕事で三鷹に行ったついでに太宰治文学サロンに立ち寄ったことがあり興味は引かれましたが、逆にこの人の生き方を知って本を読んでみようとは思えず…こんなに人気がある魅力を理解できていないのですが、本作で稀覯本というものの価値については納得させられました。
長く同人誌活動をしてきた身なれば、無名であっても、思い入れのある作家の手作り本などには愛着があるものです、それが昔の有名作家のものであれば、どれほどのものであるか…マニアの気持ちもよくわかります。それこそ、人間らしい業というものであるのでしょう。

昔、ブックオフの創業者である坂本孝氏の講演を聴いたことがありますが、この作品に描かれるような古本に関わる人間の想いを排したビジネスモデルを作って成長したわけで、普通の人が求めるものはそれなんだよなぁとも思うのでした。神保町の古書店より、ブックオフの方が楽しさを感じられるのも確かです。たまに好きな漫画家の古い初版本など目にすれば、手に入れたいと思ったりもしますが、値札を見て驚くのでした。
家を建てて引っ越す際に、亡父と私自身の膨大な本を売り払った時点で(それでもかなり残ってますが)、古書趣味は持たないと心の奥で思っていたのかもしれません。

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「泣き虫弱虫諸葛孔明 第四部」酒見賢一(文藝春秋)


『三国志』や『三国志演義』など多くの文献をふまえた上で、孔明を変態グンシーとして描いてきた物語も転換期を迎えました。前巻ではクライマックスの赤壁の闘いをじっくるとやりましたが、本巻では劉備も一国の長となり、関羽、張飛、趙雲たちの義兄弟たちもそれぞれの知行地を治めることで離れてしまったので、話が拡散気味に。新たに個性激しい人物達も登場してきて賑やかではありましたが、そうした中で孔明の活躍する場面も少ないのが物足りないところです。

そして、悲惨な戦争へと突入し、殺戮の両怪物、関羽と張飛にも衰えが見えてきたところで浅慮からの自業自得というところもあり戦死や部下に殺されます。曹操も病死し、ついには劉備も…という、歴史物ですから仕方のないところですが、もの寂しさを感じる巻となりました。逆に、よく知らなかった三国志の世界観がやっと理解できてきた感じもします。広大な国土を統べることが、人物面でも物理的な面でもいかに大変かを思えば、日本とは比較にならないスケールとなりましょう。

本巻でいちばん楽しかったのは、前巻で劉備に嫁いできたアニメヒロインのような若姫、孫夫人が孔明夫婦に手なずけられていくところでした。キャラが立っていて可愛かったのですが、敵の罠にはまって早々に劉備軍から追放されてしまったのが残念でした。
おそらく次の巻で終わりになると思いますが、オールスターズが次々と消えたので、もういやでも孔明が活躍するしかありません。期待して待ちたいと思います。

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「職業外伝」秋山真志(ポプラ社)

読み終えてから2ヶ月くらい経ってしまいましたが、強い印象が残る本です。近いうちに絶滅してしまうだろう、さまざまな世界で、今も現役で活躍されている人たちを取材し私感も交えて紹介した、とてもディープな作品。紙芝居や幇間や席亭、見世物小屋、といった12職種が取り上げられています。へび屋とか、聞いただけではどんな職業なのか想像もつきません。

一般社会といわれるところで生活している私たちから見ると、まさに別世界のようでたいへんおもしろく、そして生業(なりわい)ということについて考えさせられます。まぁ、別世界と言えば、たとえばこの世界の表舞台?である政界や財界だってそう、私のやってる広告づくりだって他の人からすればわけわからないのでしょうが、そんな胡散臭さとはまったく正反対の、一人一人が一つのことを極めようとする生き方が際だって、とても人間臭さを感じられるのが魅力的でした。
それぞれ取り上げた人の生き方だけでなく、文化としての奥深さが伝わってくる、名著であると思います。料亭で幇間を上げて遊ぶなどということは無理ですが、寄席や見世物小屋には行ってみたいと思いました。

著者の秋山さんとはわりと近くに生まれ育っていて、年齢もそんなに違わないのですが、この少しに大きな世代の壁があるのです。2014年の横浜ジャズプロムナード、打ち上げの席でお会いし、店から関内駅までの帰路をご一緒する間に少しだけお話ししました。板橋文夫さんの親友ということで、鎌倉でコンサートを企画しているとの書き込みをネットで読んでその存在は知っていましたが、ジャズプロの客席でそうとは知らずに彼の姿を目にしていて、なんか異彩を放っている人がいるなと印象深かったのでした。
今はFacebookで友だち登録させてもらい、日々書かれる交友録などの文章に接していて、知らなかった世界を開いてもらっている気がします。

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「幽霊さん」司修(ぷねうま舎)


読んでから半年以上経っての感想となってしまいました。
画家であり小説家であり、よく知られているのは絵本や装幀でしょうが、その司修の作品と出会ったのは、もう40年も前のこと。詩とメルヘンに掲載されていた絵物語に衝撃を受けたからでした。まだ子どもでしたが、妹と一緒に母に連れて行ってもらって個展を見た記憶は今も鮮明です。
司氏の小説を読むようになったのは大人になってからですが、貧乏画家の私小説風な物語に、自分とは違う世界を感じて惹かれ、多くの作品を読んできました。

本書は、東日本大震災と原発事故を背景に、死者との対話が描かれる話を表題作とした短編集です。そのほかの作品も、私小説のようで幻想小説的なところがある、重苦しいですが乾いた感じのある雰囲気が不思議な味わいでした。帯に「怖い話」とコピーが記されていましたが、幽霊は出てきても怪談の類ではありませんので。怖いのは地震や原発という現実です。

「幽霊さん」は、震災後の東北を訪れた画家の話ですが、この世とあの世の境界のような場所で、自然と死者に向き合い語り合う描写が、かえって鮮烈でした。芸術家の感性でとらえる体制への批判的な視線も、ストレートに刺さってきます。それは理屈ではなく怒りや悲しみですから。
強く印象に残ったのは、画家宅に押し掛けてきてわけのわからないことをしゃべりまくる女の話。いかにも精神を病んでいる人なのですが、その話自体が眠りの中で見た悪夢をそのまま綴った、作者の精神の不安定さを表すような作品になっていたのが不快で面白く思いました。

司修さんも、数年前に横浜や群馬での回顧展が開かれましたが、まだまだ若々しく精力的に執筆や画業をされていますので、楽しみに次作をお待ちしたいです。できれば肉筆画の1枚も手に入れたいと思うのですが…貧乏人の過ぎた夢でしょうか。

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長年、同人誌で創作漫画を発表してきましたが、本当は小説が主な表現手段。職業はコピーライターで、趣味は楽器を鳴らすことなど。
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