忍者ブログ
つばめろま〜なから、なにかを知りたい貴方へ。
[28]  [27]  [26]  [25]  [24]  [23]  [22]  [21]  [20]  [19]  [18
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「盤上のアルファ」塩田武士(講談社)41IrOIzNprL._SX230_.jpg

子どもの頃、日曜日の昼時になると父がNHK教育テレビで将棋〜囲碁番組を見ていました。秒読みの間延びしたような声と、時折り駒や石を盤に打つパチッという音に、なんとも気だるい感を覚えていたものです。私も父から手ほどきくらいは受けましたが、素人から見れば(子どもでしたし)、そんなのんびりとした世界ですよね。
しかしその陰には、棋士たちのそれこそ命がけの闘いがあるのだと、本作品は気づかせてくれます。「ヒカルの碁」や「3月のライオン」といった、囲碁・将棋の世界を題材にしたマンガでも感じられていたことですが、本作は将棋しか能のない男の本当に生死に関わるほど切羽詰まった姿を描くことで、勝負師としての厳しさが息苦しいまでにヒシヒシと伝わってくるのでした。

塩田武士氏の作品を読むのは「女神のタクト」に続いて2作目で、書かれた順序から逆となりましたが、かえって良かったかもしれません。女性主人公で(ひどい性格でしたが)音楽ものの「女神」と、むさ苦しく(しかもひどい性格の)中年男たちが主人公の将棋ものでは、前者の方がとっつきやすいのは明らかです。
しかし両作ともに、まともな性格の人物は出てこないという、それだけでも個性的な話になるところに、音楽や将棋という興味深い題材を掘り下げながら、多方向に物語の伏線を張り読ませていくので、とても刺激的な体験をもたらしてくれます。
作者は元新聞記者ということで、観念的な描写よりも客観的に対称を描いていくことが得意なようです。それが、登場人物への感情移入ではなくて、体験として感じられる要因なのでしょう。

厳しいネタ争いを繰り広げる新聞記者の世界からはじまって、常に勝負に生き続けなければならない棋士の世界、今でも極貧にあえぐ生活をしている人達の世界、男女の情の世界、ついでにオオカミの世界などをうまく絡み合わせた小説ですが、どちらを向いてもしっかりとした面白さがありました。
一番の見所は、プロ棋士になるしか生きる道のない真田という男の生きざまなのですが、人間的な魅力など微塵も感じられないように描かれた男を、最後は応援しほっと安堵させられてしまう、心に滲みる小説だったと思います。


なにか役立った方はclick願

拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
11 2024/12 01
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
フリーエリア
最新CM
[06/01 WaxJelia]
[01/25 本が好き!運営担当]
[03/27 うらたじゅん]
[10/28 のりこ]
[08/04 つばめろま〜な]
最新TB
プロフィール
HN:
つばめろま〜な
性別:
男性
趣味:
絵・音・文・歩
自己紹介:
長年、同人誌で創作漫画を発表してきましたが、本当は小説が主な表現手段。職業はコピーライターで、趣味は楽器を鳴らすことなど。
下記に作品等アップ中です。よろしくお願いします!
■マンガ作品  COMEE
http://www.comee.jp/userinfo.php?userid=1142
■イラスト作品 pixiv
https://www.pixiv.net/users/31011494
■音楽作品   YouTube
https://www.youtube.com/channel/UChawsZUdPAQh-g4WeYvkhcA
■近況感想雑記 Facebook
https://www.facebook.com/profile.php?id=100005202256040
バーコード
ブログ内検索
P R
忍者アナライズ
忍者アナライズ
忍者アナライズ
忍者アナライズ
忍者ブログ [PR]