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「たまさか人形堂それから」津原泰水(文藝春秋)tamasaka2_.jpg

前巻から間を空けずに読んだので、それまでの展開を忘れることもなく、楽しむことができました。前巻がややミステリー調だったのに比べ、本巻はもう少し日常系になった感じです。電車の中で読んでいて、笑いをこらえきれなかったところも3カ所ほどあったくらい、作品としてこなれてきた感じです。

登場する人形はリカちゃん、創作アート、蛸のぬいぐるみ、チャシャ猫のぬいぐるみ、ボルト、マリオネット、市松、マネキン、木目込みなど。髪の伸びる市松人形はミステリアスでしたが、ほかは前巻より人形の幻想性に寄った話ではなく、人間が主体の展開が多くなっていました。
とはいっても、伝統工芸品としての人形、大量生産品としての人形、表現芸術としての人形、実用品としての人形と、取り上げるのは実に多彩です。しかしどれも人形である、その奥深さと関わる人間の心が絡み合って作られる物語の妙味が見事でした。

主人公の女性が、性格も見た目も変わったわけではないのにモテていましたが、現実的な視点で見ればけっこう魅力的な人物かもしれません。前巻からの登場人物たちの内面が深まったこともありますが、表面的なキャラクター付けでなく、抱えている業というようなところで個性が強い人が多く、人間同士、人間と人形という関係の中でドラマがふくらんでいくのです。
最終章の展開にはちょっと驚きましたが、これは幻想小説作家の本領発揮というところ。しかしこのラストは、完結を意味するのでしょうか。人間たちの関係性は収まっていないし、まだまだ続編が読みたいと思うのですが、さて…。

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