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夏休み期間中、バラエティ豊かな公演が比較的安価で聴ける「サマーミューザ」、この日はオーケストラ・アンサンブル・金沢による「パイプオルガンとオーケストラの饗宴」(2017.7.23 ミューザ川崎)、指揮は本オーケストラの音楽監督も務めているマエストロ、井上道義です。指揮者のおしゃべりが入ったり、自ら拍手して盛り上げるなど、井上さんならではの演出が楽しめました。

前半1曲目は、フランス人オルガニストティエリー・エスキシュさんの即興ソロ。井上さんから与えられたテーマはゴジラ、あのおなじみの旋律が随所に顔を出しながら、繊細に美しく大胆に迫力ある、パイプオルガンの魅力を存分に引き出す演奏でした。

2曲目はシューベルトの交響曲「未完成」。楽器編成の少ない地方オーケストラ、低音で始まるこの曲の聴き所を押さえて、真ん中にコントラバスとチェロ、左側にその他弦楽器、右側に管楽器を配しています。とにかく音色が美しいオーケストラだと思いました。その優美さは、まさに金沢のイメージにぴったりだと…まだ行ったことのない街ですが。オケの音が良ければ、あとは巨匠の指揮する名曲を深く味わうだけです。心に染み入る演奏でした。

3曲目の前に通常の配置へ戻すため、少し時間がありましたが、スタッフの鮮やかな手際も見所とする演出。
そしてサン・サーンスのチェロ協奏曲第1番、独奏のルドヴィート・カンタさんはスロバキア出身の同楽団主席チェリストで、堅実な演奏がこのオケのレベルの高さを知らしめてくれます。フランスらしい洗練された美しさの曲でした。アンコールに応えてバッハの無伴奏チェロ組曲第2番から、温かい印象の演奏で、心地よく前半は終了です。

後半はエスケシュさん作曲・自演のオルガン協奏曲第3番「時の4つの顔」。音楽の歴史をたどるように作曲したという大作です。全4楽章でバロック以前の雰囲気からロマン派、現代へと近づいていく曲調の変遷を、荘厳なパイプオルガンと、管弦楽のハーモニーと、3人の奏者による打楽器群を使ってダイナミックに描いた、素晴らしく聴き応えのある演奏でした。嘱託で書かれたという曲は、流麗だった前半とはまた別の、このオーケストラの魅力を引き出していたと思います。もちろん、指揮者の腕の見せ所ですが…井上さんはかっこよかった。

個人的には3日連続の(または8日で4回の)ライヴ・コンサート、身体は疲れましたが心が満たされた、真夏の音楽旅行となりました。
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