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つばめろま〜なから、なにかを知りたい貴方へ。
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最初のものから少し時間が経ってしまいましたが、この3ヶ月の間に聴きに行ったまったく違うジャンル(笑)の3つのコンサート、「谷山浩子&ROLLYのからくり人形楽団」と「近藤岳オルガンリサイタル」、「山下洋輔スペシャルビッグバンド」で思ったことを記します。


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「からくり人形楽団ANNEX」

 2014.5.10(青山円形劇場)

谷山浩子とROLLYによる異色のコラボレーション、一昨年に登場したときには驚きましたが、しっかりと形になってきた感があります。この日はANNEXと銘打ったように一部メンバーは違いますが、その場限りのものではなく、バンドとしての在り方が見えていたように思えました。ソロシンガーとして40年やってきた浩子さんにとって、初めてのバンド活動といえるかもしれない、と。
たとえば浩子さんとAQ、斉藤ネコでも、息のあったバンドのような形態ではありますが、ネコさんがどんなにハチャメチャにバイオリンを弾きまくっても、基本は谷山ワールドの構築と拡張です。オーケストラ編成の猫森楽団も同様。
けれど、ROLLYさんは谷山ワールドに敬意を表しながらも、その一部を侵略して自分のものにしてしまおうという野心を覗かせます。ROLLYという特異なキャラクターだからこそ可能な仕業。それに浩子さんも対抗して、新しい自分を構築し直して見せてくれる感じ。二人が楽しくハーモナイズしながらせめぎあう、二人とも良い歳になったからこそ、かもしれません。
昨春に観た「からくり人形楽団」ファーストライブよりもずっとそれを感じたのは、成熟したこともあるでしょう、それと山口トモという奇妙なドラマーが加わっていたこと、そして円形劇場だったことも大きな要因だったと思います。ジャズの即興のように音楽が新しく生まれていく現場に居合わせた臨場感の興奮と歓びを、ものすごく強く感じました。

青山円形劇場という大好きな場がなくなってしまうのは、とても残念なことです。音楽だけでなく演劇も観ました。ブリキの自発団の演出には興奮したものですし、新感線も近くて迫力でした。通常のステージとは全く違う演出を強いられ、創造力、対応力が試される劇場だと思います。
音楽の場合は演奏者同士が向き合うと同時に、その先にお客さんの顔が見えるという、客側からは後ろ向きの演奏者の向こうに前向きの演奏者の顔があり、その先にやはりお客さんの顔が見える、つまりは見ている自分も見られる存在となる、不思議な空間。
ここでたぶん20回ほども浩子さんのライブを見てきたでしょうか、彼女に最もふさわしい会場であったことは、この日あらためて確認できたところです。すり鉢状の一番低いステージを円形に囲んだ400足らずの席が、谷山浩子の世界観、共演者との関係、お客さんとの関係をとびきり優しいものにしておりました。これは大きなホールや、スペースゼロでも難しいのです。
行政も企業も、文化に金を出せなくなってきた今、老朽化という名目で拠点そのものがどんどん失われていきそうです。ある程度は仕方ないけれど、オリンピックなんかに巨費を掛けられるなら、もっと本当に大切なものがなにか、見つめて欲しいものです。
谷山さんなど、金(ヒット)は生まないけれど質(アート性)の高い、精神文化の象徴のような存在であると思います。その精神に親密にふれることができる新たな場が誕生してほしいものです。


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「近藤岳オルガンリサイタル」

 2014年6月1日(ミューザ川崎)

妻がオルガンを習っている近藤先生、以前にもコンサートを聴いたことがありますが、今回は曲も面白いからということで、楽しみにしておりました…のは、昨年10月のこと。ホールの前で開場を待っていると、出演者急病のため中止になっていたのです。
それから7ヶ月後のリベンジ、先生ものすごく気合いが入っていると聞いて、さらに楽しみにして、前回は踏み入れることのできなかったミューザ川崎の客席へと、初めて行くことができたのでした。それにしても、これまでにいくつものパイプオルガンを見てきましたが、いつも巨大で美しい存在感に圧倒されてしまいます。それも、表に見えているパイプは一部だけで、裏に何千本も隠れているのですから。
ホールは違いますがうちの妻も発表会の時に、あんな巨大な楽器をあんな高い所で弾いているのかと思うと、感心もし、羨ましくもあり。一度弾いたら病みつきになるでしょうねぇ。

オルガン曲というと、どうしてもバッハ中心の中世宗教音楽になりますが、今回の作品は1930年に書かれた2つの曲と、それに触発されて書かれた近藤先生の作品ということで興味深く、そして素晴らしい演奏を聴くことができました。
L.ヴィエルヌ作「オルガン交響曲第6番」は荘厳な大曲。
近藤岳作「オルガンと2本のトランペットのための『来たれ、創り主なる聖霊』」はトランペット2本も加わって爽やかさも感じる曲。
M.デュリュフレ作「前奏曲、アダージョと『来たれ、創り主なる聖霊』によるコラール変奏曲はより現代風な感じのある曲。

家に練習用のオルガンがあるので、私もたまに即興で弾いたりするのですが、音色はいろいろ変えられても、鍵盤のタッチで音の変化を付けることができないので、表現が難しい楽器だと思います。
それが、オルガンそのものの違いは置いといて、一流の音楽家が演奏すればこんなにも自由に表情豊かに弾けるものかと、感動を覚えたのでした。
終演後、楽屋にも訪問させてもらいましたが、シンフォニーホールの楽屋ってこんなに広いんだと驚きながら、難曲の演奏を成功させた清々しい充実感を漂わせる近藤先生にご挨拶したところで、コンサートは終了となりました。


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「山下洋輔 スペシャルビッグバンド」

 2014年7月17日(オーチャードホール)
  山下洋輔 (Piano)金子 健 (Bass)、高橋信之介 (Drums)
  [Trumpet]エリック宮城、佐々木史郎、木幡光邦、高瀬龍一
  [Trombone]松本 治(Conduct)、中川英二郎、片岡雄三、山城純子
  [Saxophone]池田 篤、米田裕也、川嶋哲郎、竹野昌邦、小池 修

巨匠・山下さんも70歳を超え、いま聴いておかないと突然に…などと考えてしまったのは、氏のエッセイ「猫返し神社」で、次の猫を飼いたいけれど先に逝くかもしれないからもう…というようなことが書かれていたからでした。そんなタイミングでこのコンサートの開催を知ったので、平日にも拘わらずチケットを取ってしまった次第。
そうした年齢的な懸念はまったく感じさせない、20年前よりは少しパワーダウンしているかもしれませんが、熱くて激しい、華やかでダンディな、さらに円熟味も増した演奏を聴かせてくれました。

曲目はムソルグスキー「展覧会の絵」とドヴォルザーク「新世界より」、場所もクラシック中心に使われるオーチャードホールと、期待感も大きく膨らみます。どちらも、私の期待感などはるかに上回る、素晴らしい演奏でした。
「展覧会の絵」は組曲ですので、短い1曲ごとに表情が変わっていき、独奏者の個性も際だつところは、まさにジャズ向きと言えましょう。原曲を現代風に解釈し、時に猥雑に、時にセクシーに、でも全体として品位も保ちながらの大胆なアレンジで、とても楽しく聴かせてもらいました。
「新世界より」は、ドヴォルザークの交響曲第9番を、そのまま全4楽章で聴かせるもの。もちろん、原曲の主題をどこまでもジャズの魅力たっぷりにしたアレンジですが、洗練されていて、遊び心もあふれていて、音楽としての驚きと心地よさに満ちていて、まさしくシンフォニーならではの醍醐味を楽しませてくれました。
アンコールはジャズらしくソロを繋いだりして盛り上がり、終了です。

演奏の見事さは、山下さんのピアノによる盛り上げ、編曲し指揮しながらトロンボーンも吹く松本さんへの信頼感、個々のプレイヤーの高い感性と技術、すべてが相乗したものであったと思います。私にとっては馴染みのない出演者も多かったのですが、皆さん、世界の山下洋輔が集めただけの熟達した逸材揃いでありました。
テレビでは見たことのあるエリック宮城のトランペットは画面の中より何倍も刺激的でしたし、川嶋哲郎の吹くフルートも新鮮に響いたし、高橋信之介のドラムも全体を支える安定感が素晴らしかったし…と、枚挙に暇がありません。
全体を通して言えば、クラシックの名曲をジャズ風にアレンジしてみました、というようなものとはまったく次元の異なる、敬意を表しながらの挑戦であり、新しい世界の創造であったと、胸に刻んでおります。

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