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SENRIDEN.jpg「千里伝 乾坤の児」仁木英之(講談社)

最終巻…作者自らあとがきに記していたように、仁木作品は多く読んできましたが長編の完結はこれがはじめて。1冊ずつが厚く、また展開が大きくて密度も濃かったので、全4巻でも長編が終わったという満足感が大きな物語でした。デビュー作として未だに巻を重ねている「僕僕先生」シリーズも、きっとこんなふうに心に残る終わり方を迎えるだろうと、十分に期待させてくれます。

最初はまったくもってひどい性格の主人公・千里でしたが、多くの人(人外の者たちも含め)との激しい交流の中で立派に…とまではいかないけれども格段に成長した姿をみせてくれました。そんな千里が最後に求めた世界の在り様、というのがしっかりと納得できたのが、読後感の良さにつながっています。けっこう難しい着地点だったと思われるのですが、物語の積層の重みが生きていました。
キャラが立っているという仁木小説の魅力的な特徴がうまく発揮され、バソンも絶海も、空翼も麻姑も羽眠も、ほかたくさんの敵味方あわせた登場人物たちの想いが深く心にしみてきました。
ラスボスとの闘いが意外にあっけなかったけれど、敵を倒すカタルシスがテーマではなく、長い歴史に培われた中華的な創世期からの世界観の中における人々の生きざまがテーマですので、敵もまたその世界の一部として描かれたのは良かったかと思います。

強さを求める者たちの闘い、その中で生まれる友情、せつなくほのかな恋情、というような冒険活劇の体をとってはいても、人間の幸福を深いところで探っていこうとする仁木英之の思索が結ばれた作品だったと評価するところです。
やはり、こうした物語を描くには日本を舞台にするのでは小さすぎ、中国という、国の広さだけでなく古代から現在につながる歴史と思想の深淵さを含めたスケールの大きさがあってこそと思わされます。
そこから、小さくて世界の片隅にある存在である日本の真の姿に気づけば、逆に、結晶化されたような日本文化独自の美しさや価値観を再発見できるのです。

ところで、ちぇこ氏の描いた扉絵イラストがとても良かったと思います。章の前でなく後に挿れられているので、事前にネタバレすることなく自分のイメージで読んできた彼らの活躍を確認して納得できるという。それが、キャラクターのイメージだけでなく、背景の世界や装束、武具などもしっかり描かれていたので、違和感なく、さらに想像力をふくらませてもらえました。なかなか、ここまでのマッチングはないかと思います。
最後の最後の絵の笑顔が、感慨深く心に刺さりました。装丁も含め、本作りとしても、秀逸な作品だったと思います。

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