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「世界フリージャズ記」副島輝人(青土社)を読みました。

前著「日本フリージャズ史」の発刊からもう11年経ちますが、またも凄く貴重な本を出してくれました。ジャズにとどまらず、音楽、さらには人間の表現や創造といったことの根源に迫る記録本です。
ドイツのメールスやロシアのアルハンゲリスクなど、新しい音楽が創造される現場に自ら足を運び体感し続けてきた筆者の、40年近い活動には敬服いたします。どこぞの、マイルスの音盤だけ聴いていればすべてOKというようなジャズ本とは大違い。ジャズはいつでも新しい創造性の中にあるのだということです。

そして読んでいて意外だったのは、私自身がここに登場するミュージシャンのうち、日本人以外でも結構の人数の生演奏を実際に聴いていたのに気付いたこと。フリージャズはたまにしか聴いてなかったつもりなのに。日本でその機会が持てたのにも副島氏の功績が大きいのだろうと思います。
本書にも何度か登場しますが、ソ連・日本・米国の10人がフリーセッションした歴史的なコンサート「ひらかれた地平」から、20年以上皆勤で毎年聴きに行っている「横濱ジャズプロムナード」、「エアジン」や「新宿ピットイン」といったライヴハウスまで、たとえばセルゲイ・クリョーヒンやペーター・ブロッツマン、姜泰煥、ブッチ・モリスなどの演奏を聴いた時を思い出しながら読むのは楽しいものでした。心残りは、副島氏が尽力していたアルハンゲリスクの初来日ツアー、チケットを買いながらも行けなかったこと…本を読んであらためて残念さがこみ上げてきました。
聴いた当時の自分の記録を読み返してみると、副島氏が凄いと書かれている人の演奏が、必ずしも私にとっては刺さってなかったというのも興味深いところです。それもまたライヴで体験しての感想、当然に感性の違いや音楽的素養のレベル、聴いた場所なども影響してくることでありますので、それこそジャズは先ず生で聴かなければ意味がない、ということです。

やっぱり、創造性豊かな音楽を生で聴きたいという想いが共通しているから、この本がとても興味深く感じられるのだとは思います。けれど、フリージャズは敬遠しているが音楽は好きという人も、この本を読めば興味が湧いてライヴハウスなりに行きたくなると思います。私は、メールスに行きたくなりました。
もちろん、自分が聴いたことのないミュージシャンの方が多いわけですが、文章を読むだけでも興味深い演奏スタイルが書かれていて、聴いてみたくなります。そして今の時代の良いところ、動画サイトで検索すれば映像を見ることができたりします。生で聴くのが一番ですが過去の者や遠い場所のものはどうしようもない、しばらくは本を読み返しながらネット検索して、気に入ればCDを買ったりしていくことになるでしょう。

最後の方には、「日本フリージャズ史」以後の日本の前衛シーンのことが書かれた記事も掲載されていて、今も身近で音楽が進化し続けていることがわるのも良かったです。年に一度行けるかどうかのエアジン恒例国際インプロ祭くらいでしか聴くことがないのですが、もう少し通えたらと思います。ジャズに限らず、凄いものを生で見て感動した記憶は、人生の宝物となりますから。
副島氏はもう80過ぎという御歳ですが、まだまだ新しいものを求める気持ちが変わらないのは素晴らしいことです。何年前になるでしょうか、一度「横濱ジャズプロムナード」のロシア人ステージでこのフェスティバルと出演者について熱く語られている姿をお見かけしました。専門誌などは読むことのない多くの人にも「生きている本当のジャズ」を独自の情熱で広め続けてほしいと思います。

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横浜ジャズプロムナード2013、第21回となりますが、今年も2日間行って来ました。21年連続となりますが、大きな病気などなく通えたということに、まずは感謝。このイベントが1年の心のエネルギー源になっていることも確かで、なくてはならないものになっております。

今年も、聴いてきたステージの感想を記録にとどめておきたいと思います。

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1日目(2013.10.12)

■Orquesta Libre + スガダイロー(p) + RONx2(tap)
「Plays Duke Ellington」 横浜市開港記念会館
  芳垣安洋(ds) 青木タイセイ(tb) 渡辺隆雄(tp) 藤原大輔(ts) 塩谷博之(ss)
  Gideon Jucks(tub) 鈴木正人(b) 椎谷求(eg) 高良久美子(vib) 岡部洋一(per)

開港記念館は、ジャズプロの中でも特に横浜らしさを感じさせる会場ですので、オープニングステージをここで聴くと、今年も始まったという気分が盛り上がります。
タップダンサーが出るということで、それはどうでもいいんだけど、と思っていましたが、ビジュアル要素のオマケとしてだけでなく、音楽の演奏としてアンサンブルを創り出していて見事でした。
スガダイローのピアノは豪放にして洗練されていて、ピリッとステキなエリントンを表現。青木タイセイのアレンジもよく、A列車などはこれまでにいろんなバンドで聴いてきた中でも傑出の出来。
メンバーも実力者揃いなのですが、1ステージという時間的制約もあって化、あまりソロパートを引っ張りすぎないことが聴きやすさになっていたのかもしれません。


■NEW5 横浜市開港記念会館
  山下弘治(b) 井上淑彦(ts) 高瀬龍一(tp) 堀秀彰(p) 加納樹麻(ds)

ベーシストがリーダーのバンドは、安定感があると思います。
ベテランの井上淑彦からちょっと若手まで幅広い年代のメンバー、そこにほどよい緊張感が生まれるのもジャズならではの楽しみでしょう。
心地よい演奏に眠気を誘われ、半分くらい夢うつつの中で聴いていましたが、ビートルズのノルウエーの森とか、ステキな演奏でした。


■酒井俊(vo)オーケストラ 関内ホール/大ホール
  林栄一(as) 太田朱美(fl) 土井徳浩(cl) 市尾優作(eg) 田中信正(p)
  坂本弘道(Celo) 萬恭隆(b) 瀬尾高志(b) 則武諒(ds)

酒井俊は板橋さんとの競演を聴いて以来、何年経ったか…陽気なおばさんという風情から、今回は黒のドレスで大歌手の貫禄を演出。見た目に違わない自由で感情豊かな、心にしみる歌を聴かせてくれました。
大震災や今世などへの様々な想いが詰まった詞に、アーティストならではの感性が表現され、歌ならではのメッセージ性の強さに気付かされます。アメリカのスタンダード中心に歌うジャズシンガーはほとんど興味が沸かないのですが、こんなに自由な歌ならオーケー。
もちろん、バックを固めるミュージシャンたちの凄さもあります。その人たちをデュオで、トリオで、みんなでと歌ごとに使い分けて世界を作っていく音楽心が素晴らしい。
ジャズプロの2時間枠のスペシャルステージを任されるようになった酒井さん、この場ならではの贅沢なステージを堪能させていただきました。


■zephyr 関内ホール/小ホール <ラスト20分>
  井上淑彦(ts) 田口悌治(ag) 天野丘(eg)

大ホールが終わってすぐに移動、ラスト20分だけ立ち見でしたが、この楽器編成でのトリオ興味があったのでどんな演奏かを聴けただけでも良かったです。
アコースティックギターとエレギギターの刻むリズムがスピーディーで切れがある格好良い演奏、とても刺激的でした。
この日2コマ目でも聴いた井上さんでしたが、打って変わって若々しいアグレッシブな雰囲気。サックスだけでなくパーカッションも手にしながら、まだまだ新しい創造性に満ちた心で挑戦を続ける音楽家の魂を感じました。


■明田川荘之(p,oca)・林栄一(as) デュオ 関内ホール/小ホール

明田川の自由な心が素晴らしい。小汚い爺さん(失礼!)のような見た目からは想像の付かない、美しい音と若々しい即興が心に響きわたります。
林栄一とのセッションということで期待も大きかったのですが、あの林さんが突っ込みどころに困っているような感じで面白く。明田川さんの、あえて隙を作らないように自分の感性で世界を埋め尽くしておいて、どうだ、切り込んでみろというような…久々にバトルなジャズを聴きました。
残り15分くらいで、突然ヘルニアの歌を歌って、急に5分休憩といって引っ込んだときには、いろんな面で心配しましたが(笑)。

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2日目(2013.10.13)

■ガスト・ワルツィング(tp)&ラルゴ(〜ルクセンブルグ)
 横浜みなとみらいホール
  Gast Waltzing(tp) David Laborier(g)
  Jean Pierre Paul J.(b) Rainer Kind(ds)

ルクセンブルグから来たカルテッド。リーダーはトランペットでたぶん最年長者、次がエレキギター、ドラムとエレキベースは若手。やはり多世代が集まっているバンドは、安定感と緊張感の両方があります。
エレキ弦の音、ロックのリズムの曲もありましたが、何よりもトランペットの伸びやかで爽快な音色が印象に残ります。骨太な音ですがヨーロッパらしい洗練さを感じる演奏でした。
すっかり忘れていましたが、昨年のブログを振り返って見たら、別のルクセンブルグのバンドを聴いていたのでした。ジャズ事情はわかりませんが、なかなか魅力的な国であるようです。


■ペッカ・ピルカネン(sax〜フィンランド)・グループ
 横浜みなとみらいホール
  Pekka Pylkkanen(ts) Roy Assaf(p)
  中村健吾(b) 嘉本信一郎(ds)

フィンランドのサックス奏者、ピカルネン。ずいぶん前ですが、ジャズプロでフィンランドのグループを聴いた覚えがあります。あれは北欧らしい透明感と、自由なアドリブが印象的だったので、ついそんな演奏を期待してしまいましたが、ちょっと違いました。
ドラムやベースが難しいリズムを刻みながらも安定した演奏というのは、上手なのでしょうが、聴き所として引っかかる部分がつかみづらく、つい眠気におそわれてしまいました。


■ヒカシュー ヨコハマNEWSハーバー
  巻上公一(vo) 三田超人(g) 坂出雅海(b) 清水一登(p)
  佐藤正治(ds) Alexei Aigi(vl〜ロシア)

ヒカシューのジャズプロ登場は6年目、うち4〜5回は聴いています。一度はまったらやめられない世界。巻上さんのボーカル+テルミン+尺八+コルネット、清水さんのピアノ、ほか皆さんも百戦錬磨の音の自由な戦士たちです。
今回のゲストはロシアのバイオリニストであるアイギ、モスクワ公演の際に知り合ったとのことです。ヒカシューがモスクワで人気があるのは、なんとなくわかります。
狂ったように弾きまくるアイギの姿を見れば、運命的な出会いだったのだろうと思わされます。太田恵資とのバイオリンデュオでCDを出していましたが、同じロシアの故セルゲイ・クリョーヒンとのデュオとか実現してたら、さぞや良かっただろうに…(ほんとになかったかどうかは知りませんが)。
必ず客席から途中退出者が出るヒカシューですが、それも年々減る傾向にあります。フリーな演奏こそジャズの魅力と思いますが、今のジャズプロの中で数少ない自由さを持ったバンドだけに、もっともっと受け入れられるようになって、次は大ホール進出を果たしてほしいものです。


■板橋文夫(p) FIT!&New Orchestra 関内ホール 大ホール
  FIT!…竹村一哲(ds) 瀬尾高志(b)
  林栄一(as) 纐纈雅代(as) 片山広明(ts) 吉田隆一(bs)
  類家心平(tp) 福村博(tb) 高岡大祐(tub) 太田恵資(vl)
  外山明(ds) 堀越千秋(ライブペインティング)

今年もやっぱり、トリは板橋さん。ライブハウスなど行けなかったので、1年ぶりです。

まずはFITでのトリオ演奏、瀬尾さん、竹村さんと組むようになって何年経ったか、どんどん良くなっています。最初の頃は板橋さんが引っ張っているという感が大きかったですが、すでに対等にやり合うようになってきました。昨年は瀬尾さんのベースに感動しましたが、今年は竹村さんのドラムの切れに驚かされました。
失礼を承知で書きますが、前日の酒井俊さんのステージでも思ったこと、瀬尾さんのルックスなのにすごくかっこいい!元々イケメンな竹村さんと並んで、ビジュアル的にもイケてました。もちろん、演奏のすばらしさが補正を掛けているのですが…。
板橋さんもこのメンバーでやるのが、ますます楽しくなってきたのではないかと思います。

次のオーケストラでは、少しメンバーの若返りがありました。
昨年のジャズプロで板橋さんが若手を率いてのビッグバンドにおいて、最も印象に残ったチューバの高岡さんが、今年は板橋オーケストラに加入していたのが嬉しいところでした。ブラスにおいては地味な楽器ですが、この人の演奏はとにかく凄い。あの大きな金管楽器でノンブレス奏法するというのが信じられませんし、圧倒的なテクニックの中に大きな音楽性を感じさせます。
ほかの若手では、纐纈さんが慣れないオケで戸惑っているのを同じアルトサックスの林さんがしきりと面倒見てあげているような姿が微笑ましかったし、前日も聴いた類家さんのトランペットがエネルギッシュで良かったです。
毎年聴いていた人がいなくなるのは少し寂しいですが、新風を取り入れるのは大切だとも思いました。全体の演奏としても若返ったせいか、楽曲のせいもあるでしょうが、少し洗練されて聞きやすくなった感じでした。
それにしても、板橋さんのエネルギッシュな演奏はいつになっても変わりません。もっと弾きたい、大きく激しく、という前のめりな感じが、聴く人に感動と勇気を与えてくれます。いつもいつも、音楽ってこんなに素晴らしいと再認識させてくれるステージに、感謝。

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IMGP4319.jpg「ROLLY & 谷山浩子 からくり人形楽団 The First Live」
2013年3月20日 横浜Blitz

前年に発売された谷山浩子とローリーのアルバムはとても刺激的な世界に仕上がっていたので、このコンサートのことを知ったときには迷わず行くことに決めました。谷山さんのコンサートは数え切れないほど聴いてきましたが、今回は新たな期待感も大きく楽しみにしていたものです。

場所もはじめて行く大きなライヴハウス、黒っぽい空間がホールとはまた違う雰囲気で昂まります。インターネットでの予約注文を逃していた40周年記念百科も販売スペースで買うことができ、座席へと。
前座として吉澤嘉代子さんが3曲歌いました。面白い女の子、面白い歌、歌唱力が高くて、たった10分程度でしたがしっかり存在感を植え付けていきました。谷山さんの前振りとしても個性的で良いアーティストだと思います。まだCDも出ていないようですが、ぜひ頑張ってください。
IMGP4318.jpg
さて、からくり人形楽団の登場です。谷山さんはヘッドアクセサリーを着けたドレス風、ローリーさんは黒のシルクハットにラテンのおじさん風メイクと、これはCDジャケットの写真で見た格好。音楽の世界観と見事にマッチしていてステキでした。ただ、トークの内容とはミスマッチ、そのギャップがまた面白さを倍加させていて、予想外の効果だったように思えます。
ステージは、二人の軽妙な…微妙にかみあわない感じが楽しい…をたっぷりとはさみながら、アルバムになかった曲も多く全21曲を演奏。これまでに何度も聴いてきた曲でも、アレンジが違えば新鮮であり、しっかり聴き応えのある内容となりました。

ただひとつ、難がありました。谷山さんが風邪を引いていて、ときどき声が出なくなるところが。以前のコンサートでもありましたが、残念でした。プロとしての体調管理が…などと責める気はまったくありません、鍛え抜いた挌闘家がタイトルマッチの前日に風邪で高熱を出してしまうということもよくあるはなしで仕方がない、ただ本調子ならもっとステキだったのにと思ってしまうのは、なけなしのお金でチケットを買った者の心境。そこはしっかりわかっている谷山さん、最後にお詫びしていましたが、その分ピアノなど歌以外のところでのパフォーマンスは素晴らしかったです。

それよりなにより、ローリーさんです。過去にも谷山さんと他のアーティストとのコラボライヴや、ゲストとして呼んだ方との演奏など聴いてきましたが、今回はそれらとはまったく違います。「からくり人形楽団」というバンドなのです。
ローリーは、谷山浩子の世界に深く入り込み、自分の解釈をもってギターと歌(と顔)で新しい世界観へと変え、これまで聴いてきた曲の別の面を描き出して見せ、谷山さんを引き立てながらも同じだけ自分の存在感も主張する、という偉業を成し遂げていました。テレビのバラエティ番組などで見かける時にはイロモノ的なタレントのローリーが、これほど真剣にアーティストとしてのパフォーマンスを発揮してくれたことは、大きな悦びです。

ファーストライヴと銘打たれていたこと、ローリーの意欲も盛んなことから、ぜひ今後も続けてさらなる進化を聴かせてほしいと思いました。ローリーとの出会いが、谷山浩子の音楽や文章といった世界にも化学変化を与えると面白いなと思います。とはいっても底なしの浩子さん、他人によってそう簡単に変わりそうにはありませんが。
メンバーはエレキベースとチェロの佐藤研二さん、ドラムの高橋ロジャー和久さん、キーボードの石井AQさんでした。仁王立ちして弾くベースは堂々としていて、ソロパートで叩きまくるドラムは熱く、いつもの谷山浩子コンサートとは違う雰囲気を楽しませてもらいました。
からくり人形楽団、めざせ、武道館。

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谷山浩子コンサート40周年感謝祭
(2012年11月10日 東京国際フォーラムCホール)

15歳でシンガーソングライターとしてアルバムデビューした谷山さん、35周年の時にも行きましたが、あれからもう5年も経つのか、という感じです。かつては年に4〜5回も通った頃がありましたが、今は年に0〜2回。しかしいつまでも変わらない、いや、進化し続ける浩子さんであります。
今回は、自らの音楽人生を振り返るという自叙伝的な構成で、子供の時に作った歌から、最近の歌まで順々に21曲。王道曲が多いような気がしましたが、アンコールで2曲、さらに2度目のアンコールに応えてくれた時には、キワモノ的な「意味なしアリス」で締めて全24曲、ずっしりと聴き応えのある3時間となりました。
トークにおいては、いろいろと知らなかったこと、忘れていたことなども多く、アーティストとしての秘密にも迫る、貴重な内容を聞くことができました。作家としての側面も含めて敬愛する方ですが、常に自分の道を行くという姿勢に感銘します。それしかできないから、という言い様ではありますが、でもそれでここまで歌い続け作品を残し続けてきたのですから、常人のワガママを超越しているのだと。

1,500人収容のホールもチケット完売、年齢層はかなり高めと見受けました。なかには若い人もちらほら…ですが、このあたりはジャズのライヴ会場と似たようなものです。気になるのは、一人で来ている人が多いようなこと。私のところは夫婦ともに若い頃からの谷山ファンなので一緒に行きますが、実は万人受けする歌手ではないためでしょうか。
なぜ万人受けしないのか、それをこの日のコンサートを聴いて思えば、歌の濃密さゆえかと。1曲ずつに世界が詰まっている、どんなに軽快な曲調でも聞き流すことができない、哀しげな曲でも心地よく浸っていられない、そこがポップスの範疇からはみ出ていて、アートの分野となり感性の合わない人には居心地が悪いのかも。その濃密な音場を作るのは歌詞だけでなく、浩子さんのアルペジオで埋め尽くすピアノの弾き方にも表れているように感じます。
この日のバックはプロデューサーとしても関わってきた石井AQさんシンセ、山川恵津子さんコーラス、斉藤ネコさんバイオリン、そしてロック界から古川昌義さんギター、佐藤研二さんベース、高橋ロジャー和久さんドラムスの6人でしたが、いつも世界観をさらに深めるアレンジがされているので、人が増えても薄まることなくさらに密度を増していきます。そこが音楽好きにはたまらないのですが、音楽性の乏しい楽曲が多い世のヒットチャートの中で、耳が育っていない人にはよくわからない、のかもしれません。
一人で聴きに来ても居心地良い、感情的にも知的にも満ち足りる、ファンとしてはそんな空間を創り出し贈ってくれるのが、谷山浩子という存在であると思うのでした。

さて、この日心に残った曲を選べば、
「ほしのよる」…7歳で創った原点の歌、小さい頃からピアノをやってる子の中には、自分で作曲してみようと思う子もいます。でも、その後につながるのはごく少ない、そんな希少性。
「てんぷら☆さんらいず」…やっぱり、若き日に聴いていたオールナイトニッポンを思い出します、トークの後でしたので特に。
「ドッペル玄関」…まさに谷山浩子でしか作れない曲と詞の世界。しかしギャルゲーのテーマソングを意識して作られたとは。声優が歌ってもおもしろそうですね。
「さよならDINO」…CDで良い曲とは思っていましたが、歌詞を読み込んでなくて、恐竜の歌だったとは知らず。トークを聞いてから聴くと、また違った感触となりました。

★PRPGRAM★
  <FIRST STAGE>
1.「ほしのよる」 谷山ソロ
2.「クリスマスツリー」 谷山ソロ
3.「天使のつぶやき」 谷山ソロ
4.「お早うございますの帽子屋さん」 谷山&山川
5.「カントリーガール」 谷山&山川
6.「ねこの森には帰れない」 以下、谷山&山川&AQ&斉藤
7.「たんぽぽ食べて」
8.「恋するニワトリ」
9.「まっくら森のうた」
10.「てんぷら☆さんらいず」
11.「風になれ〜みどりのために」
   RECESS 15min.
  <SECOND STAGE>
12.「王国」 以下、谷山&山川&AQ&斉藤&古川&佐藤&高橋
13.「海の時間」
14.「ひとりでお帰り」
15.「カイの迷宮」
16.「ドッペル玄関」
17.「さよならのかわりに」
18.「電波塔の少年」
19.「よその子」
20.「さよならDINO」
21.「NANUK」
  <ENCORE>
22.「銀河通信」
23.「同じ月を見ている」
  <GRATITUDE>
24.「意味なしアリス」谷山ソロ


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ついでに、このブログでは公開していないので、35周年コンサートの時の感想も以下に記しておきます。もっと曲数が多かったのですね!

谷山浩子 創業三十五周年コンサート

15歳でデビューしてから35周年の浩子さん。そして私が彼女の素晴らしさを認識し、敬愛するようになってから25年。う~む。
今回のコンサートは、いつもとは違って彼女のアーティストとしての歴史を振り返るような構成と演出だったので、私のそんな25年が心に甦ってくる、そしてその時々の出来事や周囲に感じていた匂いのような感覚までが思い出される、不思議な感傷に捕らわれるステージでした。
35作以上のレコードやCDアルバムを手に入れ、初めの2年くらいはラジオ放送を毎週楽しみに聴取し、20冊近くの小説やエッセイの本を読み、30回前後のコンサートに足を運んできた…。う~む……。
毎年必ずアルバムを発表し続けている浩子さんの曲はいつも身近にあって、私の生きている時間と融合してしまっているのだとは、発表順を意識したメドレーを含めて歌われた全31曲を聴いて強く気づかされたことです。
谷山浩子抜きでは私の人生を語ることはできないと思いましたよ。尊敬する人物の一人でもあります。

コンサートとしては、浩子さんのピアノと石井AQのシンセの他に、古川昌義のギター、渡辺等のベース、山口とものドラムというバンド構成で音に生命感があふれていたし、さらにコーラスとして豪華にも岩男潤子と相曽晴日のふたりのシンガーソングライター、アンコールにはバイオリンの斎藤ネコも駆けつけて、厚みがあり楽しさが倍増するような演奏でした。
谷山浩子さんも年齢には見えないほど若々しくかわいらしいのですが(今日はけっこう遠目でした)、初めて生で見た元アイドルで人気声優の岩男潤子(遠目でしたが)、容姿も声もかわいかったです。得した気分。

場所は東京国際フォーラム、仕事関係ではよく訪れる場所ですが、コンサートでは初めて行きました。なかなか雰囲気も音も良いホールでした。

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前日に続いて聞きに行った横浜ジャズプロムナードの2日目。
今年も2日間で10のステージを制覇しましたが、聴いている時間の合計が12時間くらい、待ち時間入れれば17時間くらい?座っているので、きついのはお尻、そして首や腰の痛み。それでも、せっかくの機会ですしできるだけ多く聴きたくて、ついつい頑張ってしまいます。

2日目・10月7日

■ハクエイ・キム トライソニーク 横浜市開港記念会館
女性に大人気(と紹介されていた)ハクエイ・キムさん、その韓流スターのようなルックスと相まって、やさしい感じのピアノ演奏、オリジナル曲もセンスが良く、人気の出るのが頷けました。開港記念館ホールの雰囲気にもぴったり。
ピアノが繊細で優しいところを、ドラムがアグレッシブに盛り立ていて、サラっと聞き流すのではない刺激もあり、また生ピアノにエフェクターを使っているのも珍しく効果的で、良い演奏でした。
【メンバー】ハクエイ・キム(P)、杉本智和(b)、大槻KALTA英宣(ds)

■パスカル・シューマッハ カルテット 関内ホール 小ホール
ルクセンブルグから来日したカルテット、西欧らしい洗練された音楽性が光っていました。
美しい音を奏でるヴィブラホンとグロッケンですが、とても個性的で引き込まれます。そしてアンサンブルも適度な緊張感があり良い感じ。
言葉にするのは難しいのですが、よくぞ来てくれた、そして聴けて嬉しかったと思わされる異国のバンドでした。
【メンバー】パスカル・シューマッハ(vib)、フランツ・フォン・ショシー(P)、
クリストフ・デヴィシェール(b)、ジェンズ・ドゥッペ(ds)

■徳田雄一郎 RALYZZDIG ヨコハマNEWSハーバー
紹介文の疾走感に惹かれて聴きに行きましたが、割とスローな曲も多く、演奏スタイルも曲も個性的という感じではなかっとで、少し期待はずれの感もありました。自分の音楽をしっかりと聴かせるという姿勢を強く感じるので、決して悪くはありませんが、私にはちょっと合わなかったのかも。
サックスがリーダーのバンドとして、次の早坂さんと比べてしまうのですが、もう少し曲ごとにスタイルを崩した感じがあると面白くなるのかもしれません。
【メンバー】徳田雄一郎(as, vo)、鈴木直人(g)、
中村薫平(b)、今泉総之輔(ds)

■早坂紗知 Minga Special Unit ヨコハマNEWSハーバー
次のステージとの間が短くなるので、今年は聴くのを諦めようかと思ったのですが、メンバーを見て絶対聴かなくてはと。仙波師匠の盛り上げる太鼓は大好きだし、赤木さんのフルートも聴いてみたいし、バイオリンが入っているのは魅力的だし、Rioって早坂さんの息子さん?…これまで何度か聴いてきたメンバーと違ったので、興味深かったのです。
そして、期待以上に素晴らしかった。あいかわらず格好良く吹きまくる早坂さん、共演者を乗せまくる仙波さん、さらにフルートやバイオリンのようにメロディ重視の楽器が入ることで、これまで聴いてきたリズムが先に立っていた感じからさらに、音楽性が高まったように思えました。
【メンバー】早坂紗知(ts,ss)、RIO(bs)、高橋香織(vln)、
吉田桂一(p)、永田利樹(b)、仙波清彦(per)

■板橋文夫FIT! &オーケストラ 関内ホール 大ホール
前日の若手を集めたフレッシュな演奏と比べてどうだろう、と少し意地悪な見方をしましたが…さすがに百戦錬磨のメンバー揃い、そして新曲も多くて、刺激的なステージでした。

まず第1部「FIT」トリオの演奏、瀬尾さんのベースがすごく進化していて、音楽家としての底の深さに気付かせてもらいました。これまでは若手を板橋さんが育ててる的にも見えていたのですが、もうすっかり対等に井野信義さんも超えたかと思わされる演奏でした。ドラムも堂々と自分のスタイルでぶつかってきている印象。そして、板橋さんも生き生きとして「渡良瀬」を熱唱するなど、エネルギッシュでした。どちらかと言えば、オーケストラよりもソロからカルテッドくらいの編成の方が好きかな。
【メンバー】板橋文夫(p)、瀬尾高志(b)、竹村一哲(ds)

しかし第2部、横浜ジャズプロムナードならではのオーケストラになれば、これまたまったく別の味が出てくるわけで。音の迫力だけでなく、参加する人の数が増えれば個性のぶつかり合いも激しくなり、混沌の中から生み出される世界は実に創造的、そこにジャズというジャンルの可能性を感じるわけです。
特に、反原発をテーマにした忌野清志郎の「ラブミーテンダー」を熱唱した板橋さんとそれを高らかに奏であげた全員の熱い演奏は、心に響くものでした。原発に関しては、経済界とかいう人間性を無視する人たちが危機感を煽ってなんとか存続させようと働きかけていますが、もう単純に考えれば誰も責任をもてない施設の存続なんてあり得ないはずで、理屈で伝えるのではない音楽というのが、いちばん素直に表現できるのではないかと思いました。多くの人に聴いてもらいたいものです。
昨年は少しマンネリ化を避けるために他のステージを聴きに行ってしましましたが、2年ぶりの板橋ワールドは文句なしに感動的で人生の活力を入れてもらいました。
【メンバー】板橋文夫(p)、類家心平(tp)、福村博(tb)、
林栄一(as)、片山広明(ts)、吉田隆一(bs)、太田恵資(vln)、
瀬尾高志(b)、小山彰太(ds)、竹村一哲(ds)、外山明(per)、
菅原昇司(tb)、堀越千秋(ライブペインティング)


実は終わった後に、板橋さんやディレクターの柴田さんたちとお話できる幸運に恵まれ、このイベントがどれだけ熱い想いで作られているかを知ることができました。ここ数年、資金難というようなこともプログラムに書かれていたりしましたが、送り手の想いと聴きに行くファンの想いの力で、ずっと続いて行ってほしいと、強く思いました。
それには、昨年の記事にも書きましたが、もっと若い人が魅力を感じて来てもらえるようにする必要があるでしょう。ジャズ以外のジャンルからでも、若い人に人気があって、でも音楽性に優れているミュージシャンを起用して、ジャズと融合できるような企画で…初期のジャズプロムナードではありましたが、そんなアイデアもあると良いかな。
では、それって誰だろう…なんて考えてみながら、音楽会を見渡すのも楽しいなぁと思っています。


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長年、同人誌で創作漫画を発表してきましたが、本当は小説が主な表現手段。職業はコピーライターで、趣味は楽器を鳴らすことなど。
下記に作品等アップ中です。よろしくお願いします!
■マンガ作品  COMEE
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